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2話はこちら 3話はこちら 4話はこちら 5話はこちら 6話はこちら Red Vapors #33 ドラゴン魂 in 小田原(7) 07 おびただしいと感じるほどのドラゴンの群。 黒いそれに人は乗っておらず、無機的なデザインはデルタ戦闘機の無慈悲さ、あるいは実験生物の異様さを思わせる。 目的も分からぬままその進攻を許したことに、アキラは歯噛みした。 敵の最初の攻撃を受けた市民のドラゴンが、失速し、墜落していく。 うち1匹は無事に自力で緊急着陸を開始したが、もう1匹はあきらかに地面に突進しようとしている。空間失調症だ。 「救助はあたしやるから!」 キヨラの白いドラゴンが緊急離陸してきた。 「頼む!」 アキラは返事しながら上を見た。 黒いドラゴンの群は何をしようというのか、徐々に四方八方へ展開していく。しかもなぜか、逃げ惑うレース参加者達を追い立て始めたのである! それは、暴走族が『狩り』と称し、一般人に危害を加える行動によく似ていた。決定的に違うのは、どれも無人であること、それから爪が10本以上あることだ。 「何なんだよ連中は!」 コウが叫ぶ。 だが連中が何物だろうと止めなければ! 空の下、ドラゴンを駆り、翔ぶ。 15時18分。小田原・相模湾岸、300メートル空域。 戦闘開始――。 とにかく無我夢中で、比較的低高度にいる奴に飛びかかる。 蹴る! 『ドムッ!』 「ゲェェ!」 時速300キロのキックにドラゴンは吹っ飛んで失速し、立て直す暇もなく海に突進。しぶきをあげた。 だが高威力の攻撃は、反動も大きい。アキラは喜ぶ暇もなくクラクラした。 「おまえの相手は俺だろうが!」 ふと、無視されて怒ったたしきジェイクが、突進してきた。 ドラゴンの尾を大きく振り回し、それが鞭のようにしなる! 『ぶおん!』 身体を横に倒して避ける! こちらの顔先数センチの場所を通り、髪が数本、パラリと舞う。首が吹っ飛ぶかと思った。 「警察のお兄さんは忙しいんだ!」 アキラは恐怖を堪えて叫び返す。 最大速度を命じると、『ブワァン』という羽音とともに、目の前が真っ白になりそうなほどの急加速。スピードメーターが一瞬450を越えた。 別のドラゴンに急接近して爪を出し、引っ掻き切る構え! 狙うは、主翼の内側上面。ここを裂くとドラゴンは高度を保てなくなるのだ。 『ざりっ!』 「キイイイイ!」 が。 悲鳴を上げたのはルプーの方だった。爪の付け根が変に曲がり、しかも逆に相手の翼には傷1つ付かない。 「かてぇ……!」 まるで金属だとアキラは感じた。 その直後! 『バヒュン!』 次の行動へ移ろうとしたこちらの直上を、ドラゴンが横切る。 とっさに降下! 『ダンッ……!』 ところがその直後、こちらを竜弾がかすめた! その風圧でフライトジャケットがはためく。 「……!?」 ドラゴンが、単独で自らフェイント攻撃を仕かけたのである。 意外と頭がいい。 見ると、市民を追い立てるドラゴンの幾匹かが、自分とコウそれぞれへ向かってくる。 全部が一斉に同じ行動をとらないことから、統率もとれているようだ。 あきらかにコンピューター統括。しかも旗竜らしき個体もないことから、自衛隊用と同じピアトゥピア・ネット方式制御と思われた。 大勢で来られたとき一番駆逐が難しいタイプである。 「いったん引かないとヤベぇな、多勢に無勢だ」 コウは敵の攻撃を回避するように、大きく回り込んでいた。 「ああ。とにかくまず一般市民を逃がす。避難勧告を出すぞ」 避難勧告は一度出すと周囲が大混乱になるので、アキラとしては避けたかったが……。 地上を見やると、ギャラリーや通行人達は、まだ上を見上げているだけだった。 何かの余興である可能性を捨てきれずにいるようだ。 と――! 「アキラ! 後ろ!」 突然のキヨラの通信! 「……!!」 『ぐおん!』 黒いドラゴンの一匹が、後ろから回り込んで捨て身で突進してきたのだった。 降下を指示! だが距離に余裕がない。――避けられない! 連中、やけに羽音が小さくて動きがつかみづらいのである。 「くっ!」 アキラは思わず目をつぶった。 『パァァン!』 だが。予想された衝撃は、しかし来なかった。 「……!?」 ドラゴンはあさっての方向に飛ばされていく。見ると、接着剤のようなものがベッタリと張り付いていた。 それから、バタバタというヘリコプターの音。 「大丈夫か!」 それは神奈川県警のヘリだった。 「あ! 助かりました!」 アキラは返信した。今のはテロ対策用の粘着弾である。 県警の航空隊に警備を依頼したとスタッフから聞いていたが、それらしい。戦闘が始まって現時点で1分だから、まぁまぁの素早さだ。 何匹かのドラゴンが同時に突進してくる。 それと、ジェイクがもうすぐこちらに追いつく。 アキラはそれを見て、 「犯人逮捕に集中したいんで、市民の警護は頼んます! こっちの救急員を回します!」 すぐに頭の中で作戦を立てた。 「了解!」 「キヨラ、頼むぜ!」 「任して!」 「コウは俺とジェイクを挟み撃つ! 他は無視だ!」 「ほい来た!」 各自散開。 「ポリヤロォォォォ!!」 2度も無視されたのがそんなに悔しかったのか、ジェイクは叫びながら迫り来る。 だが数は2対1。 ――勝てる! アキラはそう思った。 だがそのときだった。 『パァァン!』 弾音が鳴る。 よろけたのは航空隊のヘリ。 側面にベッタリと粘着弾が付き、大きくふらついた。味方の誤射だ。 幸いヘリは落ちず、 「す、すまん!」 わびの通信が飛んだだけですんだ。 「……!!」 それを見てアキラは気づいたのである。レーダーのモニターが、いつの間にか竜影・機影で真っ白になっていることにだ。 砂浜を見れば、動かなくなったドラゴンが人垣に囲まれている。観光客のド真ん中に落ちたのだ。 ――混戦状態……! 加えてもう1つマズいのは、ドラゴン達がジェイクまで標的にし始めていたこと。 「何すんだこの野郎!」 攻撃を受けた彼の反撃はまるでデタラメで、同時に落とされた2匹のドラゴンが……ついに民家を直撃した。 家は轟音を立てて燃え始める……。 「やめろ!!」 アキラの叫びと、巻き起こるパニック。 つづく [Red Vapors]official page こちらも絶好調で公開中です!^^ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007年11月13日 20時59分59秒
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