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山口小夜の不思議遊戯

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2006年04月05日
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 夕闇迫る崖下は、‘不二遼によるいのちの電話’が展開していた。

 『なにィ!? 小夜に添い寝してるって?』
 爆笑混じりの遼の叫びが、携帯電話の向こうから谷底にこだまする。
 『ひとつ布団の中で、ふたりとも服着てるってか!? ははははは、な~んだ、それ。ミョ~な発展の仕方してるな』
 「ほっといてくれよ! 笑わないって言ったじゃないかっ!」
 豊は携帯を握りしめたまま、逆の拳で岩肌を叩いた。

 『添い寝しろってのは、小夜嬢の命令なのか。え?』
 「そうじゃない・・・・・黙認・・・・・だな」
 電話口の向こうから、遼が身を乗り出してくる気配。
 『それでお互い、ちゃんと眠れるのか』
 「小夜はね。けど、おれはダメ。あったかいような、安らぐような、それでいてものすごい緊迫感で」
 『・・・・・・おまえら、ふたりとも一種の超人だな』
 「だって一線を越えようとすると、小夜は突然ぴしゃんと拒絶するから」
 『で、その一線をおれみたいなヤツにあっさり越えられちゃったり』
 「だーっ!!! ジョーダンでも言うなやそんなことっ!」

 黒髪をかきむしり、豊は携帯にかみついた。
 「無理のない越え方があったら、教えてほしいくらいだよ。どうだったの、はるさんの初めてのときは?」
 恨めしげに言い募る豊の声。
 『おれとおまえじゃタイプが違いすぎるしなぁ・・・・・ま、女の子が落ち込んでた晩に、どさくさまぎれって言や、どさくさまぎれだったか』
 「どさくさ・・・・小夜と一緒にいるかぎり、どさくさだらけなんだけど・・・・」

 どっぷり沈み込んでしまった豊の耳元で、遼の声だけが響く。
 『無理のない色恋なんて、ねぇんだ。その思い切りがつかないかぎり、いい人どまりだな。おれなんか小夜嬢にとっちゃ‘悪い人どまり’なんだろうが。けどな、‘いい人’の前に‘どうでも’がついたらオシマイだぜ?』
 「・・・・・・。」
 『けど、おまえたちに関しちゃおれも、ああヤレこうヤレとは言えん。並みの男から見ると異次元の世界だからな』(←ご謙遜を)
 「・・・・・・異次元・・・・・なのか・・・・・」
 『違う世界に行けば、案外すんなりってこともアリだな』
 「そんなの、どこにあるっていうんだよ!?」
 『とかなんとか言って、おまえ毎晩すげぇコト夢想してたりしてな』
 「やめろっての! オヤジくさいっ」

 ピシッ・・・・思わず通話をブチ切ってしまい、豊はひとり、谷底の薄闇に視線を迷わせる。

 再び──‘帰ってきたヨッパライ’の着信音が鳴って、すまなそうな気配の微塵もない、陽気な声が携帯からどんと響いた。
 『あ~・・・・悪かった。けどおまえ、マジでテリーチェリーだったのか!?』
 「・・・・・・・。」
 『やっぱりか! おまえがグズグズしてるようなら、おれが小夜嬢を引き受けたっていいかなっとか今考えてみたんだ。もったいねぇことするなよ、ゆた!』
 「たわごとはいい。わざわざかけてくるほどの本題があるのか?」
 長兄に対する末弟の寛大さを装って、豊は先をうながす。

 『ゆんゆんが今、いちばん知りたいことを教えてやろうと思ってさ』
 照れたような遼の笑い声がした。野性派人類学者の日に焼けた、不敵な笑顔が目に浮かぶ。
 「ふん、なら早く教えてよ」
 豊はこぶしをぐっと固めた。かように限りなくアホのグレーゾーンに属する兄ではあるが、100万分の一の確率で真実に切り込んでくることもある、不思議な知性を内包する遼である。

 『あのな、‘夜寝たら必ずエッチする’って決めておけばいいんだ。健全な青少年の日課としてな。どうしてもイヤな時だけ拒否してもいいってことで。そうすれば両人とも安心して毎晩ベッドインできるだろ』
 遼は言った。

 「な・・・・・な、な・・・・・・!」
 思わず豊は電話口で邪霊退去の印を切ったが、こいつには効かないのだった。
 「なんの話だ! おれが聞きたいのは、そんなたわけたことじゃなくて・・・・・、」
 『うそはダ~メ。今夜おまえがオトコの顔を見せれば、コロッと状況は変わる。最強の豊の武器は、‘抱かせてくれ’のシンプルな一言を言うことだろ。いつまでも可愛い弟ちゃんにそれ言いそびれて、研究室の助手に当たり散らしてる欲求不満の外科医の末期症状みたいな誰かみたいになりたくなけりゃ・・・・・あっ、いてっ! しずか、いてっ!』
 「・・・・・・。」

 ガッチャン!
 携帯を投げ捨て、豊は岩場に突っ伏していた。

 「・・・・・・たまらん身内だ」





 本日の日記-----------------------------------------------------

 ご好評につき、不二豊のエッセイをもうひとつ。
 (本屋さんでお会いしてたかもね!:中国語検定試験の申込書の付録掲載文)

 中国の吉祥文について
 ──‘蝙蝠’にホントに福をもらった人の話──

 中国美術を研究していると、壁画に描かれた仏像の着衣のちょっとした意匠にも様々な意味があることを知るようになる。
 かつて文様には邪悪を遠ざける僻邪の役割や、吉祥を呼ぶ力があった。身分を示す文様もあり、季節や自然の情緒の形象の中に、立身出世や子孫繁栄などの願望を込めたものもあった。
 
 たとえば、古来より中国人は縁起の良い言葉と音を同じくする語を吉祥と考える習俗があるが、そのなかでも有名な吉祥文といえば“倒福”daofuの意匠であろう。
 これは、中国に興味のある人なら誰でも一度は目にしたことがある“福”の字が逆さまになって門前や部屋の中に飾られるもので、“到福”dao fu(福が来る)と音を同じくするために、このモチーフが好まれているのは周知のところである。

 他にも、鹿の図像は福禄寿の“禄”(lu)と音が同じであるがゆえに吉祥文とされているし、魚は“余”(あまる:yu)と同じ発音であるために、福のシンボルとして陶磁器などに多く描かれている。また蝶は中国では八十歳を意味する“耋”(die)と同じ発音であることから、長寿を表す吉祥文となった。

 これと似たもので、蝙蝠bienfuは“蝠”(fu)が“福”に、“蝙”(bien)が“遍”に通じるので、福が何遍も訪れるとして吉祥文とされる。蝙蝠は現在、ラーメン鉢の文様としておなじみである。

 さて、中国における最高の吉祥文は、“龍”longである。。
 龍には階級があり、水中に棲む“蟠”(はんち:翼がなく天に昇れない下級の龍)、“蚪”(ト:日本ではひきつ)と呼ばれる角をもつ龍、“蜃”(シン:みつかけ)という四本足で翼を持ち蜃気楼を吐くもの、四足あって大水を起こす“蛟”(コウ:みずち)、最高位に、翼が火焔になり体表に鱗ある五爪をもつ“龍”が位置づけられている。

 皇帝は五爪の龍を文様として使用し、臣下は四爪として皇帝の威信を避けた。文様上でも、五爪を龍、四爪を蟒(モウ)と呼んで区別し、礼服では公、侯以下は龍の数も八から五匹までと身分によって決まっていた。同様に、皇帝御用の器物が下賜される時は、龍の爪を削り取って四爪にすることも行われた。
 (↑以上、文責は妻)

 (↓以下、オット担当)
 これらの文様も、現代の日本では意味を失い力を無くしているようで残念に思っていたところ、私の実家である古家にネズミが出たという。
 早速に駆除しようと皆で躍起になっていたら、父が泰然自若として「ネズミが出たからといって慌てるでない。塩をやっておけばよい」と言う。
 
 真意を聞くと、戦時中に子供時代を過ごした父は、有事にそなえて自宅敷地に防空壕を掘っているうちに、一匹のネズミと友だちになった。物資がないので、父はそのネズミに毎日塩をなめさせてあげた。すると、ある日ネズミはコウモリに変身して軒先に逆さまにぶら下がっていたという。

 「わたしが戦禍をくぐりぬけて無事にこうして子孫を増やすことができたのも、そのコウモリのおかげだ。おまえたちも早くネズミと友だちになって塩をやりなさい」と大真面目でのたまう父の話を、全員唖然のありがたさで拝聴するにつけ、龍には階級があるし、コウモリも確かに吉祥動物であるが、ネズミがコウモリに立身出世する話は聞いたことがないぞ、などと研究者として進言したくもなる。
 とはいえ、まだ田舎には神話が軒先に息づき、そこに住む人々に対しても吉祥の力が失われていないのだと考えると面白く楽しい。
 
 そういえば、父は昔、骨董屋からペルシャ製の‘空飛ぶ絨毯’を買ったのだが、父を乗せて空を飛ぶ前に絨毯だけがその夜半にどこかに飛んで行ってしまい、それきり二度とは帰らなかったことを口惜しがっていたことがあった。




 明日は●試掘坑●です。
 豊を探していた小夜は・・・・・。

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最終更新日  2006年04月05日 07時23分20秒
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