━『マルキ・ド・サドの演出のもとに・』






『マルキ・ド・サドの演出のもとにシャラントン精神病院患者たち
によって演じられたジャン=ポール・マラーの迫害と暗殺(1967) 』

ペーター・ヴァイスの戯曲をそのまま、「三文オペラ」「雨のしのび逢い(1960)」のピーター・ブルック監督が映画化。おそらく映画史上最も長いタイトルでしょう^^; そのままのタイトルで公開されたが、余りにも長いので通称「マラー/サド」と呼ばれている。昔、文芸座で観たのですが、その演劇的な演出が斬新で圧倒的な映像美に魅せられ記憶に残る映画として再見を望んでいました。BSで放映されたことがあるようですが、ビデオ発売もなく4年ほど前に偶然検索でDVDを引き当てた時は驚喜したものです。



19世紀はじめのフランスでは、治療の一環として精神病院では演劇がプログラムに取り入れられていた。収監されていたサド侯爵は、フランス革命で活躍し後に暗殺されたマラーのドラマを患者達を使って演出する。当時の精神病患者は囚人と同じように扱われていたようで、檻に入れられた患者たちが、看守や修道女により再三中断させられながらも演じる劇は、異様な緊張感に包まれたただならぬ力に満ち溢れ、観る者を釘付けにしてゆきます。患者たちは檻のなかでサドの演出のもとに、フランス革命当時のマラーに関する物語を病院長の家族の前で演じさせられ、檻の外でそれを観る紳士淑女がおり、この映画を観る観客がいるという複雑なシチュエーションの実験的な作品ですが、舞台劇の生々しさを損なわず、描き出された本作の迫力は正に圧巻で、鬼才P・ブルックの映画+舞台への才気を感じずにはいられない傑作です。スタジオのほとんど『何も無い空間』で進行し名カメラマン、デヴィッド・ワトキンスの撮影で刺激的でスタイリッシュな映画になっています。
サド侯爵演じるパトリック・マギー(『時計じかけ…』で、アレックスに妻をレイプされた反政府小説家、アレキサンダー氏を、『バリー…』ではイカサマ賭博師、シュヴァリエ・ド・バリバリーを演じた北アイルランド出身の舞台俳優。 )が実にはまり役で、王立シェークスピア劇団が総力をあげて複雑なシチュエーションの実験作を盛り上げてくれます。



作中劇のマラーを暗殺するシャルロットを演じるグレンダ・ジャクソンが実に可憐で(当時30才)私はすっかり心を奪われてしまいました。彼女は演劇版の「マラー/サド」(ニューヨークのブロードウェイ等でで公演)にも出ていて、これが映画デビュー2作目でした。後にケン・ラッセルの「恋する女たち(1969)」や「恋人たちの曲/悲愴(1970)」「サロメ(1987)」やジョン・シュレジンジャーの傑作「日曜日は別れの時(1971)」などでお馴染みの名女優です。女優の演技力というものを最初に感じた女優さんで、「日曜日は別れの時(1971)」のオウムの真似をする演技には絶句しました。『恋する女たち(1969)』と『ウィークエンド・ラブ(1973)』で2度アカデミー主演女優賞に輝いています。




輸入DVD『マルキ・ド・サドの演出のもとにシャラントン精神病院患者たち
によって演じられたジャン=ポール・マラーの迫害と暗殺(1967) 』

監督: ピーター・ブルック Peter Brook
脚本: ペータ・ヴァイス
撮影: デヴィッド・ワトキン David Watkin
 
出演: パトリック・マギー Patrick Magee
イアン・リチャードソン Ian Richardson
グレンダ・ジャクソン Glenda Jackson

<あらすじ>

一七九七年から一八一一年まで、シャラントン精神病院院長クールミエ氏は、入院患者の治療手段の一部として病院内で、患者自身による芝居を定期的に行なった。一八○三年から一八一四年に死ぬまでの間、そこの患者だったサド侯爵(P・マギー)は、ここで行なわれた多くの劇の台本を書き、そして演出した。その当時のパリでは、その精神病院を訪れ芝居を見ると同時に、狂人たちの奇怪な行動をみることがはやっていた。そして今日もまた、そのひとつが上演された。フランス革命の過激派の領袖ジャン・ポール・マラー(I・リチャードソン)がシャルロット・コルディ(G・ジャクソン)という女に暗殺された事実にもとずく劇である。歴史上のふたりの極端論者の激しい衝突が描かれる。マラーは、社会改革よりは激烈な革命を求める男、サド侯爵は、厭世的個人主義者である。マラーは社会問題に全身を浸しており、サドは、それらからまったく遊離している。いくつかのエピソードがつづられて劇は進みやがて、マラーとサドの相対するふたりの人物の間に、悲劇は偏執狂的な若い女性シャルロットがあらわれ、浴槽につかっているマラーを短刀で刺殺して幕が下りる。小さな象徴的な狂気の世界を背景に、革命について、社会についてそして人間の運命について重大な問題が提起されて、映画もまた終る。が、それら問題の解答は何ひとつ与えられない。解答は観客自身が発見しなければならないのである。(~goo映画より)



「なにもない空間は、現実世界のあらゆる要素を含んだきわめて複雑な世界を観客に想像させることができる。その世界では、社会的、政治的、形而上的、個人的とあらゆる種類の関係が共存し、絡み合っている。しかし、この世界は、劇がしだいに展開していくにしたがって、ひとつひとつ言葉や動作、関係、テーマ、登場人物どうしのやりとりを重ねていくうちに構築、再構築されていくのです。これほど入り組んだ世界をたどるからには、観客の想像力はつねに開放されていなければなりません。そこで、なにもない空間が貴重な意味を持ってきます。なぜなら、それは二、三秒おきに観客に初心に帰る機会を与えるからです。観客は、いったん白紙に戻ることでいっそう鮮明な印象をとどめることができます。」

ピーター・スティーヴン・ポール・ブルック(Peter Stephen Paul Brook)
1925年3月21日生まれ
演出家 国際演劇創造センター(CICT)主宰

<略歴>

1925年 イギリス ロンドンに生まれる
1945年 オックスフォード大学卒業
1946年 シェークスピア記念劇場(現ロイヤル・シェークスピア劇場)の最年少招待演出家
1947年 コベント・ガーデンのロイヤル・オペラ・ハウス演出家
1962年~現在 ロイヤル・シェークスピア劇団(RSC)を基盤に活動
1971年 国際演劇研究センター(CIRT)設立(パリ)
1974年~現在 国際演劇創造センター(CICT)主宰(パリ)

<主な舞台作品>

1955年 『タイタス・アンドロニカス』
1962年 『リア王』
1964年 『マラー/サド』
1970年 『真夏の夜の夢』
1971年 『オルガスト』
1981年 『桜の園』『カルメンの悲劇』
1985年 『マハーバーラタ』
1990年 『テンペスト』




「注目すべき人々との出会い (1979)」



欧州とアジアの交差する地アルメニアで生まれた今世紀初頭の神秘思想家グルジェフの自叙伝の映画化。この作品を発表する事によってグルジェフ信奉を名乗ることとなった。

<主な映画作品>

マハーバーラタ<未>(1989)
グルジェフ-神聖舞踏(1984) <製作>
スワンの恋(1983) <脚本>
注目すべき人々との出会い(1979)
赤と白とゼロ<未>(1969)
マルキ・ド・サドの演出のもとにシャラントン精神病院患者たちによって演じられたジャン=ポール・マラーの迫害と暗殺(1967)
雨のしのび逢い(1960)
三文オペラ(1952)



Glenda Jackson (グレンダ・ジャクソン)

1936年イングランド・チェンシャー州 Birkenhead生まれ。王立演劇学校からロイヤル・シェイクスピア・カンパニーへ。『恋する女たち(1969)』と『ウィークエンド・ラブ(1973)』で2度アカデミー主演女優賞に輝く。1992年に女優業をを引退し労働党にて政治活動。現在運輸大臣?。

<主な作品>

高貴なる殺人<TVM>(1991)
キング・オブ・ザ・ウィンド/疾風の覇者<未>(1989)
レインボウ(1989)
サロメ(1987)
レイ・オフ/女の名のもとに<未>(1987)
海に帰る日<未>(1986)
ニューヨーカーの青い鳥(1986) 出演
サハロフ/愛と自由を求めて<TVM>(1984)
戦場の罠<未>(1982)
パトリシア物語<TVM>(1981)
ホップスコッチ/或るエリート・スパイの反乱<未>(1980)
ロスト・アンド・ファウンド<未>(1979)
スティービー<未>(1978)
愛と哀しみのエリザベス<未>(1975)
ウィークエンド・ラブ(1973)
クイン・メリー/愛と悲しみの生涯(1971)
日曜日は別れの時(1971)
ボーイフレンド(1971)
エリザベス R<TV>(1971)
恋人たちの曲/悲愴(1970)
恋する女たち(1969)
マルキ・ド・サドの演出のもとにシャラントン精神病院患者たちによって演じられたジャン=ポール・マラーの迫害と暗殺(1967)
孤独の報酬(1963)




『日曜日は別れの時(1971)』



監督: ジョン・シュレシンジャー John Schlesinger
製作: ジョゼフ・ジャンニ
脚本: ペネロープ・ギリアット Penelope Gilliatt
撮影: ビリー・ウィリアムズ Billy Williams
 
出演: グレンダ・ジャクソン Glenda Jackson
ピーター・フィンチ Peter Finch
マレー・ヘッド Murray Head
ペギー・アシュクロフト Dame Peggy Ashcroft
ベッシー・ラヴ Bessie Love
ダニエル・デイ=ルイス Daniel Day-Lewis
ジョン・フィンチ Jon Finch

あの傑作「真夜中のカーボーイ」の後、シュレシンジャーが、本国イギリスに戻って作った、苦渋に充ちた大人の愛の物語。金曜から日曜までの10日間の、2対1男女関係の話だが、若い彫刻家の卵ボブ(マレー・ヘッド)がバイ、ユダヤ人中年医師(ピーター・フィンチ)がゲイ、若い男はゲイの医師と、経営コンサルタントで夫と別居中のアレックス(グレンダ・ジャクソン)、両方と関係を持っている。ボブにとって、二人の愛人より自分のキャリアが、また己自身の方が結局は大切である事を悟りアメリカへ去ってしまう。残された二人の男女はさり気ない出会いの機会を待つ……。ピーター・フィンチとグレンダ・ジャクソンの演技が見物の知的心理劇!同時期に観て感銘を受けたウィリアム・フリードキンの「真夜中のパーティ(1970)」をはじめ同性愛をテーマにした作品には良質なものが多いですね。



『エリザベス R<TV>(1971)』

監督: ロデリック・グラハム、クロード・ホワッタム、ハーバート・ワイズ
出演: グレンダ・ジャクソン、ロバート・ハーディ

スペイン無敵艦隊を撃破しイギリス黄金時代を築きあげた女王エリザベス1世の生涯を、BBC(英国放送協会)が見事に映像化した作品。権謀術数渦巻く宮廷を背景にグレンダ・ジャクソンのエリザベスは圧倒的な迫力で渾身の演技を魅せる!9時間にわたる長尺もなんのその1971年エミー賞ドラマ部門主演女優賞の大河歴史ドラマの最高峰!



『恋人たちの曲/悲愴(1970)』

監督: ケン・ラッセル Ken Russell
原作: キャサリン・D・ボーウェン
バーバラ・V・メック
脚本: メルヴィン・ブラック Melvyn Bragg
撮影: ダグラス・スローカム Douglas Slocombe
音楽: チャイコフスキー Tchaikovsky
指揮: アンドレ・プレヴィン Andre Previn
 
出演: リチャード・チェンバレン Richard Chamberlain
グレンダ・ジャクソン Glenda Jackson
マックス・アドリアン Max Adrian
クリストファー・ゲイブル Christopher Gable

ケン・ラッセルはチャイコフスキーが精神を病んでいたということや、ホモセクシュアルであったというショッキングな事実を大胆に描いています。チャイコフスキーが幻覚を見るシーンなど、鳥肌が立ってしまうほど恐ろしいほどの演出でした。チャイコフスキーの死については、病死説、自殺説など様々な説がありましたが、これもラッセルの手にかかって鬼気迫るものに仕上がっています。



<ケン・ラッセル Ken Russell>

1927/07/03生まれ。本名はHenry Kenneth Alfred Russell。商船大学卒後後、軍隊に所属。50年にバレエ団にダンサーとして入るが、翌年には劇団で俳優となる。その後写真家となり、やがて自主映画を撮るようになった。BBCで芸術家のドキュメンタリーを撮り注目される。本格映画監督デビューは、68年のハリー・パーマー・シリーズの一本「10億ドルの頭脳」。「Tommy/トミー」、「マーラー」、「リストマニア」、「バレンチノ」などの芸術家を異色の切り口で描いた作品が多い一方、「アルタード・ステーツ/未知への挑戦」、「ゴシック」、「白蛇伝説」などの娯楽色の強い作品も手掛けている。2度の離婚後、ヘティ・ベインズと92年に再婚した。



『恋する女たち(1969)』

監督: ケン・ラッセル Ken Russell
製作: ラリー・クレイマー Larry Kramer
原作: D・H・ロレンス D.H. Lawrence
脚本: ケン・ラッセル Ken Russell
ラリー・クレイマー Larry Kramer
撮影: ビリー・ウィリアムズ Billy Williams
音楽: ジョルジュ・ドルリュー Georges Delerue
 
出演: アラン・ベイツ Alan Bates
オリヴァー・リード Oliver Reed
グレンダ・ジャクソン Glenda Jackson
ジェニー・リンデン Jennie Linden
ヴラデク・シェイバル Vladek Sheybal

D・H・ロレンスの同名小説をK・ラッセルが映画化。イギリスの炭鉱の町を舞台に、教師と彫刻家の姉妹の、対照的な愛の姿を描く。破滅的な愛に身を置く彫刻家を演じて、G・ジャクソンはアカデミー主演女優賞を受賞。ケン・ラッセルはD・H・ロレンスの小説『チャタレイ夫人の恋人』『虹』も映画化しています。



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