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2015年07月25日
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戦後思想史に独自の軌跡をしるす著者が、戦中・戦後をとおして出会った多くの人や本、自らの決断などを縦横に語る。抜きん出た知性と独特の感性が光る多彩な回想のなかでも、その北米体験と戦争経験は、著者の原点を鮮やかに示している。著者八十歳から七年にわたり綴った『図書』連載「一月一話」の集成に、書き下ろしの終章を付す。(「BOOK」データベースより)

鶴見俊輔『思い出袋』(岩波新書)
つる鶴見俊輔・思い出袋.jpg

◎不良少年だった

『鶴見俊輔コレクション』(全4巻、河出文庫)を味わいながら、読んでいる最中の訃報でした。つい先日の新聞に、安保法案反対の呼びかけ人の一人として、鶴見俊輔の名前もありました。反骨の知識人。鶴見俊輔は私の敬愛する知識人の代表格です。

『鶴見俊輔コレクション』を通読してから、発信しようと思っていました。しかし間に合いませんでした。以前に書いた『思い出袋』(岩波新書)の書評を中心に、感謝をこめて鶴見俊輔に迫ってみたいと思います。

(引用はじめ)
 鶴見俊輔『思い出袋』(岩波新書)は。いきなりジョン万次郎のエピソードからひもとかれます。ジョン万次郎については、井伏鱒二『さざなみ軍記・ジョン万次郎漂流記』(新潮文庫)を読んで以来、ずっと興味を持っていました。その後、山本一力『ジョン・マン・波濤編』(講談社2010年)を読んで、さらに興味が増しました。山本一力「ジョン・マン」は、シリーズとして書き継がれるようですので、楽しみにしています。

――ジョン万次郎は私の出会った人ではないが、私の記憶の中できわだった人である。十四歳の少年として舟に乗りこみ、予想外の嵐にあって無人島に流され、アメリカの捕鯨船に助けられた。
(鶴見俊輔『思い出袋』岩波新書P2)

 鶴見俊輔の筆は鮮やかな記憶を切り取り、それをビーズのようにつなげてみせます。難解な言葉はどこにもでてきません。

 本書は岩波書店の情報誌『図書』に、「一月一話」というタイトルで書かれていたものをまとめた随筆集です。書き始めが80歳のときで、それが7年間続けられました。鶴見俊輔の経歴や思想、交友や読んだ本などを知るうえで、貴重な1冊です。

 これまでに『期待と回想』(上下巻、晶文社)を読んでいました。分厚いインタビュー集でした。不良少年だった鶴見俊輔は、15歳でアメリカに留学します。『思い出袋』はそれらを言葉ではなく、文章で伝えてくれています。肩がこらない、1回が原稿用紙3枚ほどの掌編ですので、本書をお薦めさせていただきます。
(引用おわり「藤光日誌」2011.06.04)

◎アメリカ的リベラル

『思い出袋』のジョン万次郎は、おそらく15歳のときに留学した自分と重なっていたのだと思います。鶴見俊輔は、小田実らとともに「べ平連」の中心にいました。訃報を伝えた朝日新聞には、「鶴見俊輔さんの歩み」という記事がありました。ポイントを拾ってみます。

1922年:東京に生まれる
1939年:米ハーバート大哲学科入学
1942年:米FBIに連行され、日米交換船で帰国
1946年:雑誌「思想の科学」創刊
1965年:小田実さんらと「ベトナムに平和を!市民連合」(ベ平連)結成
2004年:小田実さん、加藤周一さん、大江健三郎さんらと「九条の会」の呼びかけ人となる

 鶴見俊輔は一貫して、戦争に反対し続けました。井上ひさしとの対談で、鶴見俊輔は沖縄について次のように語っています。

――沖縄というのはね、虚心に考えてみると、自治領として独立する条件は十分に整っていた、と思うんですよ。あれは日本の国家から賠償を取るべきであってね、一億玉砕とか本土上陸作戦とかいうことが、あそこだけで行われてきたんだし、日本の軍隊があそこで闘って、玉砕命令も随分出したんだし、たくさんの人が殺されたわけでしょう。(井上ひさし『笑談笑発・井上ひさし対談集』講談社文庫、鶴見俊輔の談)

 鷲田小弥太は『昭和の思想家67人』(PHP新書)の一人として、鶴見俊輔をあげています。鷲田小弥太は別の著作の中で、次のように書いています。

――アメリカ的思考の豊かさと貴重さを、「リベラル」というキ^ワードで押さえて、戦後一貫して説き続けてきたのが鶴見である。(鷲田小弥太『日本を創った思想家たち』(PHP新書)

 鶴見俊輔は幼いころはグレていましたが、アメリカで哲学を学んでから一度もブレたことはありません。ただし時々ノイローゼの症状に見舞われることがありました。そのあたりについて、埴谷雄高は著作の中で次のように書いています。平野謙とタクシーの車窓から、見た風景です。

――そとを眺めると、鶴見俊輔と夫人の姿がすぐ前に見えた。その頃、鶴見俊輔はノイローゼ気味と聞いていたので、健康のための散歩と見受けられたが、傍らに並んだ夫人のレイン・コ-トのポケットに手をつきこんだかたちが看護婦兼医者兼貞淑な話し相手という閃くような直観を喚起して印象的であった。(埴谷雄高『戦後の文学者たち』構想社)

 頑固で硬派の印象が強い鶴見俊輔の、なんとも微笑ましい日常に、思わず笑ってしまいました。感謝。

◎追記2015.07.29:「グアダルーペの聖母」

「朝日新聞」(2015.07.29)に小熊英二(歴史社会学者)の「鶴見俊輔の追悼文」が掲載されていました。ちょっと引用させていただきます。

――国という枠組みにこだわらない彼は、日本の外にも、そうした想像力を見いだした。その一つが、征服者が押しつけた聖母像を、メキシコ先住民たちが褐色の肌の女神につくりかえた「グアダルーペの聖母」である。

「グアダルーペの聖母」は『鶴見俊輔コレクション3・旅と移動』(河出文庫)に収載されています。鶴見は日本国憲法も、アメリカから押しつけられたものである。しかし押しつけられた「嘘」から、「誠」を出したいと主張していました。

 朝日新聞の追悼記事を読んで、「グアダルーペの聖母」を読み直しました。『トム・ソーヤの冒険』が大好きだった鶴見俊輔は、本日の参議院を見守っているにちがいない。

(山本藤光:2011.06.04初稿、2015.07.24改稿)






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最終更新日  2017年10月11日 04時53分14秒
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