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カテゴリ:実践!企業価値評価
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薄膜太陽光電池 「世界最高性能」を一貫製造 アルバック 量産システム販売 ■記事への素朴な疑問 太陽光を電気に変える変換効率で世界最高性能の電池を量産できる、 一貫製造システムを開発したようです。 7月から販売を始め、中国や台湾、韓国、インドを中心に太陽電池メーカーを開拓し、 受注額を前年比3倍の1000億円とする狙いです。 本日は、ディスプレイ・半導体・太陽電池などの製造装置を販売する アルバックを取り上げます。 これまでの同社の経営状況はどうだったのでしょうか? それでは、08年度まで直近5年間の財務状況を基に分析を行います。 アルバックの決算・財務分析はこちらから ■アルバックの損益計算書P/Lの視点 売上・利益ともに07年までは増収増益ですが、 08年に売上は横ばい・利益は約半減しています。 08年の各指標と伸び率は以下の通りです。 売上高 2400億円 (1%増) 営業利益 90億円 (45%減) 純利益 36億円 (51%減) 有報でさっと確認すると、 売上の伸び悩みについては、ディスプレイ業界の設備投資延期、 半導体業界の需給バランス悪化・価格下落による装置販売減が原因です。 利益の半減については、「業績等の概要」や「経営成績の分析」の項目にも、 特段の記載がありませんでした。 利益が半減したにも関わらず、明確な理由が文章として記載されていないことには、 ちょっと驚きです。 説明責任への意識が高いとは言えなさそうですね。 あとでROIC等をみて、何が要因になりそうか、探りましょう。 アルバックの決算・財務分析はこちらから 次に、実際のキャッシュの流れを見てみましょう。 ■アルバックのキャッシュフロー計算書C/Sの視点 08年を除いてFCFが常にマイナスであり、 投資CFは順調にマイナスの伸びを示していますが、 営業CFは年によって大きく上下しています。 財務CFはプラスとなる事が多く、 FCFマイナスを補う形で借入を行っています。 08年の営業CFは340億、投資CFはマイナス260億円、 財務CFはマイナス17億でした。 08年の営業CFは過去5年で最高、前年と比べて約10倍も多いですが、 本事項についても文章としての記載が無いので営業CFの内訳を見ると、 運転資本が230億円も減少しており、 これによりキャッシュが増加したことに因ります。 それでは、貸借対照表B/Sを見てみましょう。 ■アルバックの貸借対照表B/Sの視点 総資産は07年の3180億から5%減少し、08年は3030億円でした。 内訳の変化として、営業CFで見た通り、 運転資本が資産の約10%減少したことが目立ちます。 また、投資CF/財務CFの変化の通り、有形固定資産、借入金が増加しています。 運転資本の減少が大きく、 業界の景況に応じて生産・販売の調整を行っている様子がB/Sに現れていますね。 それでは、今まで見てきた各項目が、経営状況にどう影響しているのか見てみましょう。 アルバックの決算・財務分析はこちらから ■アルバックの経営効率ROICの視点 05年には10%近かったROICは08年に4%となっています。 主な要因は収益性にあり、P/Lで見たとおり、税引き後営業利益率が2.3%に悪化しています。 そしてその要因は販管比の悪化であることが分かります。 当社の有報には要因の記述がありませんでしたが、ROICを見ると、 パフォーマンスの悪化がどこにあるか、一目瞭然ですね。 また、効率性も悪化しており、それは有形固定資産回転率の悪化にあることがわかります。 積極的に設備投資をしている様子が現れています。 最後に、C/S・B/Sで見たとおり、運転資本は08年に大きく改善しており、 これが営業CF増の要因となっています。 P/Lの販管比の悪化についてですが、P/Lの詳細を見ると、原因は販売費の増加にあります。 07年、08年は売上・原価がほぼ同額であり、粗利が460億でしたが、 07年は販売費が100億で、営業利益が170億円ですが、 08年は販売費が170億で、営業利益が 90億円となっています。 費目として、07年には無かった、「製造部門による販売活動等支援費 66億円」 が計上されており、本項目による販売支援で、運転資本が圧縮されたことが窺えます。 アルバックの決算・財務分析はこちらから ■アルバックの分析まとめ 07年までは増収増益でしたが、08年に売上は横ばい、利益は半減しています。 (損益計算書P/Lの視点) FCFマイナスで投資を積極的に続けていますが、 08年は運転資本の減少で営業CFが前年の10倍程度多く、FCFプラスに転じました。 (キャッシュフロー計算書C/Sの視点) C/Sで見たとおり運転資本が減少し、同時に有形固定資産・借入金が増加しています。 (貸借対照表B/Sの視点) ROICの悪化は主に収益性の悪化、特に販管比の悪化にあり、 08年は販売費が1.7倍に膨らんでいます。 (経営効率ROICの視点) ディスプレイ・半導体など業界の景況により、生産・受注・販売、 つまり業績が大きく変化する経営体質ですが、 太陽電池事業については、有報に「急速に拡大」という記述があり、 当社にとって有望な成長市場のようです。 同社が掲げるポストFPD戦略という、経営戦略の中核の1事業にも指定されており、 本日の記事でも世界最高性能の商品を販売するとありましたが、 今後の同事業における受注・販売等、業績の成長に注目ですね。 アルバックの決算・財務分析はこちらから 以上の分析でご不明な点等ございましたら、 是非シェアーズまでご連絡ください。 感想もお待ちしております! support@shares.ne.jp お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009年06月29日 16時17分15秒
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