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テーマ:お勧めの本(7219)
カテゴリ:お勧めBOOK
「傷跡」アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀短篇賞受賞
'06.02/新書308p ◇内容◇サラより 【片方の乳首を引きちぎられ、歯を2本抜かれ、中指を切り落とされた時も彼女は生きていた。 腹部と太ももの5箇所のタバコの火傷の時、テニスラケットを膣の中へグリップの先が 胸骨のすぐ下で青紫色のこぶになっているほど深く突っ込まれたた時も彼女は生きていた】 ************************************** 主人公は、キャサリン、リズ、モナ、キャシー、サラ、5人の優秀な女性警官。 短編集の中で、MWA賞最優秀短篇賞受賞したのはキャシーの「傷痕」。 レイプ未遂犯が入ってきて胸にナイフを立てられたと説明しても、担当のロビロ警部はいろんな状況証拠と 当時のマージョリーの精神状態から彼女の自作自演として、事件に幕を閉じる。 当時、<被害者サービス>だったキャシーは、自分であんなにナイフを立てられるわけがないと 思いつつも、捜査に口などだせるはずもなく友情めいたものをマージョリーに感じていたが、 何もできないでいた。 6年後、マージョリーが再捜査依頼してきてその担当官がキャシーだったのだ。 しかも、今の恋人は当時の担当警部のロビロ。。。 この本は、何が面白いかというと元警察官である著者の経験を交えて書かれていると言う事。 警官の父親への嫌悪、伴侶の警官の殉職、被害者への追悼の深夜の集まり、正当防衛で犯人を射殺したあとの気持ちの変化と周囲の態度の変化など。 警官である当事者でないと、なかなかわからない現場の状態や心境が綴られている。 死臭を嗅いだだけで死後何日か言い当てられる自分や、私服警察は死臭がつかないようにジャケットは必ずぬいで現場へ入ること、制服に染み付いた死臭をとるために特別なクリーニングがあること。 *********************************************** <総評>★★★★・ ページ数は、308Pと多くはないが、この本が出来上がるまでに12年もの歳月を費やしたらしい。 最後の「サラ」は、自分の過失を許せずメキシコへ逃げる。現実から、過去から、自分から。 そこにはメキシコ独特の木の精霊の歌声やささやく風が吹き抜けるさわやかさがある。 そして、周囲の人間が彼女の頑なな心を少しずつ溶かしていく。 残酷な描写や、追い込まれた精神状態が続く主人公たちが多いが、後味は不思議と悪くない。 おそらく、メキシコの精霊のやどる木の風景となでるような風が最後に目に浮かぶからであろう お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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