産直コンテナから見える流通戦争
下の画像をご覧いただきたい。ファーマータナカも出荷している大分県大山町農協の農産物直売所「木の花ガルテン」(全7店舗)の各店舗に配送する中継基地の様子だ。(中継基地に集められた産直用コンテナ) 右から3番目はそのうちの1店舗の別府鶴見園店だ。大分の百貨店トキハの関連会社トキハインダストリーのスーパーマーケット鶴見園店のインショップとして「木の花ガルテン」鶴見園店は出店している。 ちょっと前から微妙に他店舗比べて出荷コンテナ数が少なくなっているのが気になっていた。いわばコンテナ数の僅かな減少というのミクロの変化から、何かしらマクロ的な変化が起こっているのではと思ったのだ。産直のコンテナ数が少ない ↓産直の売上が少ない ↓スーパーの売上も減少しているかもしれない ↓スーパーの来客数が減少しているかもしれない ↓ 何か状況の変化が起こっているかもしれないというわけだ。 国民の胃袋の合計容量は同じ大きさであり、巷ではそのパイの争奪戦が繰り広げられている。(日曜生活雑貨もほぼ同じ事がいえるだろう)マクロ的には日本全体で例えば農産物直売所の売上が上がれば、当然市場経由の売上は落ちる。それと同じように1地区で近隣に競合店が出来れば、当然そこに客を奪われ、売上を食われるのである。ちょっと情報を収集してみるとやはり5月27日にトライアル別府店というデスカウントスーパーマーケットがオープンしていた。 (価格破壊のトライアル)この際2つの量販店の動きを見ておくことにしよう。トライアルカンパニーは売上高1,711億円(2009年3月期)、店舗数98店舗、一方のトキハインダストリーは売上高386億円(2009年2月期)、店舗数32店舗で、トライアルは売上高も店舗数も鰻登りで、これだけを見ると、勝負は見えているといえそうだが、果たして今後はどうなるのだろうか。まずはトライアルカンパニーだ。トライアルカンパニーはいわゆる「郊外型大型スーパー」のビジネスモデルを展開している。生鮮食品、加工食品、さらに日用雑貨や家電製品などを豊富な品ぞろえで提供し、顧客に「エブリデイ ロープライス」をスローガンに、徹底したローコスト運営を実施している。同社は物流も自社で行っており、そこで削減したコストをさらに安価な商品提供のために活用している。消費者サイドとしてのファーマータナカから言えば、地元日田店がオープンした時のキャッチフレーズ「消費税内税方式」と、今では珍しくないが「24時間営業」は庶民から圧倒的支持を受けたといえるであろう。現在も格差社会の体現者であるファーマータナカ家もよく利用させていただいている現状がある。(当時Tシャツ299円等は香港の市場で安さに度肝を抜かれたのと同じ位の驚きだった。)一方で、居抜店舗の利用が多く、店内は雑然としていたり、あるいはゴチャゴチャしていたりで、「安かろう、悪かろう」といった感があるのも否めない。しかし急成長には当然理由がある。一般的に、店舗立地、営業時間(24時間営業)などの工夫、自社ブランド製品の開発等は、どの量販店も遅かれ早かれ実行するので、他社との決定的な差別化要因とはいえなくなってくる。トライアルカンパニーのすごいところは、PB商品である低価格でしかも品質の良い「人気商品」「定番商品」の売上を確保し拡大するために、その動向の分析がより機動的にできるツール使い、いわゆるドリルダウン分析と対応を迅速に行っているということらしい。パレートの法則(別名2:8の法則)で、全商品の20%が80%の売上を作るという事への対処が迅速的確に行われているということのようだ。又前述のように、店舗は九州の寿屋、ニコニコ堂等の物件をはじめとする居抜物件への出店が多く、これが出店コストを大きく抑え、低コストでの出店を可能としているのだ。反面急成長の裏に、極めて低い粗利率(16.14%)、同じく低い自己資本比率(4.16%)、負債ではその主要項目である社債および長短借入金の合計が大きく、買掛金もかなり多い現状は経営圧迫の原因となっている。ともあれ追われる側は戦々恐々としているのに、追う側は、勝つノウハウを持ってしまえば、出店さえすればいいのである。出店を加速するトライアルカンパニーの動向を注視したい。一方のトキハとトキハインダストリーは大分県の商業販売額の約1割弱を占めるシェアを有している。そのブランド力は、農業者の間でも、トキハとの取引があるのは一種のステータスとなっている程だ。人口50万人以下の都市で本店、別府店、トキハ会館、ショッピングモールわさだタウンを有し、その核店舗として地方百貨店では九州初となる本格的な郊外型百貨店わさだ店を開業し話題となったが、百貨店という業態全体が売り上げの鈍化に見舞われていることに加え、地方都市の限られた商圏の中での多店舗展開が足枷となり近年では自社内の競合にも苦しんでいる。2009年2月期の決算では3期連続の減収減益を計上したことから、2009年5月13日には、今後3年間の中期経営計画を公表するとともに、利益体質の改善のために、メインバンクの大分銀行より専務を副社長として招聘し、連携強化のためにトキハインダストリー社長を取締役に据えるなどの新経営体制を発表している。「地方百貨店の雄」と言われていたトキハグループの今後にも注目したい。