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2015年09月10日
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詩人ダンテが、現身のまま、彼岸の旅を成就する物語『神曲』。「地獄篇」は、1300年の聖木曜日(4月7日)に35歳のダンテが、罪を寓意する暗い森のなかに迷い込むところから始まる。ラテンの大詩人ウェルギリウスに導かれて、およそ一昼夜、洗礼を受けていない者が罰せられる第一圏(辺獄)にはじまり、肉欲、異端、裏切りなど、さまざまな罪により罰せられる地獄の亡者たちのあいだを巡っていく。(「BOOK」データベースより)

ダンテ『神曲』(全3巻、集英社文庫、寿岳文章訳)
ダンテ・神曲.jpg

◎訳文の違いで難解から平易に

ダンテ『神曲』は、青空文庫(山川丙三郎訳)で読みはじめました。ところが難解で、途中で挫折してしまいました。最初のほうを立ち読みして、集英社文庫『神曲』(全3巻、集英社文庫、寿岳文章訳)を買い求めました。おもしろいように読み進むことができました。

――われ正路を失ひ、人生の覊旅半にあたりてとある暗き林のなかにありき 一・三 ああ荒れあらびわけ入り難きこの林のさま語ることいかに難いかな、おそれを追思にあらたにし 四・六(青空文庫「地獄」山川丙三郎訳の冒頭より)

――気がつくとダンテは、正しい道を見失い、暗い森の中に迷いこんでいた。苦境を切りぬけるために、彼はとある美しい山に登ろうとするが(後略)(集英社文庫「地獄篇」寿岳文章訳の冒頭より)

集英社文庫には、まったく異なる『神曲』がありました。苦労して読みつづけた青空文庫とは、「煉獄」の途中で訣別してしまいました。ずっとうっそうとした暗い森に迷い行ってしまった気持でしたが、またたくまに視界が開けました。『神曲』は、難解な作品ではなかったのです。

ダンテ『神曲』の骨格を紹介している文章を、引かせていただきます。

――1300年の復活祭前の金曜日、35歳のときにダンテは人生の正道を踏み外し、暗い森の中で迷う。そこでダンテは古代ローマの詩人ベルギリウスと出会う。『神曲』はベルギリウスの案内でダンテが、地獄、煉獄を、ダンテが慕う女性ベアトリーチェの案内で天国を訪問する。全6日間の見聞録という体裁でダンテは世俗語で『神曲』を書いた。(佐藤優。『文藝春秋』2011年3月号)

ダンテ『神曲』は、「地獄篇」「煉獄篇」「天国篇」の3部構成になっています。人が死んだら、地獄か煉獄へ行くとされています。よほどの悪人でないかぎり、普通の人は煉獄へと辿り着きます。
そんな関係で、佐藤優の引用文章あたりまで読んだら、「煉獄篇」へと飛んでみるのもいいと思います。

青空文庫でいちど挫折した私は、いくつかの『神曲』解説本を手にしました。難解で先に進めない屈辱感にさいなまれながら、それらの本を読んで、訳文の選択に過誤があったことに気づいたわけです。

スイスイ読みはじめた集英社文庫ですが、私は1話を読みおえると必ず、阿刀田高『やさしいダンテ「神曲」』(角川文庫)でおさらいをすることにしました。

◎憧憬の女性・ベアトリーチェの登場

ダンテは、憧憬の女性・ベアトリーチェの案内を受けます。『神曲』の荒削りな描写のなかで、彼女の名前だけは可憐な花のように際立っています。そのあたりについて、阿刀田高の解説を引かせていただきます。

――少年(註:ダンテ)は圧倒され、現実の世界でも詩的な世界でも、はたまた思索の世界においても一生涯にわたってベアトリーチェの存在に憧憬を抱き、魅了され続けることとなる。(阿刀田高『やさしいダンテ<神曲>』角川文庫P20)

ベアトリーチェの美しさについて、ダンテ自身が書いている文章を拾ってみます。

――天使たちの環は、一つまた一つと視界から薄れ消えてゆく。もう一度ベアトリーチェを見ようと向き変ったダンテは、その美しさが全くあらたまり、あらん限りの筆力をふりしぼっても、到底叙述できないのに気づいた。淑女はダンテに、かれらがすでに至高天へ到達したこと、やがて天使たちも、肉の衣を身に纏った至福者たちの霊も、眼の前に現われるであろうことを告げる。(『神曲』「天国篇」第30歌、P400)

『神曲』のエンディングの美しさについて、書かれた文章があります。

――「地上楽園」で再会して以来、ずっとベアトリーチェに向けられていた主人公ダンテの視線が、高いところに昇った彼女のところまで達した今、いよいよ至高の座、神の方向へと向けられる。「天国」における巡礼の旅の結末は、至高の天における「神を見る」瞬間というクライマックスなのだ(村松真理子『謎と暗号で読み解くダンテ「神曲」』角川oneテーマ21新書、P222)

憧憬の女性・ベアトリーチェは「煉獄篇」の末尾から登場します。それまで読者は、迫力ある死後の世界を随行しなければなりません。たくさんの人や怪物がでてきます。ダンテは現実と空想の世界を、見事な筆さばきで紡ぎ出してくれます。

ダンテは本書を知的階級の言語ラテン語ではなく、トスカナ語で書いています。その理由を紹介している文章があります。

――ダンテは『神曲』を女、子どもの言語トスカナ語で書いた。恋人ベアトリーチェに捧げるべきこの書物は彼女の理解できる言語で書かれなければ意味はない。『神曲』は俗語で書かれたがゆえに民衆に直接、贖罪の道を示し、後の宗教改革の下地を準備したことになる。(島田雅彦『必読書150』太田出版、P113)

◎壮大な叙事詩をあなたに

私は読んでいませんが、ダンテは著作『新生』(河出文庫)のなかで、ベアトリーチェについて次のように書いているようです。

――自分は九歳の終わりのときにベアトリーチェという美しい少女に出会うが、そのとき彼女は九歳の初めであった。それから九年後に彼女に再会して激しい<愛>を覚えるが、ベアトリーチェはやがて昇天してしまう。(『世界文学101物語』高橋康也・編、新書館)

「地獄篇」の冒頭で暗い森のなかに迷い込んだダンテに、助っ人ウェルギリウスを差し向けたのは、ベアトリーチェでした。そして地獄の底で、かすかな希望を与えてくれたのもベアトリーチェでした。『世界文学101物語』のなかで、河島英昭はベアトリーチェを「神の愛の寓意」と表現しています。

1話を読み終わるたびに、解説本をひもとかなければ、ベアトリーチェに焦点をあてて読んでいなかったと思います。すさまじい物語の展開のなかに、ベアトリーチェという一条の光があったことが救いでした。

しっかりと味見をしていませんが、壮大な叙事詩をあなたに捧げます。最後に識者の文章を引かせていただきます。

――ギリシアの古典がまだ伝わっていなかった十三世紀のイタリアで、詩人ダンテ・アリギエリがもっとも尊敬していたのは、「アエネイス」の作者ウェルギリウスだった。愛し慕った先達の案内で、死後の世界を旅する自分を描くとは、うまく考えたものだ。(須賀敦子『本に読まれて』中公文庫P169)

―― 一般読者にとって面白いのは何といっても地獄にちがいない。当方がキリスト教に年々疎ましい気持ちを募らせているせいもあろうが、とにかく地獄は、たとい通読しないであちこちの歌を拾い読みするだけでも、その度に興をそそられ飽きることがない。(川村二郎。丸谷才一ほか『千年紀のベスト100を選ぶ』知恵の森文庫)

人生の贖罪(食材)は並べ終りました。あなたはどこから箸をつけますか? 
(山本藤光:2014.06.21初稿、2015.09.09改稿)





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最終更新日  2017年11月13日 08時18分24秒
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