25239782 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

カレンダー

プロフィール

むらきかずは

むらきかずは

日記/記事の投稿

カテゴリ

サイド自由欄

コメント新着

 通りすがり@ Re[1]:ブログ移転のお知らせ(04/21) akiさんへ ネトウヨ自称茶請けのカマシ発…
 aki@ Re:ブログ移転のお知らせ(04/21) 日本有事と急がれる改憲、大変恐縮とは存…
 http://buycialisonla.com/@ Re:週刊少年ジャンプ15号感想(03/12) cialis da 5 mg. genericoherbal alternat…
 http://buycialisonla.com/@ Re:「リボーン」で獄寺君(09/27) cialis 5 mg 28 compresse prezzocialis v…

キーワードサーチ

▼キーワード検索

ニューストピックス

2007年05月02日
XML
カテゴリ:読書感想


人間ってのは、弱くて強くって、切ないねェ…………と、呟いてみたくなる。



大損まる損困り損 泣き損死に損遣られ損
ありとあらゆる憂き世の損を 見合った銭で肩代わり
銭で埋まらぬ損を買い 仕掛けて補う妖怪からくり
寝肥、周防の大蟆、二口女、かみなり、山地乳、旧鼠――――
小股潜りの又市が 初めて見せる御行姿
明治へ続く巷説が ここから始まる百物語――――





泣き乍ら帳尻合わせるばかりが人の道じゃねえ。
騙して賺して謀って、夢ェみさせてやることだってできるじゃねェか。
神や仏ってな、その夢なんだろが。
神も仏もねェ世なら、化け物でもなんでも構いやしねェ。
所詮この世は嘘ッ八だ。
夢と承知で―――― 収められねェものかよゥ


大好きなシリーズの最新刊。又市さんの「べらんめェてやんでェ」喋りはちょっと読み辛い……とブツブツ言いながら読んでたはずが、さすが京極さん。
気が付けば作品世界にどっぷり浸かってました。

浸かりすぎて溺れそうです。

描かれるのは、腕っ節も弱い、知識が深い訳でもない、手先が器用な訳でもすばしこい訳でもない、色の白い痩せぎすで派手な着物を着た若者が、「御行の又市」となる物語。

又市さんは生まれた時から御行姿だったような気がしてましたが、よくよく考えたらそんな訳はない。(よくよく考えなくてもそんな訳がない)
一杯一杯でてんぱりまくってる、人に使われる立場(=パシリとも言う)な又市さんの描写が新鮮でした。
なんたって、女性に入れあげる、「甘く見るな」「いい加減にしやがれ」「吠えるな若造」「頭ァ冷やせ」と仲間達から叱られまくる。
あの微に入り細をうがつ仕掛けを施し、「あちら立てればこちらが立たず、それでも双方立てる」のを真骨頂とした又市さんが、青臭くって詰めが甘くって、全編、「もっとうまい図面が描けたんじゃないか、もっと上手い仕掛けを作れたんじゃないか」と後悔しまくってます。

でも、この後悔が、苦い思いがあったからこそ、「巷説百物語」「続巷説百物語」「後巷説百物語」に繋がっていくわけで。

物語は明治へと紡がれていくわけで。

百介さんと出会う前の又市さんの物語は、いろいろ切ない。


さて、メインとして描かれていたのは巷説百物語のシリーズに影を落としていた「祗右衛門事件」のいきさつでした。
「続巷説百物語」に収録されている【狐者異】の中で「奴(やつがれ)は失敗った」と語った又市さんの失敗とは何だったのか。

「続巷説百物語」との齟齬はちらほら見られます。
10年前に祗右衛門として処刑された人物の正体であるとか、10年前に祗右衛門に関わらざるを得なかった経緯とか。
又市さんが、「続巷説百物語」の中で百介さんに語るときに、どうして嘘を織り交ぜざるを得なかったのか。
10年前の事件が又市さんにとってどれほどやるせないものだったのか。
どんな理屈があろうとも、どんな大儀があろうとも、どんな想いがあろうとも、人殺しを勘定に入れておく仕掛けはしたくないと叫んでいた若かりし頃の自分を、どんな思いで振り返っていたのか。
それを想うと、切なくって仕方ありません。

結果的に人が死んでしまったことに後悔ばかりな又市さんが、10年後には人が死ぬことを織り込み済みで仕掛けを施してるのは皮肉としか言いようがありませんが。



読み終えたあと、思わず「巷説百物語」「続巷説百物語」「後巷説百物語」を読み返し(と言っても斜め読み)、「巷説百物語」に収録されている【帷子辻】に出てくる林蔵さんのなんでもない台詞にうっかり泣きそうでした。

「相変わらず口の減らン男やな又―――」

「前巷説百物語」と「巷説百物語」の間だって、平坦な道では決してなかったろうに、「相変わらず口の減らない男」でいられた又市さんに、マジ泣きしそう。


ところで、新キャラがわんさか出てきましたが、一番のお気に入りは山崎さん。
まるで刀語の敦賀迷彩さんみたいな技量の持ち主でしたが、西尾維新が描くとひたすら荒唐無稽ですが、京極夏彦が描くと静かな怖さがあります。同じ材料一つとっても、料理する人が違うとできあがるものは違いってことか。
飄々とした風のような様子がものっそ好みでした♪(だからこそ、最期のシーンはやるせないことこの上なしでした。京極夏彦のばかーーーーー!

そうそう、蛇足ですが、百介さんと又市さん。お互いがお互いを認識するという意味では出会ってませんが、若かりし頃の百介さんがちゃんと登場して、又市さんはしっかり百介さんを目撃してます。いろいろ切ない物語でしたが、その描写が一服の清涼剤でした。

ちなみに、本書には、四つ折?八つ折?な「シリーズ解説書」が挟まってるんですが、その中の巷説相関図はかなりお役立ちです。入り組んで訳がわからなくなってる人物関係がすっきり整理されてました。
巷説シリーズが憑物落としシリーズに繋がる様が一目瞭然です♪
よしっ、続きが楽しみになってきた!☆(≧▽≦)☆!

感想を読ませていただいた素敵サイト様
みすじゃん。(みすてり中毒者の部屋) 手当たり次第の読書日記 鮟鱇の記(しるし) 
今更なんですがの本の話
 本を読もう 蒼のほとりで書に溺れ。 のぽねこミステリ館
まあぼの交差点 天竺堂通信


【関連図書】

        


   
  にほんブログ村 本ブログへ にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2009年05月07日 21時34分47秒
コメント(7) | コメントを書く
[読書感想] カテゴリの最新記事



© Rakuten Group, Inc.