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2011年12月22日
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カテゴリ:カテゴリ未分類


 池井戸潤氏の『果つる底なき』は、平成10年(1998)に福井晴敏氏の『Telve Y.O』とともに第44回江戸川乱歩賞を受賞し、同年9月に46判ハードカバーの単行本として講談社から刊行された。金融不祥事がクローズアップされた年に、元銀行員の大型新人が都市銀行の内幕を描ききった作品としう話題性もあって大きな反響を呼び、年末には「週刊文春」の傑作ミステリーベスト10で新人ながら第8位に選ばれた。
 
以下 当時の「週刊現代」に掲載された
 郷原宏氏のブックレビュー書評

 日本の資本主義も、いよいよ末期症状を呈しはじめた。新聞を開くと、連日のように、銀行の倒産、不正融資、不良債権の焦げ付き、幹部行員の横領など、いわゆる金融不祥事を伝える大見出が踊っている。これはもうバブルの崩壊にともなう一事的な社会現象といったものではないはずだ。いささか悲観的な見方をすれば、将来の展望を見失った資本主義が根本から腐り始めた証である。
 ミステリーは時代を映す紙の鏡である。始祖ポオの昔から、その時代の最も先端的な風俗を描き、名探偵の推理という形式を借りて時代の病の処方箋を書き続けてきた。ミステリー150年の歴史は、そのまま近代の裏面史といっても過言ではない。
 現代ミステリーもまた現代の鏡であることに変わりはない。われわれはさまざまなミステリー作品を通じて、冷戦後の国際情勢から芸能界の内幕にいたるまで、あらゆる情報とその処方箋を手に入れてきた。だが残念な事に、この鏡には資本主義の病巣ともいうべき銀行の内部だけは映らなかった。銀行を外側から描いた作品はたくさんあるが、内側から描ける作家がいなかったからである。
 今年度の江戸川乱歩賞を受賞した池井戸潤の『果つる底なき』は、銀行の腐敗を内部から描いた待望久しき現代ミステリーである。作者は最近まで三菱銀行で法人向け融資を担当していたという経歴の持ち主で、子供の頃から乱歩賞をとって推理作家になるのが夢だったという。この元銀行員の受賞は、われわれ読者にとっても推理小説のサブジャンルとしての銀行ミステリーの誕生という新しい夢の実現につながった。現代は夢のない時代だといわれるが、この分野にだけはまだ見るべき夢が残されていたのである。
 三菱銀行渋谷支店で融資担当の課長代理をつとめる「私」は、ある朝、同期入行の坂本から「なあ、伊木、これは貸しだからな」という意味不明の言葉をかけられる。その数時間後、坂本は業務用車の中で気を失っている所を発見され、まもなく病院で息を引き取った。やがて坂本の不正送金疑惑が浮かび上がる。顧客からの口座から三千万円を引き出し、他の銀行の自分名義の口座に振り込んでいたと言うのである。
 坂本の死因はアナフィラキシー・ショック(蜂に刺されたことによるアレルギーの過剰反応)という珍しいものだった。彼のこの異常体質を知る者は、行内でも限られている。坂本の妻曜子は、かつて「私」の恋人だった。そのせいもあって、代々木署の大庭刑事は「私」に疑惑の眼を向け始める。

 ミステリーの生命は主人公の性格と状況の設定にあるといっていいが、このオープニングストーリーはきわめて自然で渋滞がなく、まさに新人離れのした話術を感じさせる。こうして読者をたくみに銀行の内部に誘い込んだ後、物語はいきなり佳境に入る。
 支店長の支持で坂本の仕事を引き継いだ「私」はある企業のファイルに着目する。東京シリコン。かつて「私」が融資を担当し、経営が行き詰ると同時に再建回収係の坂本の手に移った先端企業である。社長は不審な死を遂げ、あとには奈緒という大学院生の娘が残された。なんとかして会社を救う事はできなかったのかという思いが、今も、「私」を苦しめている。
 坂本の残したファイルから「私」が発見したのは、自分のミスの記録だった。「私」は主に手形の割引を通して東京シリコンへの融資を続けていたのだが、その大部分は商品取引実体のない融通手形だったのだ。それなら、あの巨額の融資はいったいどこへきえたのか。「私」が奈緒とともに資金の流れをたどってくと、やがて身辺に死の匂いをまとった黒い影が出没し始める。
 この作品の第一の読みどころが、銀行の内幕情報小説としての面白さにある事は疑う余地がない。ここには銀行独自の職制や人間関係、銀行と企業との取引関係、銀行を通じた資金や情報の流れなど、銀行と銀行員のすべてがじつに分かりやすく描かれていて、これ一冊を熟読すればわれわれは現代の都市銀行に関していっぱしの通を気取る事ができる。その意味で、「これは銀行ミステリーの誕生を宣言する作品だ」という選考委員阿刀田高氏の選評の言葉に私も全く同感だ。
 とはいえ、しかし、内幕情報小説的な興味は、この作品の面白さのほんの一部、さながら普通預金の利子のようなものにすぎない。私が何よりも感銘を受けたのは、主人公が事件の真相解明にあたって、銀行員としての立場よりも人間としての行き方を優先させ、困難な状況のなかで最後まで男としての誇りを捨てなかった事である、その意味でなら、思い切ってこれを「銀行ハードボイルドの誕生」と名付けることも許されるだろう。
 いずれにせよこれはこれは書くべき時期に書くべき才能によって書かれた日本人必読の現代ミステリーである。この作品を読み逃すような人と、私はともにミステリーを語りたくない。

 おれから三年ちかくたった今も、基本的にこの感想に付け加えることはない。今回久しぶりに読み返してみて、私はこの作品の鮮度がまったく落ちていない事に驚かされた。それは銀行の腐敗という中心テーマがなおも深刻な社会問題でありつづけているだけでない。一口に言えば、作者の筆先が現代日本の社会構造とそこで生きる人々の意識のいちばん深いところにとどいているので、ふうぞくとして風化する事がないのである。

(中略)

本書の第四章「半導体」の末尾に、こういう一説がある。
「かたちもなく、概念も無いもの。あるのはただ醜い思念のみ。まさに暗渠だ。魂の思念、果つる底なき暗澹たるもの。それは単に価値観などという尺度で説明しうる範囲を超越している。始まりも終わりもなく、きっかけすらつかめない狂気。これ以上、こいつを生かしてはおけない。坂本のために。紗絵のために。曜子のために。奈緒のために。柳場のために。古河のために。そして私のために。」
 これは仮寝の悪夢から目覚めた「私」が、姿なき敵に対して敢然と立ち向かうことを決意する重要な場面で、作品の題名もここから採られている。「果つる底なき暗澹たるもの」とは、おそらくはこの姿なき犯人の底知れぬ悪意を意味しているが、一方では幼時に母を失った「私」自身の孤独の深さをも表しているはずだ。そしてもしそういってよければ、邪悪と正義が果つる底なき魂の深遠で対峙するところに、この作品の小説としてのおく弓の深さがあるといえる。
 池井戸氏は、その後しばらく鳴りをひそめて読者をやきもきさせたが、2000年の初めに書き下ろし長編『M1(エム・ワン)』(講談社)を発表して健在を印象付けた。狭義のマネーサプライ(通過供給量)、すなわち現金と預金の送料を表す経済用語をそのまま大目にしたこの作品は、中部地方にある企業城下町を舞台に、私企業の発行した闇の通貨が次第に地域経済を蝕んでいく経過を、信用調査アナリスト上がりの高校教師の目を通して描いたもので、まさにこの作家にしたかけない金融サスペンスの傑作である。
 果つる底なき深迷の時代に、こういう中身の濃い作品にめぐり合った読者の幸福を思わずにいられない。

        (解説より 郷原宏筆)



解説を読んで、この小説の魅きつけるものがなんなのか、分かりました。
ミステリーはいろいろありますが、経済状況の切迫で苦境に陥る人の人生については描かれても、芯の部分は膜がかかり、うやむやだったりします。自分を追いつめる経済の逼迫の真相はなんなのか、分からずに主人公は、転落に落とされてますね。会社が倒産するってどういうことか、内側が、この小説で経済素人の人間でも少しは分かるよう描かれてます。
山内豊子さんの『華麗なる一族』を思い浮かべました。銀行一族のなんやかんや。重厚でしたが、こうれほど経済の動きを緻密に追ってはいなかった。『沈まぬ太陽』にしても、主人公の苦闘の人生がメイン。企業という大きな敵は、大きくて倒せない存在で、一社員があがいてもどうにも動かせない。
作者の池井戸さんが、元銀行員というのも興味深く、三菱銀行という一流銀行を退社して小説家に転向されたとのことですが、本書の主人公にも当てはまりますが、池井戸さんの本の主人公らが、大企業にいても、会社にただ追従するだけでなく、会社の暗部を知り、自分なりに考え動いて、自分の信義を通して生きていこうとする姿が、なにか池井戸さんに重なりました。

それにしても、ミステリーランキング的には、まったく見かけないです、池井戸さんの本。文学本だからでしょうか。警察小説、医療ミステリー、学校ミステリー、時代ミステリー、、ミステリーの幅もほんとに多岐に広がってます。海堂尊さんの『チーム・バチスタ』が登場した時も新しい!と感じましたが、池井戸さんの作品も、実際、新しい世界を垣間見せてくれる、稀な本だと、感じました。10年以上も前からご活躍だったのですね。子育て時代だったため、まったく読書する時間のない頃でしたので、今頃~となってしまいましたが、出会えて幸せと思います。










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最終更新日  2011年12月22日 20時17分04秒


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