世の中に、「ツタンカーメンのエンドウ」と称して流通しているエンドウマメの品種がある。文字通り、あのエジプトのツタンカーメンの墓から発見され、3000年の歳月を経て発芽したとされているものだ。発見されたのは1922年らしい。が、自称(笑)園芸研究家の私としては、常々この話に胡散臭い物を感じていた。とは言いつつも、なんとなくいつかは育ててみたいとは思っていたが、やはりその胡散臭さ故に(笑)、なかなか積極的に種子を買おうという気持ちが起こらなかった。
と、そんなある日、私が通販で利用している某大手種苗会社から、サービス品としてツタンカーメンのエンドウの種子が届いた。裏面の説明には、「3000年の眠りを破って発芽し、人々を驚かせた」としっかり書かれている。しかし、こういう根拠のない話を宣伝文句にして売るのはいかがなものかと思う。
そもそも、どんなに保存条件が良くても、3000年も種子が生き続けるということは考えられない。もし、それが可能ならば、もっと他にも発芽例があってもいいはずである。3000年とまではいかないが、少なくとも100年前のエンドウが発芽したとか、そういう類の話があってもいいはずなのに、豆類でそんな話を聞いたことがない。そして、やはり外国でも懐疑的に見る人が少なくないらしい。英語版のWikipediaによれば、「歴史や園芸学の学者たちは、この種子の起源の話は嘘であり、実際にはカイロの市場の商人がもたらしたものだと信じている」とある。
そういうわけで、この種子の逸話を本当だとして紹介して売ることに首を傾げてしまう。まあ、偶然とはいえせっかく種子を入手したし、日本の品種とはやはり特徴が違うので、場所があったら種子を蒔いてみたいとは思う。ちなみに、私はかの「大賀ハス」の話も実はちょっと懐疑的である。