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カテゴリ: 視聴レポート
2005年ショパンコンクールで優勝したピアニスト、ラファウ・ブレハッチの「ショパン前奏曲集」CDが2007年10月に発売、2ヶ月後にようやく入手しておきながら、なかなかゆっくり聴く間もなく年が明けてしまった。
今、ようやくCDを手にとり、期待に満ち満ちて耳を傾ける。 ショパンコンクールでのブレハッチの演奏、それはまさしくショパンがよみがえったかの感動を聴衆に与えた。あの時の熱き思いが今よみがえる。 ショパン:プレリュード全集/2つのノクターン作品62 【収録曲】 ・ショパン:24の前奏曲 Op.28-1~24 ・ショパン:前奏曲 変イ長調 (遺作) ・ショパン:前奏曲 嬰ハ短調 Op.45 ・ショパン:ノクターン Op.62-1,2 ・ショパン:マズルカ ト長調 Op.50-1 ■常に謙虚でそれでいてキラリと光る個性とゆとり これは以前ブレハッチの1枚目のCDを聴いた時の言葉でもある。彼の演奏は決して若さゆえのガンガンイケイケといった派手な方ではない。どの曲を聴いても落ち着いて耳を傾けることが出来る安心感・ゆとりを持っている。だからといって地味とは違う。内なる情熱がわき出ていながら、それを激情のままに弾いてしまうようなことはしていないだけだ。それが安心感に結びついているのかもしれない。 ひとつひとつの音に対して、フレーズに対して、常にいつくしみの心を忘れない、それが音となって表現されているのではないだろうか。 例えば前奏曲8番のような、主旋律の付点進行に絡む32分音符のアルペジオは全ての音がまるで丸い雨しぶきのようであり、それは決して濁っておらず澄んでいる。プロの演奏者であっても、アルペジオが濁ってドロ水激流のようになってしまっているものもあったりして、それだけにこの曲の難解さを感じるのだが。 前奏曲の9番は付点進行(主旋律)と3連符(伴奏部)があいまった重厚な曲であるが、付点進行と3連符を合わせて弾くか付点のほうが3連符より後に弾くか、演奏者によって異なり、興味深いところでもある。ちなみに、ブレハッチは付点進行と3連符を合わせて弾く派である。これは、エキエル版に準じたというよりも、ショパンの自筆譜を重んじたことによる、ということだとか(昨年のショパン公開講座で話題に出た)。 注)パデレフスキ版は付点と3連符の位置がずれているのに対し、エキエル版では譜面上でも付点と3連符を合わせて掲載している。 前奏曲16番も、譜面指定のペダリングだとどうしても重くなりがちだが、ブレハッチは軽快な演奏でそれでいて丁寧に音を紡いでいる。 彼はまだまだ若きピアニストだというのに、その音楽性に青臭さを感じないのは、既にこの前奏曲たちをしっかりと自分のものにしているからだろうか。 よくよく考えてみれば私は巨匠と呼ばれるピアニストたちの、ショパン前奏曲集をしっかり聴いていないではないか。私が所有するショパン前奏曲集はいずれも若手のピアニストたちのものばかり。特に女性陣の演奏はダイナミックで勝ち気さを感じるものが目立つ。それだけにブレハッチの演奏がドンと腰をすえたものに感じるのか。 今更ながらポリーニ演奏の前奏曲集を聴かねば、と思ってしまった私は既にショパン道に乗り遅れ過ぎだ。 おまけに、一時期ショパンの前奏曲集をプレエチュードとして弾き重ねていきたいと続けていたのに、結局数曲弾いただけで立ち止まったまま。生涯のなかで一体何曲触れることが出来るだろう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Jan 15, 2008 10:37:38 AM
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