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2016年08月10日
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十八世紀、頽廃のパリ。名うてのプレイボーイの子爵が、貞淑な夫人に仕掛けたのは、巧妙な愛と性の遊戯。一途な想いか、一夜の愉悦か―。子爵を慕う清純な美少女と妖艶な貴婦人、幾つもの思惑と密約が潜み、幾重にもからまった運命の糸が、やがてすべてを悲劇の結末へと導いていく。華麗な社交界を舞台に繰り広げられる駆け引きを、卓抜した心理描写と息詰まるほどの緊張感で描ききる永遠の名作。(「BOOK」データベースより)

ラクロ『危険な関係』(角川文庫、竹村猛訳)

ラクロ・危険な関係.jpg

◎最初に主な人物を理解する

ラクロ『危険な関係』(角川文庫、竹村猛訳)は、全編書簡だけでつながっています。まずは登場人物をしっかりと掌握しておかなければ、訳が分からなくなってしまいます。私は電子書籍で読みましたので、次のようなプロフィールを張っておきました。最初に物語を単純化するために、次の一文を紹介させていただきます。

――誰と誰がって、このいっぱい男と女が出てくる詐謀と退廃と悪徳に満ちた小説は、〈社交界きっての女たらし〉ヴァルモン子爵VS〈悪の華〉メルトイユ侯爵夫人の、ガチンコ一騎打ちの恋愛小説なのだ。(佐藤真由美『恋する世界文学』集英社文庫P74)

物語の中核を占めるのは、佐藤真由美の指摘どおり、次表の(A)と(B)の2人の男女です。

1. ヴァルモン子爵(A)とメルトイユ侯爵夫人(B)は、元愛人関係にありました。
2. ヴァルモン子爵(A)は、現在、地方長官夫人(C)と恋仲にあります。社交界きってのプレイボーイとして、特に若い男性の崇拝を受けています。彼はあらゆる手練手管を用いて、狙った女性を陥落させます。しかし手に入れるとすぐに、残酷な形で縁をきってしまいます。
3. メルトイユ侯爵夫人(B)は、現在、ジェルクール伯爵(D)と恋仲にあります。男性経験は豊富な女性ですが、なぜか女性からは一目おかれています。彼女はモリエールの小説「タルチュフ」の主人公と同じ、ペテン師だと評されています。
4. ところがジェルクール伯爵(D)は地方長官夫人(C)と恋仲になってしまいます。
5. ジェルクール伯爵(D)は、メルトイユ公爵夫人(B)を棄てます。
6. 地方長官夫人(C)は、ヴァルモン子爵(A)を棄てます。
7. そんな折り、ジェルクール伯爵(D)は、15歳のセシル・ヴォランジュ嬢(E)と婚約をします。
8. メルトイユ侯爵夫人(B)は復讐のために、セシル・ヴォランジュ嬢(E)を汚す計画を立てます。そしてヴァルモン子爵(A)に協力を要請します。
9. ヴァルモン子爵(A)は、長官夫人(C)を奪ったジェルクール伯爵(D)への復讐を考えます。と同時に彼は
ツールヴェル法院長夫人(F)を愛し始めます。
10. セシル・ヴォランジュ嬢(E)は、ダンスニー騎士(G)に愛され、次第に心を動かされます。


これだけを抑えておくと、混乱することなく登場人物の心理のヒダを読み解くことができます。舞台は18世紀のフランス上流社交界。当時の男女関係は、信じられないほど自由奔放なものでした。おびただしい書簡のやりとりだけで、どろどろとした人間関係が浮き彫りにされます。私は全体の4分の1までは、上記相関図のお世話になりました。その後は登場人物の理解ができて、快調に読み進めるようになりました。

◎書簡小説のこと

ラクロ『危険な関係』は、書簡小説の代表格です。ほかにもリチャードソン『パミラ』(研究社)などがあります。このジャンルに先鞭をつけた作品について、触れている文章があります。

――17世紀に出た『ぽるとがる文』(補:角川文庫、著者はマリアンヌ・アルコフォラード 、水野忠敏訳、タイトルは「ポルトガル文他一篇」となっています)という、ポルトガルの尼僧が自分の愛人のフランス青年士官にあてたラブレターを五通集めたものが最初で、佐藤春夫による英訳からの日本語訳もあります。(中条省平『小説の解剖』ちくま文庫P50)

本書はまだ入手できていません。中条省平の解説によると、激しい愛の告白→死ぬほど苦しい→なぜ手紙をもっとくれないのか→気が狂いそうとなり、やがて諦め→断念するプロセスが書かれているようです。

私は古書店で発見する楽しみを断念して、アマゾンで注文することにしました。上記プロセスから分かるように、書簡小説は心理小説として区分されることもあります。

◎他人の心理と情念を操作

本書の立役者である、ヴァルモン子爵(A)とメルトイユ侯爵夫人(B)は、ジェルクール伯爵(D)への復讐という共通の目標をもちます。この時点では焼けぼっくいに火がついた状態にあります。ところがドン・ファンと称せられるヴァルモン子爵(A)は、ツールヴェル法院長夫人(F)に熱をあげます。

ツールヴェル法院長夫人(F)について、書かれている文章を引用させていただきます。

――彼女は信仰があつく、みずからの美しさを知らず、恋愛感情を蔑んでさえいた。狙った獲物を逃がさないヴァルモンにとって、これは願ってもない獲物となる。(明快案内シリーズ『フランス文学』自由国民社P55)

このことを知ったメルトイユ侯爵夫人(B)は嫉妬し、ヴァルモン子爵(A)を激しく非難します。そして2人の共闘は、亀裂に向かってエスカレートしてゆきます。

物語の顛末については、あえて触れません。本書の終盤では、ツールヴェル法院長夫人(F)とダンスニー騎士(G)が中核を占めます。ヴァルモン子爵(A)とメルトイユ侯爵夫人(B)はどうなるのか、ご堪能いただきたいと思います。本書は人間関係を掌握するまでは、一気読みしてはいけません。

――支配欲を政治経済軍事など一切の物理的な強制力から切り離して、他人の心理と情念を外から精神的な術策のみにより操作する最も技巧的な悦楽として抽出したのがこの小説である。(谷沢永一『人間通になる読書術』PHP新書P215)

最後に手紙の質に関する、見識を紹介させていただきます。なるほどと思って、特に若いセシル・ヴォランジュ嬢(E)とダンスニー騎士(G)のものを読み直したほどです。

――セシルやダンスニーのように手紙を書くことは、心情を吐露することを意味します。いっぽうヴァルモンとメルトイユ夫人のように手紙を書こうとするならば、戦略的な演技をする、つまり架空の人格を偽装し創造することが必要です。本来の自分をさらけだすのか、それとも自分以外の人間になるか。(工藤庸子『フランス恋愛小説論』岩波新書P80)
(山本藤光:2016.07.29)





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最終更新日  2017年12月01日 08時24分33秒
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