決壊(上・下) 平野啓一郎
平野啓一郎氏の作品は初めて。いや、正確には芥川賞受賞作を数ページ読んだことがあるのだが、錆びついた頭はその難解さについていけず、珍しく断念。それから氏の作品を手にすることはなかったが、今作はミステリーだと聞いてチャレンジ。しかし。うむむむ。。上巻は登場人物を取り巻く状況を丁寧に描いているのだけれどその表現がいささか大仰というか哲学的というか頭でっかちというか、とにかく私には読みづらくてページをめくるのに時間がかかってしんどかった。けれど下巻にはいるとぐぐっと読みやすくなりなんとか読めた。しかしなんともまぁ恐ろしく悲しく、恐ろしく腹立たしく、恐ろしく救いのない話でなんとも気がめいった。被害者、加害者、遺族、加害者の家族、彼らを取り巻く人々、警察、マスコミ及びネットによる情報が及ぼす影響。現代日本を取り巻く問題点をふんだんに取り入れており辛いけれど目をそらすことができなかった。そしてフィクションでありながら恐ろしいほどのリアリティを持つことに戦慄を覚え、途方にくれてしまった。ちょっと立ち直るのに時間がかかりそう。当分は思いっきり笑える話を読みたいな。。。