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カテゴリ:実践!企業価値評価
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昭和シェル サウジ国営と太陽光発電 まずサウジで 新興国へ展開 ■記事への素朴な疑問 サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコと 共同で太陽光発電事業に参入するようです。 昭和シェルの太陽光電池を使い、 まず2010年にサウジに小規模分散型の発電所を建設、 家庭や公共施設に電力を販売します。 12年をめどに合弁会社を設立し、 中東のほか東南アジアなどの新興国でも事業を展開する想定です。 電池は金属化合物型の製品を使うため、 シリコン製と比べて生産コストが安く、 販売量が増えれば発電事業の採算も取りやすいと見込まれています。 事業費は数十億円の見込みで、 発電や配電設備の運用で東京電力が協力します。 本日は、石油大手の昭和シェルを取り上げます。 これまでの同社の経営状況はどうだったのでしょうか? それでは、直近期08年(平成20年1月1日~平成20年12月31日)まで 5年間の財務状況を基に分析を行います。 昭和シェルの決算・財務分析について ■昭和シェルの損益計算書P/Lの視点 売上は堅調に伸びていますが、 営業利益は上下し、純利益は減少傾向にあり、 08年は双方共に赤字となっています。 08年の各指標と伸び率は以下の通りです。 売上高 3.3兆円 (6%増) 営業利益 マイナス120億円 純利益 マイナス160億円 有報でさっと確認すると、赤字転落については、 当期の急激な原油価格の下落によるたな卸資産の評価損に因るもので、 もしもこの影響を除いた場合は、営業利益相当額は394億円と、 前年の361億円より上回っているとのことです。 原油価格について、年初は1バレル89ドル、 7月には140ドルになり、そしてその後の金融危機等で36ドルまでに下落と、 確かに値動きが激しく、業績に大きく影響したようですね。 昭和シェルの決算・財務分析について 次に、実際のキャッシュの流れを見てみましょう。 ■昭和シェルのキャッシュフロー計算書C/Sの視点 FCFは年によってプラス・マイナスに上下しており、 営業CFは徐々に増加する中、投資CF額はそれ以上に伸びています。 財務CFはFCFマイナス分を補う形で年によってプラスとなっています。 08年の営業CFは270億、投資CFはマイナス430億円、財務CFは720億でした。 08年の投資CFは前年の2倍程度にもなっていますが、 これは給油所・精製設備の改修および太陽電池工場の建設といった設備投資に因るものです。 また、08年の財務CFは直近でプラスだった05年の200億から3倍以上にもなっていますが、 これは手元流動性確保のためにCP等を発行して短期借入金を借入したことに因ります。 昭和シェルの決算・財務分析について それでは、B/Sを見てみましょう。 ■昭和シェルの貸借対照表のB/Sの視点 総資産は07年の1.3兆円から約10%の1200億程度が減少し、 08年は1.2兆円でした。 変化の内訳として、運用面では、 上述の通り売掛・たな卸し資産が770億から520億へと、 30%以上減少しています。 また、現金は160億から730億へと5倍に増加しました。 調達面では、仕入債務が390億から230億へと、40%以上減少し、 短期借入金は1000億から2200億と2.2倍に増加、 そして株主資本が3400億から3100億へと10%程度減少しました。 08年の流動資産は総資産の56%、流動負債は59%となり、 流動比率が100%を割り込んでいます。 原油価格の急減で売掛・たな卸しの時価評価損による影響が どれほど大きいかが分かります。 C/Sで見たとおり、短期借入金を借り入れる必要性が、 流動比率の低下からも明らかですね。 昭和シェルの決算・財務分析について ■昭和シェルの分析まとめ 売上は堅調に伸びていますが、利益は上下しており、 08年は原油価格の暴落で赤字転落となりました。 (損益計算書P/Lの視点) 年によってFCFがプラス・マイナスに変動しており、 営業CFは徐々に増加、投資額はそれ以上の伸びを示す中、 08年は大幅な投資・借入を行っています。 (キャッシュフロー計算書C/Sの視点) 売掛・たな卸し、株主資本が減少し、 借り入れに因る現金・短期借入金の増加で、 流動比率が100%を割り込んでいます。 (貸借対照表B/Sの視点) 石油事業の売上は3.2兆円、営業損失が163億円と、景況の変化による 主力事業の悪化が大きく業績に影響したことが分かりました。 太陽電池事業を含む、その他事業は売上が320億円、営業利益は11億円と、 未だ主力売上の1%にすぎませんが、同社の戦略では、 「新たな創業」として太陽電池事業を第2のコア・ビジネスとしています。 本日の記事では、まずは2010年にサウジでの事業を試験的に行い、 軌道に乗った段階で2012年めどに合弁会社化して、 中東のほか・東南アジア・アフリカ・中南米などに事業拡大するとあり、 中長期的な今後の同社の収益ポートフォリオの変化に注目ですね。 昭和シェルの決算・財務分析について 以上の分析でご不明な点等ございましたら、 是非シェアーズまでご連絡ください。 感想もお待ちしております! support@shares.ne.jp お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009年07月02日 10時12分38秒
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