何人寄っても、もんじゅの知恵なし
大規模なナトリウム漏れ事故があった1995年以来、14年5ヶ月ぶりに運転再開した高速増殖炉もんじゅですが、運転再開直後からトラブル続出です。「どんなささいなトラブルでも通報、公表する」との約束も、またもや通報遅れで謝罪するという以前と同じパターンを繰り返し、運転員に制御棒挿入という基本操作も伝わっていなかった、という目もあてられない状況におちいっています。日誌風に、まとめてみますと、6日 運転再開。その夜、原子炉容器内の燃料破損の検知装置が警報を出す。通報なし。7日 同じ装置が午前10時過ぎからさらに5回鳴動した。3台ある同タイプのうち2台目も調子が悪くなり停止した。正午になって、検知器の故障ではないかとして、ようやくトラブルを公表。8日 臨界達成。ナトリウム温度が一時上限値超え、警報が作動した。9日 さらに9日午後1時からの24時間で施設内で75回もの警報が鳴る。3台ある検出器のもう1台も使用を取りやめる。10日 制御棒操作でミスが発生。電力会社からの出向で、もんじゅの制御棒を初めて動かした運転員が方法を熟知していなかった。制御棒は3種類あり、操作方法も異なる。ミスのあった制御棒は全挿入の4ミリ手前からゆっくり落ちるため、最後にボタンを長押しする必要がある。だが操作マニュアルにその記載はなく、運転員は知らなかった。14日 原子炉格納容器の床下に設置した酸素濃度計の機能が約5時間半、停止していた。16日 定期点検、機器調整などのため、原子炉停止。22日再起動の予定。17日 放射線管理区域内にある放射線管理室の排気モニターの故障を知らせる警報が鳴った。運転員が現場を確認したところ、モニターに空気を送り込む「ダストサンプリングポンプ」1台が流量異常で停止していた。毎日のように起こるトラブル。以前から「動燃体質」とよばれていた隠蔽体質。どんなささいなトラブルも即座に通報、公表すると約束しながら、またも遅れて謝罪しながらも、運転は続けるとは。さらに、基本操作もマニュアルには記載されず、実際の運転員に伝わっていなかったのです。この14年間、何をしていたのでしょう。事故後、運転再開を目指すも、ナトリウム漏れ検出器の取り付けミスなどのトラブルを多発、地震対策などの問題も浮上する中で、再開は計4回延期されましたが、経済産業省原子力安全・保安院と内閣府原子力安全委員会が2010年3月に安全性に「妥当」と判断、2010年4月28日に福井県知事・西川一誠も運転再開を了承し、今回の再開に至ったわけです。しかし、トラブル続きだったのに、どうして運転再開が認められたのかと思えば、2010年3月、2003年から2008年までの5年間に亘り、日本原子力研究開発機構から業務を請け負う地元企業数社が、河瀬一治・敦賀市長や、西川一誠・福井県知事のパーティー券を累計で、河瀬市長から222万円、西川知事から130万円分、それぞれ購入していたことが発覚したということです。建設費が当初予算で約5,900億円。事故後、14年5ヶ月動かなかったけれども、建設・運転費はこれまでに約9000億円、関連費用も含めてこれまでにかかった総予算は約1兆9000億円にもなるということです。今後も、毎年維持費だけで200億円かかっていきます。そして、今の計画、運転がうまくいったとしても、高速増殖炉の実用化はまだ遠く、もんじゅは「原型炉」の段階であり、「実証炉」を経て、2050年までに商業化することをめざしているそうです。いったい、実用化、商業化までに、何兆円かかるのでしょうか。そして、結局だめだったとしたら、私たちの税金はどうなるのでしょう。コストが高いとかいわれながら、EPTで約2年、耐用年数40年とすれば、かかったエネルギーの20倍は発電してくれる太陽光パネルは、現状でも確実にコストを回収してくれます。そして、さらに製造エネルギーやコストの改善、変換効率の改善が見込めます。ぜひ、原発重視のエネルギー政策を見直し、再生可能エネルギーに全力を傾ける方向に転換していってほしいと思います。