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カテゴリ:営業マン必読小説:どん底塾の3人
■小説「どん底塾の3人」031:営業の原点は行商だ
3回目の実践研修を前に、亀さんはいよいよ本番だと意を新たにする。 「今度の実践研修では、おまえたちに弁当を販売してもらう。目標はひとり100食。第3水曜日限定の弁当屋だ。当日の朝までに、弁当は用意する。価格はひとつ1000円だ。」 「1日に100食ですか……」 「それ、質問か?」 「いいえ、独り言です」 大河内があわてて否定する。 「これから紙を配る。100食が売れる弁当の条件とは何か、を考えてもらいたい。時間は30分間だ」 3人の答案用紙が、壁に張られている。ほとんどの用紙に、似たような単語が並ぶ。 「おいしい」「珍しい」「豪華な」「季節感がある」「定食屋が腕によりをかけて」「手造り」……。 亀さんは腕組みをして、タバコをくわえている。明らかに不満そうな表情だった。こんな発想力だから、営業マンとしてうだつが上がらないのだ。口元まで出かかった言葉を、亀さんは心のなかに吐き捨てる。 「大河内は20点、あとは零点だ。もちろん弁当がおいしくて、豪華なのに越したことはない。そんなことは、常識だろうが。問題はだれが売るかだ。大河内だけが「営業マンの熱意」と書いている。あとの2人は、それにすら触れていない。 営業の原点は、行商だ。客を待っていて売るのなら、ほか弁とかコンビニと変わらないだろう。おれが最高の弁当を作る。売れないのは、客足が鈍かったのではない。おまえたちの売り方が悪いだけだ。いいか、100個を抱えて、売り尽くすんだ」 売れる弁当の条件は、営業力にある。亀さんはそう断言した。海老原は、弁当の中味のことしか思い浮かばなかったことを恥じている。そうなのだ。どんな方法で売るかが、最大の条件だったのだ。 営業は運だけでも売れる。しかし歩いていなければ、運は舞い降りてはこない。加納は「営業の原点は、行商だ」をノートに書きながら、心底そう思った。亀さんにかけてみよう。加納の心のなかで、何かが炸裂した。 「20点も取った大河内に、ひとつ質問がある。営業マンの熱意って、何だと思う?」 「やる気、売りたいという気合……そんなものだと思います」 「ダメだ。採点から10点マイナスだ。もっと考えろよ。広辞苑ごっこをしているんじゃないぞ。営業マンは、何のために存在するんだ?」 「商品を、お客さんに買ってもらうためです」 「そうだろうが。客を前提にして、さっきの質問の答えを考えてみろよ」 「お客さんのニーズに応える、お客さんに満足してもらう、お客さん……」 「よし、合格だ。そのことを、忘れるな」 ※ダントツ営業の知恵 営業マンの熱い思いは、必ず顧客に伝わる。伝わらないとしたら、自分自身がまだ未熟だと思うことだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2016年02月19日 03時46分17秒
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