Wine comes in at the mouth
And love comes in at the eye; That's all we shall know for truth Before we grow old and die. I lift the glass to my mouth, I look at you, and sigh. ("A Drinking Song" by Yeats)
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読者の中で19世紀、ロンドンはセントジョンズウッドに生きていたミセス・スミスをご存知の方は少ないだろう。ましてや、彼女の書いた奇妙な童話『やんちゃな仔犬チャッピーの冒険』(An adventure of Chappy a naughty puppy)について知っている人はほとんどいないに違いない。
ミセス・スミスの主人、ウィリアム・スミス氏は紡績業を主にした実業家であり、代々の資産家であった。彼はナイトにも叙されていた記録がある。しかし彼は、最愛の妻マリーを残して1887年に脳腫瘍と思われる疾患でこの世を去った。 ミセス・スミス、つまりマリーは正気を失ったのか、彼の亡骸の側を決して離れようとはしなかった。夫婦には子供もいなかったため、ウィリアムの妹が葬儀をあげた後、自分の家に身を寄せるよう何度も説得したのだが、マリーは決して受け入れようとはせず、夫の埋葬も行わず、家に居続けた。ウィリアムの妹は業を煮やして、友人でカウンセラーのローラ・クーパーに相談した。 マリーに面会したクーパーは、マリーの心の傷を癒すためには、それを彼女に吐き出させる必要を感じ、マリーに「子供向けに童話を書いてみてはどうか?」とアドバイスした。子供もなく、最愛の夫を亡くした彼女の悲しみを解消するには、何らかの代償行為が必要ではないかと考えたからだ。 その結果、マリーが書き始めたのが『やんちゃな仔犬チャッピーの冒険』である。作品としては短編で、数ヶ月で原稿は書きあがった。彼女は夫ウィリアムの友人キング氏が経営する出版社に作品の要約を送り、その出版を願い出た。しかし、彼女の現存するクーパー宛の書簡を見ると願いへの返事はなく、出版もされなかったようだ。事実、そのような作品が掲載された雑誌や書籍の記録は、一切発見されていない。 先月の話になるが、件の出版社が火事を起こした。幸い半焼で済んだが、地下の資料庫にまで火の手が回ったらしい。ところが、焼け残った資料を整理したところ、当時マリーが出版社社長トーマス・キング氏に送った作品の要約が発見されたのだ。 要約は残念ながら火の粉をかぶりところどころ焦げて解読ができないし、一部に至っては完全に焼失してしまっていた。しかし、今まで存在を知られていなかったこの作品の輪郭を我々に教えてくれる。私は、この作品をできうる限り再現してみようと思い立った。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Jul 4, 2016 03:27:28 AM
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