No Name Defense
我が海豚軍団がパーフェクト・シーズンを成し遂げた、1972年シーズンの守備陣は"No Name Defense"と呼ばれた。"No Name"とは「無名」という意味だが、反語的に「名付けられないほど凄い守備陣」という感覚で使われていた。実は前年の'71シーズンでは、特に守備陣の二つ名は無かった。そのシーズンに海豚軍団はSuperBowlに初出場を果たした。対戦相手の牧童軍団(Dallas Cowboys)の守備陣は"Doomsday Defense"と呼ばれていた。"Doomsday"はキリスト教の「最後の審判の日」や「世界の終り」の意味で、対戦相手を裁く守備陣という訳である。牧童軍団のヘッドコーチのTom Landryは、そのSuperBowl前のインタビューで、「レギュラーシーズンで174失点しか許していない海豚軍団の守備陣をどう思うか?」と聞かれた際に、「彼等の守備陣の名前は思い出せないが、気を付けるべき点が幾つもある。」と答えた。思い出せないのも当たり前、名前が無かったのだから。という事で翌'72シーズンでは海豚軍団の守備陣は"No Name Defense"と呼ばれるようになったのである。"No Name Defense"は、隊形としてはごく普通の4-3ディフェンスである。「スーパースターは居ないがユニットとしては最強」と評された。(実際には両DE・MLB・両Sはスーパースターの部類に入るが。)メンバーは以下の通り。DC(守備コーディネーター):Bill ArnspargerDE Vern Den Herder, DT Manny Fernandez, DT Bob Heinz, DE Bill Stanfill, LB Doug Swift, LB Nick Buoniconti, LB Mike Kolen, CB Tim Foley, CB Curtis Johnson, SS Jake Scott, FS Dick Andersonただし、"No Name Defense"には、もうひとつのバリエーションがあった。それが"Miami 53"である。"Miami 53"は3rdダウン・ロングなどのパッシングダウンで登場する。DT Bob Heinzを下げ、LB Bob Mathesonが入る。つまり4-3から3-4へ変更されるのである。この3-4は現在の物とは異なり、パスカバーに特化した内容であった。ラッシュはフロントの3人だけで、残りの8人が5ショート3ディープのゾーンカバレッジを敷くのである。通常の4ショート3ディープであれば、ロングパスのターゲットが空かなくても、ショートパスからのランアフターキャッチに期待できるが、そのショートゾーンを5人で守られると、相手QBからすれば、「投げるところが無い」のである。そして、この時に入るLB Bob Mathesonの背番号が53だったこともあり、"Miami 53"と呼ばれるようになったのである。確かにLB Bob MathesonとDC Bill Arnspargerを含めても、13人の中で殿堂入りした人物は居ない。しかし、それでも"No Name Defense"は当時最強の守備陣だったのである。