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2016年02月19日
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■小説「どん底塾の3人」031:営業の原点は行商だ
ああ・どん底塾の3人.jpg
 3回目の実践研修を前に、亀さんはいよいよ本番だと意を新たにする。
「今度の実践研修では、おまえたちに弁当を販売してもらう。目標はひとり100食。第3水曜日限定の弁当屋だ。当日の朝までに、弁当は用意する。価格はひとつ1000円だ。」
「1日に100食ですか……」
「それ、質問か?」
「いいえ、独り言です」
 大河内があわてて否定する。

「これから紙を配る。100食が売れる弁当の条件とは何か、を考えてもらいたい。時間は30分間だ」
 3人の答案用紙が、壁に張られている。ほとんどの用紙に、似たような単語が並ぶ。
 「おいしい」「珍しい」「豪華な」「季節感がある」「定食屋が腕によりをかけて」「手造り」……。
 亀さんは腕組みをして、タバコをくわえている。明らかに不満そうな表情だった。こんな発想力だから、営業マンとしてうだつが上がらないのだ。口元まで出かかった言葉を、亀さんは心のなかに吐き捨てる。
「大河内は20点、あとは零点だ。もちろん弁当がおいしくて、豪華なのに越したことはない。そんなことは、常識だろうが。問題はだれが売るかだ。大河内だけが「営業マンの熱意」と書いている。あとの2人は、それにすら触れていない。
 営業の原点は、行商だ。客を待っていて売るのなら、ほか弁とかコンビニと変わらないだろう。おれが最高の弁当を作る。売れないのは、客足が鈍かったのではない。おまえたちの売り方が悪いだけだ。いいか、100個を抱えて、売り尽くすんだ」
 
 売れる弁当の条件は、営業力にある。亀さんはそう断言した。海老原は、弁当の中味のことしか思い浮かばなかったことを恥じている。そうなのだ。どんな方法で売るかが、最大の条件だったのだ。
 営業は運だけでも売れる。しかし歩いていなければ、運は舞い降りてはこない。加納は「営業の原点は、行商だ」をノートに書きながら、心底そう思った。亀さんにかけてみよう。加納の心のなかで、何かが炸裂した。
「20点も取った大河内に、ひとつ質問がある。営業マンの熱意って、何だと思う?」
「やる気、売りたいという気合……そんなものだと思います」
「ダメだ。採点から10点マイナスだ。もっと考えろよ。広辞苑ごっこをしているんじゃないぞ。営業マンは、何のために存在するんだ?」
「商品を、お客さんに買ってもらうためです」
「そうだろうが。客を前提にして、さっきの質問の答えを考えてみろよ」
「お客さんのニーズに応える、お客さんに満足してもらう、お客さん……」
「よし、合格だ。そのことを、忘れるな」

※ダントツ営業の知恵
 営業マンの熱い思いは、必ず顧客に伝わる。伝わらないとしたら、自分自身がまだ未熟だと思うことだ。






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最終更新日  2016年02月19日 03時46分17秒
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