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カテゴリ:横川典視
木曜担当のよこてんです。
21日は盛岡競馬場で『マーキュリーカップJpnIII』が行われました。勝ったのはナイスミーチュー。鞍上は小牧太騎手。同馬は2012年9月のシリウスS以来の重賞制覇で、小牧騎手は06年のクラスターカップをアグネスジェダイで制して以来の岩手での重賞制覇となりました。 ★引き上げてきて笑顔の小牧太騎手 レースの写真を撮っていて、ゴールの瞬間の小牧騎手が派手なアクションこそしなかったものの凄くリラックスした表情だった気がしました。口取りに向かう前の小牧騎手にそんなことを問いかけてみると、「最後は余裕やったからね!」とニッコリ。2着馬との差は1/2馬身だったけれど鞍上は負ける気がしなかったんだな、と改めて確認することができました。 そして優勝タイム2分1秒9は2年前にシビルウォーが叩きだした2分2秒1を0.2秒短縮する新レコードともなりました。 先週の盛岡ダートは大変な高速馬場で、通常よりおおむね2秒ほど速かったのではないかと思います。その分を考慮すれば2分3秒台後半~4秒台、いつものマーキュリーカップのタイムになるわけですけども、普通の良馬場で、それもさほどハイペースとも言えない展開でレコードが出た、という結果にはちょっと驚きました。 98年のみちのく大賞典でメイセイオペラが2分3秒5(不良)を出した時には“こんなタイムはそうそう破られないだろう”と感心したものですが、その後04年にパーソナルラッシュが2分2秒8(良)を、12年にシビルウォーが2分2秒1(不良)を出し、今年ついに2分1秒台に突入。馬場の影響もあっただろうとはいえ、これにはさすがに感慨深いものがあります。秋のJBCクラシックはどんなタイムで決まるのでしょうか? さて、今日の本題は2歳馬のお話です。岩手競馬では8月16日に行われる芝1600mの重賞「若鮎賞」が今季最初の2歳認定競走ともなっています。それに向けて行われている2歳新馬戦はこれまでに6レース終了。これらの勝ち馬が若鮎賞、あるいはその後の2歳重賞戦線でも中心的存在になるだろう・・・という事で、今回は現時点の6頭の2歳新馬戦優勝馬をご紹介しましょう。 ●ラブディーバ 6月8日、今季最初の2歳新馬戦を制したのはラブディーバ(水沢・菅原勲厩舎)でした。鞍上は南郷家全騎手、芝1000mの勝ちタイムは1分0秒3。 同馬は父プリサイスエンド、母ベガスターカフェ。浦河・鮫川ファームの生産馬。上の2頭のきょうだいは未勝利ですので、お母さんに待望の初勝利をプレゼントした格好です。 同馬は現時点で2戦2勝、力量はなかなかのものだと思いますが、走りはまだ粗削りです。前走なども直線で先頭に立ったところでコースの真ん中あたりから内ラチまで刺さっていったりしている。一方でその前走、4コーナーで他馬と接触しているのですが、それでも全く動じない図太さも見せています。戦いながら徐々に成長していくのだろう・・・という馬ではないでしょうか。 ●キモンイーグル 6月22日、水沢ダート850mの新馬戦を制しました。勝ちタイム53秒3、水沢・板垣吉則厩舎所属で鞍上は高松亮騎手。父コパノフウジン、母トリックアートという血統は、そうです、ハカタドンタクやコパノバウンシの半妹にあたる岩手にも実績多いものですね。生産もきょうだい同様に新ひだか・伊藤敏明氏。 デビュー戦は先行争いを乗り切り、後続の猛追も凌いで・・・という形の勝利で、勝つには勝ったものの850mはちょっと短いかなという印象を受けました。 ハカタドンタクもコパノバウンシも比較的仕上がり早で、それでいて勝ったり負けたりしながら力をつけていった馬たちですから、キモンイーグルもそういう部分を持っているのでしょう。馬体の印象的にはコパノバウンシの方に似ているかな・・・という感じ。 ●スペクトル 7月6日には新馬戦が二鞍組まれました。この週からトレーニングセール出身馬も登場し始め、頭数は少ないながらもレースのレベルが格段に上がった印象がありました。 さて、7月6日の2Rを勝ったのはスペクトル。勝ちタイムは水沢ダ850mで52秒3。盛岡・櫻田浩三厩舎所属で鞍上は山本政聡騎手。父はスニッツェル、母はオトハチャン。祖母のリスクフローラは94年の桜花賞にも駒を進めた快速馬でしたね。平取・びらとり牧場の生産馬。 2着に10馬身差をつける圧勝ではありましたが、4頭立てのレースで楽に良い位置を取り、楽に走り抜いて・・・の結果でもありましたから、真価はもっと頭数が多くなってくるだろう次戦以降で計るべきでしょう。とはいえ500kgもある大型馬なのにスタートダッシュは速いし水沢のコーナーもブレずに回ってくるしで、素質はなかなかのものを持っていそうです。 ●ランデックハナコ 続く第3Rではランデックハナコが勝ちました。盛岡・櫻田浩樹厩舎、鞍上は齋藤雄一騎手。父スクリーンヒーロー、母ジーガートップランで新ひだか・城市公氏の生産馬。 本馬は今年の北海道トレーニングセールでの購買馬です。同じく北海道TS出身のサロンケバヤとの一騎打ちとなり、最終的にはこちらが52秒0のタイムで快勝しました。 トレーニングセール出身馬らしくスタートダッシュは速く、道中の走りも安定感がありました。スクリーンヒーローの産駒はスピードが豊富なタイプと全くそうでないタイプとにはっきり分かれるような印象があるのですが、本馬は前者の方に入れて良さそうです。 ●コパノブライトン 盛岡芝1000mに戻っての7月20日第3R。ここはコパノブライトンが制しました。水沢・板垣吉則厩舎所属で鞍上は西谷泰宏騎手。勝ちタイムは1分1秒3でした。父はメイショウボーラー、母はエレオノーラ。浦河・山田昇史氏の生産馬。 このレースでは千葉トレーニングセールで1242万円という“高馬”サンエイインパクトが人気を集めましたが、コパノブライトンは鞍上の好騎乗もあってサンエイインパクトを退けてみせました。 ちなみに、あまり値段の話をすると嫌がられるかもしれませんが、コパノブライトンは2013年オータムセールで262.5万円で購買された馬です。それが5倍ほどの価格の馬を破るのですから競馬は面白いですね。 ●コウギョウタイム 7月20日の第4Rではコウギョウタイムが勝っています。勝ちタイムは1分0秒5。同馬は水沢・菅原右吉厩舎所属で鞍上は山本聡哉騎手でした。 父スウェプトオーヴァーボード、母ビフォーダーク。昨年の「GRANDAME-JAPAN」2歳シーズンの女王となったカクシアジの全妹に当たる血統馬で生産もカクシアジと同じく日高・下河辺牧場。 コウギョウタイムは北海道トレーニングセールの出身馬です。このレースでも千葉トレーニングセール出身のコンクエストオールが登場、レースはトレーニングセール出身馬の戦いになり、差しつ差されつのすえコウギョウタイムがハナ差で優勝しました。 今回の出走時の馬体重は381kg、トレーニングセール上場時は402kgという事でしたから、有り体に言えば「成長は?」となるのでしょう。コンクエストオールよりは芝適性があった・・・というところでの勝利かなという気がします。 ただ、小柄ゆえの軽快さはしっかり持っているし意外に根性もある。カクシアジもデビュー時は400kg台前半の小柄な馬でしたし、もう少しじっくり見てあげてもいいだろうとも思います。 さてここまでを振り返って。昨年は新馬勝ち第一号だったラブチェリーがその後もしっかり活躍しましたし、6月デビューのライズラインも早くから頭ひとつ抜けた強さを感じさせていました。昨年は早い段階で“今年はコレ!”という馬が見えていました。 それに比べると今年は今のところ抜けた馬がいない“混戦”という印象です。先に上げてきた新馬戦を勝った馬は確かに“強い”ということになるのでしょうが、敗れた方にも戦いぶりの印象では決して見劣らない馬がいます。トレーニングセール組もこの先まだまだ登場してくるでしょう。2歳の勢力図はこ、の先もどんどん変わっていきそうです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2014年07月24日 23時59分45秒
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