|
カテゴリ:カテゴリ未分類
●はちに刺された!(これに刺されたのです↑涙)三年生の女の子による主観的な実物大です。
幼い頃に流れていた時間は、いつ果てるとも知れぬ永い時間だったような気がするが、もはや八月も終わりに近いことは、もうだいぶ研ぎ澄まされてきた自然への感性によって、小夜も感じていた。 季節はまたゆっくりと、だが確実に移り変わっていくらしかった。 小夜はこの夏三度目の皮がむけはじめていた。そして文字通り、一皮むけるたびに里の子色に染められていった。 夏休みも残すところあと一週間になったある日のこと、その日相生の子供たちは久しぶりに近場で遊んでいた。 相生は冬が厳しいので、冬休みを多くとる分、二学期は8月下旬に始まってしまう。もうそろそろ夏休みの宿題をやりとげなければ。 ひぐらしが鳴いている。 気がつくともう夕方近くになっていた。海よりの風は松の葉がすれの音を運んできた。涼しくなった──と小夜は思った。 小夜たちは、夏の名残のビーチボールで、ドッヂをしていた。 ゲームも佳境の折り、ボールを手にした清二郎の目が、敵方の内野に残っている小夜の姿を捉えた。 ──このあまっちょ! そういうや、清二郎は殺意のこもったボールを小夜に向かって投げつけた。 ──当てられる。 清二郎と目が合った瞬間に小夜は悟り、彼に向き直った。 清二郎の手から離れたボールは、小夜の真正面に飛んできた。はっし、と小夜は両手でそれをつかまえた。 ぶーん。 途端、ボールの影から奇妙な音が聞こえてきて、小夜の耳をかすめた。 音の正体を推測しかねて、小夜はボールをかかえたまま、くるくると首をまわして自分のまわりを確かめようとした。 ──お小夜、逃げぇ、はちだが! 事態にいち早く気づいた清二郎の切迫した声が飛んだその時、小夜の右の目に黒い物体が物凄い羽音をたてて接近してきた。 一瞬後、電撃に撃たれたような痛みが右のまぶたからわき起こった。手からボールが転がり落ち、小夜は右目を押さえてその場にしゃがみこんだ。 大げさに言うなら、その時には右目に局限していた痛みが拡散して、身体中のどこもかしこも焼け火箸を当てられているような痛みだった。これが、毒が身体に回る、というものなのだろうか。 ──はちに刺されたっちゃ! ──すずめばちだが! まず、一部始終を目撃していた清二郎とめっかちが同時に大声で叫んだ。 小夜のまわりには、まだあの恐ろしい音が響いていた。小夜は恐怖にかられて、闇雲に手を振り回して音の主を遠ざけようとした。 ──手ぇ出すでない! じっとしとけ! 武人が小夜のところにすっとんできた。 子供たちを再度狙って低空飛行をする蜂の姿をとらえると、武人は自分の側にいっぱいに引き寄せておいて、やおら足を上げてそのまま踏み降ろした。地面にはつぶされて神経だけが動いている、巨大なスズメバチの死骸が残った。 小夜は今や頭まで痺れてきていた。 何がなんだかわからない。何が起こったのかも、自分がどうなっているのかも、神経を集中して考えないと把握できない状態だった。 武人はすばやく頭を回転させた。事は一刻を争っている。 だがこの地域の唯一の医院である谷口診療所はあまりに遠く、ここから入り組んだ道で7キロはあろう。しかし、小夜の家に連れて帰って大人を呼んでいる場合でもない。 次に武人は、馬を走らせることを考えた。里の子供たちはみな、一様にして馬に乗ることはできた。しかし、考えてみると自分も含めて馬に二人乗りするという訓練は受けていなかった。しかも、今回乗せるのは20キロはあろうかという砂袋を詰めた人形のようなものなのだ。 武人は至極必然的に馬使いの豊を思いついたが、豊にしても馬を扱う細かな技術を専門的に教わった経験は一度もないはずだった。 しかし、ここまで考えてきて、武人は自分の思いを打ち消した。 そして思い出した。こと馬に関しての豊のカンには特別なものがあった。 人とはさっぱり心が通わせることのできない豊は、だが動物とは心を通い合わせることができた。特に、豊がひとたび馬の背にまたがると、互いを隔てる壁が消え、人馬が一体となることを武人は知っていた。 ──そこらにゆた、おらんかい! 武人の鋭い声が辺りに響いた。 本日の日記--------------------------------------------------------- はちに刺された小夜ちゃんもかわいそうですが、それはひとまず明日においておいて・・・鳥取の方たちは昨夜ご無事だったでしょうか。台風は通過して行きましたか? 梨の実が落ちてしまったただろうなぁ・・・。鳥取に限らず、九州。中四国の被害は凄まじいですね。80年代に比べると、災害の規模が確実に大きくなっているような・・・。これも温暖化などの影響なのでしょうか。おそろしいことです。台風の通った地域の方にお見舞い申し上げます。 大水といえば、鳥取市内に住んでいたときに、一度だけ大人の腰までの浸水があったことがありました。 実は、鳥取物語では便宜上三年生編と四年生編に構成しておりますが、私は二年生の七月から鳥取に住み始めました。二年生の時は、市内に住んでいたのです。片原町、薬師町、げんこう公園、三角公園などが遊び場でした。 市内全域が水に浸かった時は、本当にぎょっとしたものです。 でも、関東地方ではなかなか上陸しないがゆえに、それまで見たこともない災害というものに、子供らしい好奇心も覚えたことを、私はここで白状するべきでしょう。でも今は大人になりました。農作物などの、秋のみのりへの影響が心配です。 明日は●斥候、ゆたを見いだす●です。台風一過、暑くなりそうですね。明日もタイムスリップして、小夜の様子を見に来てやってください。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
|