2020年5月15日(金)の聖教
2020年5月15日(金)の聖教
◆わが友に贈る
心身を守る第一は
生活習慣の改善から。
十分な睡眠・適度な運動
バランス良い食事など
今こそ基本に徹しよう!
◆名字の言 心通わせる「励まし月間」に 2020年5月15日
電話などで友と語らう「励まし月間」を送る中、数々の心温まる話に元気をもらった▼清掃会社に勤める壮年部員は、早朝からごみを回収する日々。家庭からのごみも、生活用品や食品などを扱う企業のごみも増え、以前より忙しいという。だが「きれいな街を保つのが私たちの役目。体に気を付けて頑張るよ」と意気軒高だった▼食堂を一人で営む婦人部員は、来客の激減から、数量限定で持ち帰り弁当の販売を始めた。ある日、完売後に常連客が買いに来た。「あいにく、弁当は全部売れてしまって……」と婦人はわびた▼客が家族に電話をかけ、「売り切れちゃったって」と伝えると、受話器の向こうから「本当? 良かったあ!」と声が聞こえた。そして客は「また来るからね」と告げ、手ぶらなのにうれしそうに帰っていった。その姿に励まされた婦人は“絶対に苦難を乗り越えて、恩返しをするぞ”と負けじ魂が湧き上がったという▼身の回りには「誰かのおかげ」で成り立っているものが意外と多い。その“誰か”を実際に目にはしなくとも、心に映し出し、感謝できる人でありたい。また自身も、その“誰か”として他者に尽くす人でありたい。そうした真心に満ちた社会であれば、試練に立ち向かう一人一人の力は増していく。(城)
◆寸鉄
打てば響く人たれ―恩師
幹部は同志の悩める声に
即反応。メール一通でも
◇
福島県婦人部の日。今日
も希望と蘇生の連帯拡大
地域を照らす福光の太陽
◇
国連の「国際家族デー」。
一緒に祈り、語る機会を。
和楽の家庭こそ平和の礎
◇
緊急事態宣言の一部地域
解除も密閉・密集・密接の
「3密」絶対避け感染防止
◇
県境越す移動は自粛継続
心引き締め、皆が健康で
過ごせる「新しい日常」へ
◆社説 国連の「国際家族デー」 「幸福の家庭」を思いやりの心で
きょう15日は、国連の「国際家族デー」。各国が家族関連の問題に関する認識と理解を深め、解決への行動を促す目的で、1993年(平成5年)に国連総会で制定されたものである。
今、新型コロナウイルスの感染拡大で「家族」の環境が激変している。世界中にロックダウン(都市封鎖)が広がり、先月までに40億人超が外出制限等で自宅待機に。「STAY HOME」が日常となったのだ。この中で「おうち時間」を有意義に過ごしたいと、各家庭で創意工夫のアイデアも生まれている。
一方、増大するリスクもある。女性・女児への家庭内暴力・虐待だ。国連女性機関のムランボ=ヌクカ事務局長は「隠れたパンデミック(世界的大流行)」と警鐘を鳴らす。日本でも「コロナDV(配偶者暴力)」の増加が報告され、相談窓口やシェルター(避難場所)の増設が急務となっている。
本来、家庭は幸福の庭であるはずだ。試練の今こそ、改めて家族の絆や共生の知恵に思いを寄せたい。いくら家族でも、閉鎖空間に居続ければストレスがたまり、感情のコントロールが難しくなることもある。縮こまって自己中心的になりがちな心をいかに乗り越え、思いやりや感謝の念に包まれた家族の物語を創造するか。信心はその力となろう。
池田先生は、「『心の大きい人』は幸せである。そうなるのが信心である」「『大きな心』に、あの友、この友を容れ、人を大切にし、家族を大切にし、ともに人生を楽しみながら、すばらしい、大いなる人生を」と呼び掛けている。
本紙で連載中の「新型コロナに立ち向かう」「おうち時間 STAY HOME」では、コロナ禍に挑む同志、その家族を紹介してきた。取材の中で、多く耳にしたのは「家族で祈る時間が増えた」との言葉だった。
「一番うれしいのは、唱題を終えると、妻が『ありがとう』と言ってくれることです」――そう語ったのは、埼玉県に住む男子部部長。リストラなど3度の失業を経て、4年前、念願のバス会社に就職。昨年結婚し、妻を入会に導いた。
その新生活に降りかかったコロナ危機。バス会社は大打撃を受けた。家計を守るため転職を考えたが、妻は「ずっと祈ってきた仕事なんだから、頑張って」と背中を押してくれた。彼は妻の応援を支えに、終息後を見据えた企画を提案するなど、仕事に率先している。
家族で目的を一つにし、“二人三脚”で進む時、励ましが生まれる。感謝が深まる。今、苦難の時にあって、そうした信頼を結び、広げることが、人間の幸福の園を築き守る力になると信じたい。
◆きょうの発心 高橋殿御返事 総岩手女子部長 七戸敬子2020年5月15日
御文 其の国の仏法は貴辺にまかせたてまつり候ぞ(高橋殿御返事、1467ページ・編1427ページ)
通解 その国の仏法流布は、あなたにお任せする。
福光10年へ未来照らす前進を
地域広布の使命と責任を教えられた一節です。学生時代、池田先生が岩手に贈ってくださった随筆を学び、その中で紹介された、この御文を胸に刻みました。2007年(平成19年)に先生にお会いし、握手をしていただいた際には、
「岩手広布のために戦い抜きます」と誓いました。創価大学卒業後、就職で生まれ育った岩手へ。社会で実証をと奮闘しました。
11年3月、本部職員の使命をいただいた10日後、東日本大震災が発生。幼い頃から見ていた景色は一変しました。あまりの現実にがくぜんとしながらも、女子部の先輩と“10年後を目指そう”と語り合ったことは忘れられません。
一昨年の3月11日に開催された世界青年部総会に向けての取り組みでは、震災直後から励まし続けてくださる師匠と全同志へ、恩返しの思いで弘教に挑戦。総岩手女子部として、かつてない拡大と大結集をすることができました。
明年は「福光」へ10年の節目を迎えます。さまざまな困難や葛藤の中、忍耐強く前進してきました。大切な総岩手女子部の一人一人と、心を通わせ、共に戦い、未来を照らす人材城を築いていきます。
【先生のメッセージ】
◆〈心に御書を〉43 今こそ「法華経の兵法」で2020年5月15日
〈御文〉
此の日蓮は首題の五字を汝にさづく、法華経受持のものを守護せん事疑あるべからず(四条金吾殿御返事、1192ページ)
〈通解〉
この日蓮は、法華経の首題の五字(妙法蓮華経)をあなたに授けた。法華経受持の者を諸天が守護することは疑いないのである。
〈池田先生が贈る指針〉
苦境の極点にあった門下への激励である。
御本仏から授けられた「法華経の兵法」がある限り、断じて敗れることはない。
恩師は経済苦に挑む友を励まされた。“妙法は人類が持つ最高の智慧である。どんな苦労も生かして必ず打開できる”と。
「臆病にては叶うべからず候」。今こそ、勇気ある信心で勝ち開こう!
◆マイ・ヒューマン・レボリューション――小説「新・人間革命」学習のために 第8巻
小説『新・人間革命』の山本伸一の激励・指導などを、巻ごとに紹介する「My Human Revolution(マイ・ヒューマン・レボリューション)」。今回は第8巻を掲載する。次回の第9巻は22日付2面の予定。
挿絵は内田健一郎。
崩れざる幸福は冥益の輝き
<1963年(昭和38年)6月、山本伸一は、塩浜海岸の特設会場での奄美総支部結成大会で、功徳について語る>
「功徳には、祈りの結果が、直ちに目に見える利益、つまり顕益と、目には見えない利益である、冥益とがあります。大聖人の仏法は、このうち、冥益が主となって、私たちに幸福をもたらしてくれます。(中略)
本当の功徳とは、信心をしたら大金が手に入ったとかいうものではありません。『棚からボタモチ』のような、自分は何もせずに、どこかから幸運が舞い込んでくるのが功徳だとしたら、かえって、人間を堕落させてしまいます。
では、冥益とは何か。
たとえば、木というものは、毎日、見ていても、何も変化していないように見えますが、五年、十年、二十年とたつうちに、大きく生長していきます。それと同様に、五年、十年、二十年と信心に励むうちに、次第に、罪障を消滅し、宿命を転換し、福運を積み、大利益を得ることができるのが冥益であり、それが大聖人の仏法の真実の功徳なのであります」
多くのメンバーは、功徳といえば、「顕益」と思い込んできた。それだけに、「冥益」の話に、驚いた人もいた。伸一は、皆に、正しい信仰観を確立してほしかったのである。
「冥益とは、言い換えれば、信仰によって、生命力と智慧を涌現し、人格を磨き、自らを人間革命して、崩れざる幸福境涯を築くということでもあります。
したがって、焦らず、弛まず、木が大地に深く根を張って、大樹に育っていくように、学会とともに、広布とともに生き抜き、自らの生命を、磨き、鍛えていっていただきたいのであります。そうして、十年、二十年、三十年とたった時には、考えもしなかった幸福境涯になることは間違いないと、断言しておきます」
(「布陣」の章、80~83ページ)
広布に生き抜き境涯を革命
<伸一は、7月に京都大学の学生部員を対象に「百六箇抄」を講義。“骨のある人間とは?”との受講生の質問に答える>
「それは、信念をもったスケールの大きな、堂々たる生き方をしていく人間ということです。人間は、どうしても環境に染まっていきやすいものだ。たとえば、アルバイトに明け暮れ、コッペパンやオニギリばかり食べて、生きていくのがやっとだという状態のなかで勉強していると、狭量な人間になってしまう場合がある。
また、今の“学生かたぎ”として、自分のささやかな幸せだけを追い求めて生きる傾向もある。私は、青年たちが自分のことしか考えなくなりつつあることを、心配しているんです。社会、世界をどうするのか、最高に価値ある生き方とは何か、といった問題をおろそかにし、なんの信念も、哲学もない人生であってはならない。青年がそうであれば、最後は、自分も社会も不幸です。
では、どうすれば、骨のある、スケールの大きな人間になれるのか。それは境涯を革命することです。人間革命です。題目を唱え抜き、学会とともに広宣流布に生きていくならば、自然のうちに大境涯になり、骨のある人間になっていきます。
その意味でも、人間を育て、人類の未来を担っていくのは創価学会以外にはない。だからみんなも、学会について来ることです!
まだ、みんな若いから、人生は、長い長い道程のように思っているかもしれないが、あっという間に終わってしまうものだ。まさに『光陰矢のごとし』です」
(「宝剣」の章、143~144ページ)
「無疑曰信」の不動の信心を
<7月、伸一は長野市民会館で開催された中部第2本部の幹部会で、幸福の要諦は御本尊を信じ抜く、「無疑曰信」(疑いなきを信という)の清流のごとき信心が肝要であることを訴える>
「大聖人の仏法の正しさは、文証、理証、現証のうえから証明されております。
しかし、ちょっと商売が行き詰まると、すぐに御本尊には力がないと疑いの心をいだく。子どもが怪我をしたといっては、御本尊は守ってくれなかったと思う。
また、一部のマスコミが学会を批判したからといって、学会の指導を疑い、御本尊への確信をなくし、勤行もしなくなってしまう。こういう方もおりますが、そうした人に限って、自分自身の生き方や信心を振り返ろうとはしない。それでいて、何かにつけて御本尊を疑い、学会を疑う。それは大功徳を消していくことになります。
赤ん坊は、何も疑うことなく、お母さんのお乳を飲んで成長していきます。しかし、お乳を飲まなくなれば、成長も遅くなり、病気にもかかりやすい。
それと同じように、御本尊を信じ、生涯、題目を唱え抜いていくならば、仏の生命を涌現し、生活のうえにも、絶対的幸福境涯の姿を示していけることは間違いないのであります。
どうか、御本尊を疑うことなく、題目を唱えに唱え、唱えきって、広宣流布の団体である学会とともに走り抜き、この人生を、最高に有意義に、最高に幸福に、荘厳してまいろうではありませんか」
愛する会員が、一人も残らず、充実した人生のなかに、功徳と福運に包まれゆくことを念じての、渾身の指導であった。
(「清流」の章、209~210ページ)
会員間の金銭貸借は厳禁!
<ある地方で、幹部の金銭問題が発覚。戸田城聖第2代会長は会員間の金銭貸借を厳しく禁じており、今日の学会の鉄則となっている>
そもそも戸田城聖が、会員間の金銭貸借を厳しく禁じたのは、そのために組織が利用されることを防ぐためであった。また、金銭関係のもつれが組織に波及し、怨嫉などを引き起こすことになるからである。
よく会員のなかには、誰に金を貸そうが、そんなことは、個人の自由ではないかという者もいた。そういう声を聞くと、戸田は言った。
「私が金銭貸借を禁じているのは、そのことから、結局は、信心がおかしくなり、学会という正義の組織が破壊されていくからだ。
金を借りた幹部は、相手にきちんと信心指導ができなくなり、わがままを許すようになる。また、人事も公平さを欠いていく。一方、幹部や会員に金を貸して、返してもらえないというと、学会や信心に不信をいだき、怨嫉し、やがては退転していく。実際にみんなそうだった。
私は、みんなを不幸にさせないために、金銭貸借を禁じたのだ。もし、どうしても貸したいというのならば、貸せばよい。だが、学会は知らぬぞ。また、返さないからといって恨みごとをいうな。貸したいのなら、あげるつもりで貸しなさい」
金銭貸借の厳禁は、どこまでも信仰の世界の純粋さを守るための、戸田の決断であった。
(「清流」の章、265~266ページ)
山本伸一と若き宝友
1963年7月、山本伸一は、京都大学で学ぶ学生部員の代表に「百六箇抄」講義を開始。「宝剣」の章には、受講生一人一人へ、指導、激励を重ねる伸一の姿が描かれている。
◇
<「本迹」を皆の生活に即して語る>
「私たちの人生にも、生活にも、全部、『本迹』がある。それを、きちっと見極め、立て分けていかねばならない。
たとえば、眠っている時は『迹』、起きている時は『本』。勉学が本分である学生が、遊びに、ふけっているのは『迹』、勉学に打ち込んでいるのは『本』といえる。
また、勉強しているといっても、立身出世のための勉強であれば、心は自分中心であり、世間に流された『迹』の生き方です。しかし、学生部員として、広布のために力をつけようと、使命感を奥底にもっての勉強であれば『本』です。
ともあれ、根本的にいえば、私たちの本地は、広宣流布のために出現した地涌の菩薩であり、ゆえに、広宣流布に生き抜く人生こそが『本』となる。
一方、諸君が将来、社会的な地位や立場がどんなに立派になったとしても、それは『迹』です。この一点を見誤ってはならない。(中略)
『本迹』を個人の一念に要約していえば、『本』とは原点であり、広宣流布への一念です。また、前進、挑戦の心です。『迹』とは惰性であり、妥協、後退です。
自分は今、広布のために、人間革命のために生きているのか、一念は定まっているのか――それを見極めていくことが、私たちにとって、『本迹』を立て分けていくということになるし、その人が最後の勝利者になっていく。ゆえに、『本迹』といっても、この瞬間瞬間が勝負であり、自分のいる現実が仏道修行の道場となる」
(148~149ページ)
◇
<人生そのものに懐疑的になり、学会活動にも積極的になれずにいた友を励ます>
「あなたは、一人になり、孤独になってはだめだよ。行き詰まってしまうからね。常に心を開いてくれる、触発と励ましの組織が学会なんだ。だから、勇気をもって、その学会の組織のなかに飛び込み、人びとのために働くことだ」
(156ページ)
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
聖教電子版の「世界広布の大道 小説『新・人間革命』に学ぶ」第8巻「解説編」の池田博正主任副会長の紙上講座を閲覧できます。
第8巻「解説編」はこちら。
◆〈忘れ得ぬ旅 太陽の心で――池田先生の連載エッセーから〉 沖縄2020年5月15日
友に幸あれ 勝利あれ
瑠璃色に輝く沖縄の海(1997年2月、池田先生撮影。恩納村で)
瑠璃色に輝く沖縄の海(1997年2月、池田先生撮影。恩納村で)
月刊誌「パンプキン」誌上の池田先生の連載エッセー「忘れ得ぬ旅 太陽の心で」を紹介する本企画。今回は「沖縄」についてつづられた「命どぅ宝――平和の色彩」を掲載する(潮出版社刊の同名のエッセー集から抜粋)。きょう15日は沖縄の本土復帰の日。戦争で最も辛酸をなめた沖縄は、先生が不戦への決意を固め、同志と共に永遠の平和・繁栄の楽土建設を誓った天地である。ここ
に脈打つ生命尊厳の心はまた立正安国の祈りとなり、おおらかな友情の魂は世界を一つに結ぶ。励ましの輪を広げつつ危機の時代を生きる全ての友へのエールとなろう。
紺碧の
大海原に
堂々と
世界に誇る
沖縄城かな
生きとし生けるものには、みな色彩があります。どの色も、かけがえのない個性です。
それぞれが帯びた命の色を、お互いに伸びやかに輝かせ合いながら、この世界を明るく豊かに染め上げていく――そこに平和の一つの実像があると言えないでしょうか。
大空も、大海原も、大地も、そして人々の命も、ひときわ鮮やかな光彩を放ち調和している麗しき島が、わが愛する沖縄です。
沖縄には、「命どぅ宝」(命こそ宝)という、揺るぎない生命尊厳の心が光っています。「イチャリバチョーデー」(出会えば、みな、きょうだい)という、おおらかな友情の魂が脈打っています。
「お互に仲よくすることは勿論のこと、すすんで人々を、睦じくさせる」とは、琉球民話「邑を創る兄弟」が伝える、和楽を広げる生き方です。
いにしえより、琉球王国の人々は、閉ざされた島国根性ではなくして、広々と開かれた海洋国の気風を漲らせ、勇敢に波濤を越えて、アジアへ、世界へ、打って出てきました。
船が難破した異国の友を救出しては、心づくしでもてなした逸話は、枚挙に暇がありません。
その真心に触れた人々は、「琉球人は友好的で信頼のおける民族だ。しかも、こよなく幸せな民族だ」等と、感謝と賞讃の証言を歴史に残しています。
まさに沖縄は「万国の津梁」(世界の架け橋)の存在です。海外との闊達な交流のなかで、多彩な文化が育まれてきました。鮮烈な色彩芸術が眩い琉球紅型など、「染織の宝庫」でもあります。絣の源流も沖縄です。
琉球の大指導者・蔡温(一六八二~一七六一)は、「我人の恩をうけては長くわするべからず必ずむくうべし」と綴りました。
恩義を決して忘れず、縁する人を家族のように大切にしながら、和気あいあいと生命の讃歌を謳い上げていく――この温かな太陽の心こそ、沖縄を美しく彩る光源と言ってよいでしょう。
平和の宝島に
本年は、池田先生の沖縄初訪問60周年である。先生は平和への誓いを固めた当時の真情に言及。また、3万人の大文化祭を行った沖縄市をはじめ、各地での忘れ得ぬ出会いを思い起こしながら、沖縄の一層の繁栄を望んだ。
悲劇なる
歴史の彼方に
栄光の
平和の土台の
原点 創れや
一九六〇年七月、私は初めて沖縄を訪問した折、南部戦跡の「ひめゆりの塔」や「健児之塔」の前に立ち、深く合掌しました。その時、誓いを固めたことがあります。
最も戦争の苦しみを味わった沖縄の人々こそ、誰よりも、誰よりも、幸せになる権利がある。いな、絶対にそうあらねばならない。ゆえに、この地に、敬愛する友と断じて平和の理想の宝島を築いていくのだ、と。
沖縄初訪問の三カ月後、私は最初の海外歴訪に出発しましたが、平和を願い対話を広げゆく世界への旅も、私の心の起点は沖縄でありました。
さらに一九六四年の師走、私は沖縄の都・那覇で、小説『人間革命』の執筆を開始し、冒頭に綴りました。
「戦争ほど、残酷なものはない。
戦争ほど、悲惨なものはない」
それは、軍部政府の横暴と戦い抜いてきた師匠・戸田城聖先生から受け継いだ叫びであり、沖縄の友と分かち合う世界不戦の決意でありました。
私は沖縄各地の友と、その島その郷土が誇る文化を大切に、地域の友好を広げていくことが、平和への貢献になると確かめ合ってきました。
時にハチマキと、はっぴ姿で踊りの輪に飛び込み、時に島の更なる発展を願い、「イヤサカ(弥栄)! イヤサカ!」と音頭をとりました。懐かしい語らいの光景が、一つ一つ名画のごとく色鮮やかに蘇ってきます。
私は初訪問の際、強く申し上げました。
「沖縄は、必ずや将来、『東洋のハワイ』になります。世界中の人々が憧れ、集い合う天地になります」
烈風にも耐え抜くガジュマルの木のように、「ガンジュームン」(頑丈者・健康で丈夫な人)たる沖縄の尊き方々が、言うに言われぬ苦難を乗り越え、不屈の繁栄を築いておられることは、何よりの喜びです。
生涯建設
ここで池田先生は、宿命の嵐にも負けず、平和の建設に尽くした婦人の足跡を紹介。命を尊ぶ沖縄の心が地球を包みゆく未来に思いをはせた。
私と妻が一緒に歴史を刻んできた沖縄の女性リーダーは、かつて、夫の事業の挫折、厳しい生活苦や病気など、まったく希望の見えない日々でした。しかし、夫妻して「悲惨な戦場となった沖縄を最も幸福な社会へと転じていこう」と決意しました。
沖縄のことわざに「チョーククルルデーイチ」(人は心こそ第一)とあります。平和も、一人一人が自身の苦悩に勝ち、宿命に泣いていた自分に勝って、「人間革命」していくところから始まります。婦人は、子どもの手を引きながら、友の家を一軒一軒訪ね、その悩みにじっくり耳を傾けて励ましていきます。
夫に先立たれたあとも、遺志を受け継いで、沖縄全島を駆け巡ってこられました。
この婦人のモットーは「生涯建設」です。「勇気をもって、人生は強気でいく」です。勇気こそ自分を建設し、平和を建設しゆく原動力です。
恩納村にある、私たちの研修道場の敷地には、かつて中距離弾道ミサイル・メースBを配備した米軍基地の八つの発射台が置かれ、冷戦時代は北京など中国の主要都市を射程内に入れていました。その発射台跡は、今、世界平和の記念碑に生まれ変わっています。
核兵器廃絶を目指す科学者の国際組織パグウォッシュ会議名誉会長のロートブラット博士も、この研修道場にお迎えした一人です。人生を賭して世界の平和のために戦い抜いてきた博士だからこそ、沖縄の心に最大の共鳴を示されました。
「私たちは今一度、人間とすべての生命の尊厳に目を向けなければならない」との博士の言葉が、私の胸に深く強く響いております。
平和ほど、尊きものはありません。
平和ほど、幸福なものはありません。
「命どぅ宝」(命こそ宝)――この沖縄の心が地球を包み、世界中の母と子の笑顔が輝きわたる未来の光彩を、私はいつも思い描いています。
沖縄の
友に幸あれ
勝利あれ
私は祈らむ
皆様 見つめて
(『忘れ得ぬ旅 太陽の心で』第2巻所収)
※「邑を創る兄弟」の引用は『琉球民話集 全巻 球陽外巻遺老説伝口語訳
口碑伝説民話集録』(琉球史料研究会)。琉球人をたたえる証言は『青い目が見た大琉球』ラブ・オーシュリ/上原正稔編著、照屋善彦監修(ニライ社)。蔡温の言葉は『蔡温全集』崎浜秀明編著(本邦書籍、現代表記に改めた)。
【聖教ニュース】
◆ロシア語版「生命と仏法を語る」が発刊 2020年5月15日
サンクトペテルブルク東洋学出版センターから
サンクトペテルブルク東洋学出版センターから発刊されたロシア語版『生命と仏法を語る』(写真はL・N・アングリノワ氏提供)
サンクトペテルブルク東洋学出版センターから発刊されたロシア語版『生命と仏法を語る』(写真はL・N・アングリノワ氏提供)
池田大作先生の著書『生命と仏法を語る』のロシア語版が発刊された。英語版(改訂版=英文タイトル『生と死の謎を解く』)から重訳されたもの。
版元は、ロシアのサンクトペテルブルク東洋学出版センター。これまで池田先生の御書講義録をはじめ、『私の釈尊観』ロシア語版を刊行した、学術書を中心に扱う著名な出版社である。
補完し合う大乗仏教と現代科学
「生死」という根本問題に迫る一書
『生命と仏法を語る』は、生命の根本原理を解き明かした大乗仏教の視座を柱に、それを広範な現代科学の知見で補完しつつ、誰しもが直面する「生死」の根本問題に迫る一書。
本書は冒頭で、生老病死という「四苦」の実相と、それを乗り越え、幸福な境涯を確立する仏法の智慧を紹介する。
釈尊や日蓮大聖人の生命観と、現代科学の所見を照らし合わせながら、「困難こそ、自己を変革するチャンス」「挑戦する心を持つ人は、年を重ねるほどに人生の深みを増す」「適切な医学的処置と共に、内在的な力用を引き出すことが病気の克服につながる」「死の意味と向き合う中で、生がより輝いていく」など、人生をより豊かにする哲理が語られていく。
「南無妙法蓮華経」の深義、「十界」「九識」の法理、さらに「人間革命」の理念などが分かりやすく論じられている。
「菩薩」という生き方
ロシア語版を紹介した同出版センターのウェブサイトでは、本書の魅力が、こう記されている。
「この本の中で著者は、善や平和、非暴力の意義を説きながら、仏教徒だけでなく、世界中の人々に対して次の点を訴えている。利己心を排し、周囲の人々を救う『菩薩』の生き方こそ素晴らしい選択であること、さらに、全ての人が例外なく、無限の可能性を持っていることである」
『生命と仏法を語る』はこれまで、日本語に加え、英語、イタリア語、ドイツ語、スペイン語、フランス語、ルーマニア語、インドネシア語、ハンガリー語、スウェーデン語、カタルーニャ語、ポルトガル語に翻訳され、長く読み継がれてきた。
コロナ禍で、人間観、人生観が改めて見つめ直される今、三世を貫く大乗仏教の視座に基づき、人間の生命力を最大限に引き出す方途を平明に述べた本書は、ロシア語圏の人々にも希望を贈るものとなるに違いない。
◆青年部と医学者が第6回オンライン会議 2020年5月15日
新型コロナウイルスの感染状況を踏まえ、青年部の代表と公衆衛生等に詳しい医学者らが、3月末からオンライン会議システムを活用して、意見交換を行っている。
第6回となるオンライン会議は14日に開かれ、志賀青年部長、西方男子部長、大串女子部長ら青年部の代表と、東京医科歯科大学の藤原武男教授、新潟大学の菖蒲川由郷特任教授、創価青年医学者会議の庄司議長、創価女性医学者会議の勝又議長が参加した。
テーマは「『新しい日常』を考える」。
政府は同日、特定警戒都道府県の茨城、石川、岐阜、愛知、福岡を含む39県の緊急事態宣言の解除を発表。
今後、政府の専門家会議が示した「新しい生活様式」に基づき、一人一人が長期にわたる感染防止対策を実践する必要がある。
「新しい日常」へ「心の変革」を
オンライン会議では、人々の行動制限を伴う「新しい生活様式」が提示された背景と目的を確認。緊急事態宣言が解除された後の日常生活で一人一人が意識すべきことなどを議論した。
また会議では、長引く自粛生活のストレスが、感染者や医療従事者等への中傷行動となって表れていることも話題に。それらが起こる心理的要因について概説された。
そして、「新しい日常」を充実させるポイントとして、“できないこと”を強調するより、“何ができるか”を価値的に考え、個々人の状況に合わせた生活様式を生み出していく意識の重要性などが語り合われた。
最後に、「新しい日常」を築いていくために、一人一人の「心の変革」を促す創価の哲学を広げていくことを約し合った。(会議の模様は後日詳報)
【特集記事・信仰体験など】
◆〈信仰体験〉リーマン・ショックからの飛躍 解体工事業の経営者
いかなる苦難も迎え撃つ
8カ月間の無収入を乗り越え
【京都市】2008年(平成20年)9月に起きたリーマン・ショック。その余波が会社を直撃した。当時、村田隆さん(53)=副本部長(支部長兼任)=は小さな解体工事会社の役員を務めていた。受注は激減。それでも“すぐに苦境を抜け出せる”と思っていた。だが現実はそんなに甘くはなかった。
信心が試される時
翌09年の仕事始め。事務所の電話が鳴った。“見積もりの依頼や”と期待して受話器を取るも、新年のあいさつだけ。営業に歩いても、顧客は皆、「先の見通しが立たない」と首を横に振った。
村田さんはその月から無給となった。“1、2カ月の辛抱”と自分に言い聞かせたが、一向に好転の兆しはなかった。
生活費は貯蓄を切り崩した。高校と中学校に通う3人の子の教育費もかさむ。
――若い頃から解体工事業の世界で生きてきた。30歳を過ぎた頃、“どんなに仕事を頑張っても認めてもらえない”という悩みにぶつかる。
そんなある日の男子部の会合。「思い通りに結果が出ないのは、信心のリズムが崩れているからだ」との一言が胸に刺さった。
変わりたい一心で学会活動に励んだ。やがて男子部のリーダーとして活躍するようになり、職場では一目置かれる存在になった。
そして40歳になった時、“人生は40代からが勝負”という池田先生の指導に奮い立ち、さらなる飛躍を夢見て、同業種の会社役員として再出発を果たしたのである。
その2年後に起きたリーマン・ショック。「人生で初めての試練」に対して、逃げたくなかった。
「壮年世代になってから本当の信心が試されるよ」との先輩の言葉も思い出される。“いよいよの信心”の決意で御本尊に向かった。
家族も共に戦う
日に日に勢いを増す夫の祈りに、妻の峰子さん(53)=支部副婦人部長=は「会社が切羽詰まった状況なんだと感じるようになりました」。
桜が散り、新緑が芽吹き始めても、仕事はなく、無収入の生活が続いた。
不況のあおりを乗り越えようと、共に唱題に励んでいた壮年部の同志が「やっと動きだした」と苦境を脱していく。
“自分だけ”が取り残されていくような焦り。“いつまで続くのか”という先の見えない不安……。
そんな思いを打ち払うように祈っても、心は苦しくなるばかりだった。
ある時、峰子さんに「俺と離婚したほうが今より生活は良くなると思う」と、つい口走ってしまった。妻が悲しそうな表情を向けた。
体調が優れず、働きに出られなかった峰子さんは、極限まで生活費を切り詰めた。それでも、高校、中学に進学する次男と長女の制服代などが払えず、地域の人に頭を下げて譲ってもらった。
高校生だった長男は靴底が大きくめくれてしまっても、何も言わずに通学していた。
“家族も共に戦ってくれている”。胸に熱いものが込み上げた。
祈りが深まるにつれ、池田先生が繰り返し紹介していた吉川英治の『宮本武蔵』の一節が浮かぶ。
「あれになろう、これに成ろうと焦心るより、富士のように、黙って、自分を動かないものに作りあげろ」
“重い病と闘っている人だっている。その人のほうが、ずっと大変だ”とも思えた。
「自分の悩みが、小さく感じられるようになってきたんです」
家財を質屋に入れた。夫婦で真剣に広布の活動に励んだ。
峰子さんは「弱気になりかけた時期もありましたが、『信心で乗り越えたいんや!』と言う夫と同じ思いで、私もさらに信心で立つ決意ができました」と。
忍耐強く、祈る
強い日差しが照りつける8月半ば。会社に一本の電話が入った。「見積もりをお願いできますか?」。取引先からだった。
“やっとだ。やっと……”
ここから会社は一気に息を吹き返す。
年内の残り3カ月間で、借金を完済するまでに業績を回復する。
御本尊への感謝は尽きなかった。
「今から思えば『わずか8カ月間』でしたが、当時は一日一日が真っ暗闇の中を手探りで進んでいるようで、長く苦しい毎日でした。それでも御本尊を信じ抜いた先に光明が差した。この経験が、新たな人生を開く転機になったんです」
その後、独立。2015年に株式会社「東毀」を設立した。2年前からは解体工事業に加えて不動産業務も手掛けるように。年々業績を上げ、現在も安定経営を続ける。
8年前、峰子さんが指定難病「網膜色素変性症」を発症したことから、代わりに村田さんが本紙の配達を担っている。夜明け前に配達を終えた後は2時間の唱題。そんな村田さんの願いは「子どもたち全員が広布後継の人材に成長すること」。
創価一貫教育を受けた長男・直樹さん(28)=東京都中野区、男子部部長=は現在、俳優として活躍。創価大学出身の次男・正樹さん(26)=東京都八王子市、区学生部書記長=は、小学校の教員を目指して奮闘中。長女・幸恵さん=女子部員=は創大を卒業した今春から大手企業へ。三男の隆弘君(10)=小学5年=も創価の庭ですくすくと育つ。
池田先生はかつて、経済不況に悪戦苦闘する壮年部の友に、次のように呼び掛けている。
「妙法流布という使命に走る者は、全宇宙の諸天善神が守りに護ってくれるのだ。これほど痛快な人生はないのだ。妙法の信仰者には、絶対に敗北はない。敗北のない人は、永遠に勝利者である。幸福の王者である。人生の長者である。そのための信仰だ。そのための道を、歩み、走っているのだ」
この師の魂を生命に刻んできた村田さんには、「いかなる苦難も信心で迎え撃つ」との覚悟ができている。