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たのちから

たのちから

加熱するとアサリが口を開くのはなぜ?

貝柱が急に収縮 貝殻から外れ力失う

アサリを加熱すると口を開ける

 生のアサリは2枚の貝殻が合わさっていて、口をこじ開けるのに力が要る。しかし火を通すと、簡単に口を開けてくれる。熱くてアサリが降参したようにも見えるが、加熱するとどうして開くのだろう。専門家に聞いてみた。
 
 アサリなどの貝の口を開けるのは、貝のつなぎ目にある靭帯(じんたい=ちょうつがい)の役割だ。ところが口が開いてしまわないように、2枚の貝を引き寄せているのが貝柱だ。
 
 貝柱は通常、コラーゲンなどのたんぱく質によって貝の内側に張り付いている。だが加熱するとコラーゲンの接着力が弱くなり、貝柱が貝殻の内側からはがれやすくなる。さらに、加熱によって貝柱が急速に縮むため、貝柱は貝殻にくっついていられなくなり、ついにははがれてしまう。閉じる力がなくなったために、靭帯の働きで口が開く。
 
 では、どうして加熱すると貝柱が縮むのだろうか。
 
 貝柱は、ヒトの腕や足に付いている筋肉と同じく、2種類のたんぱく質の繊維でできている。歯ブラシやヘアブラシを2本向かい合わせてくっつけたように、ミオシンというたんぱく質の糸の束の中に、アクチンというたんぱく質の糸の束が、入り込むような形をしている。ミオシンがアクチンを引っ張り込むことで、筋肉が収縮する。
 
 筋肉が縮むときにはカルシウムイオンが作用する。カルシウムイオンが来ると、ミオシンがアクチンを引き込む。ふだんは調節たんぱく質というブレーキ役があり、筋肉が縮まないように抑えていて、行き過ぎた収縮は起こらない。
 
 しかし、加熱されると調節たんぱく質が働かなくなり、ミオシンが勢い良くアクチンを引っ張り込んで筋肉が急激に縮む。それでアサリを加熱すると、貝柱全体が急激に縮むことになる。
 
■開き方いろいろ
 
 同じように加熱しても、中には半開きや完全に口を開かないアサリもある。多くは死んだ貝だ。東京海洋大学海洋科学部の潮(うしお)秀樹助教授は、「死んで時間がたった貝は、生でも口が半開き。いわば死後硬直が解けた状態だ」と話す。筋肉を動かすためのATP(アデノシン3リン酸)というエネルギーがなくなり、貝柱が伸び切ってしまったのだ。
 
 殻ごと冷凍、室温で解凍した場合も半開きが多い。ところが「新鮮な貝を急速冷凍、急速解凍した場合は、口が開きやすい」と潮助教授。ゆっくり解凍するとATPがよそで使われるが、急速解凍した場合はまだ残っている。解凍で細胞膜が壊れ、カルシウムイオンが大量に流れ込んで貝柱が縮まる。
 
 ただし「貝の種類によって貝柱の大きさや、接着剤になるコラーゲンの種類が異なる。どの貝でも口が開くわけではない」という。例えばハマグリは貝が大きく殻も分厚いため火が通りにくい。解凍に時間がかかり、たいていは半開きになってしまうそうだ。
 
■閉じておいしく
 
 酒蒸しや汁物などでは、貝の口は開いているのが普通。しかし欧州などでは、貝を蒸し焼きにするため、わざと靱帯を切って調理することもある。こうすれば加熱しても貝の口は開かない。貝のうまみを閉じ込めたい時は、こちらの方がいいようだ。
(日本農業新聞より)


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