|
カテゴリ:眼差し
えっ、まだ1週間しか経っていないの?
先週出かけた美術展なのに、 もう何年も経ったような気がするわたくし。 (アンリ・マティスの『青いドレスの女』です。) いま上野の東京都立美術館で開催中のフィラデルフィア美術館展を観てきました。 雨の中ゆえ、わたくしには幸いでしたけれど、結構混んでいるので驚きました。 同館でいくつかの美術団体の展覧会が開催されていたせいかもしれませんね。 さすがに絵画の秋というか、制作者たちのとっては年に一度か二度の作品展示のシーズンです。人、人、人--- さて、『フィラデルフィア美術館展』、 この美術展開催に際して、「プッサンからセザンヌ、そしてデュシャンへの道」 と題された講演があったようですが、 展示されていた作品群もそれを物語るかもような内容でした。 フィラデルフィア美術館というのは、写真でよく見るように、 ギリシャのパルテノンのような古典的な建築のあの美術館ですが、 その本館だけじゃなく、それに加えて、別館のロダン美術館、近現代のデザインを主とした展示の新館などがありまさに進化し続ける美術館という印象を持ちますけれど、 それらの所蔵品が25万点に及ぶというまさにアメリカ屈指の歴史的な美術館です。 現在では中世、ルネサンスの絵画も所蔵されているものの、 やはりヨーロッパの近現代美術の所蔵で質量ともに充実したコレクションの美術館として 美術ファンの間では殊によく知られた存在ですが、 そうそう、あの映画『ロッキー』で、 訓練が仕上がってきたロッキーが駆け上がっていく石段がありますよね。 ガッツポーズを取る試合直前のロッキー。シリーズではお馴染みになったシーンですが、 あそこがフィラデルフィア美術館なので、 皆さんもすでにご覧になっていらっしゃるはず。 フランスの印象主義、後期印象主義やキュビズム、美術史的区分はともかくとして、 19世紀後半から20世紀、セザンヌからピカソ、マルセル・デュシャンといったアーティストにいたるまでの西洋近代美術の歴史を俯瞰することができるコレクションが、何といっても魅力な美術館です。 それにしても、どうしてヨーロッパの近代以降の絵画がこんなにも揃って ここアメリカのフィラデルフィア美術館に集められているのか。 昔、突然気になって調べたことがありました。 大まかながら、こういうことです。 セザンヌやゴッホなど、彼らがフランスで(フランスでは写実主義全盛の頃ゆえ)売れない無名画家だった頃、アメリカ人画家であるメアリー・カサットの個人的なツテでフィラデルフィアの実業家コレクターたちが、フランスではいまだ評価されず認められず売れなかった彼らの作品を買い集めることになっていったからです。 個人の力(才能や人間的魅力やコネ)というのは、偉大ですね。 そうした当時の個人コレクターたちによって買われ所蔵された絵画群が、 ルノワールやモネ、ピサロ、ドガ、若きピカソやモジリアニの作品が、後にフィラデルフィア美術館に寄贈されることになるのです。 当時のアメリカのコレクターたちのセンス、先見の明ともいえる感性、 アメリカ独立100周年事業で沸き立っていた時代だということもありましょうけれど、 絵画にとっては、まさに幸いでした。 旧大陸で埋もれそうだった新しい才能が、新大陸の実業家たちによって支えられ歴史の表舞台に登場するのを助けられたともいえるからです。 当時の身体大陸の公に尽くすキリスト教的な市民性---- 素直に敬服してしまいます。 19世紀後半から20世紀初頭の話ですけれど、その頃の日本も、明治維新後の欧化政策で西洋文明に追いつけ追い越せで、国が一丸となって近代化を突き進んでいた頃。 日本にも、松方コレクションのようなものがあったことを忘れたくないけれど、 個人よりもまずは国家が立ち行かなければと思いつめていた時代です。 美術品の個人コレクターの活躍で世界屈指の美術館の礎が築かれるなど夢のまた夢。 -----アメリカとヨーロッパ大陸の≪近さ≫と≪遠さ≫が、 こと西洋美術に関しては、当然のことながら羨ましくなります。 その両大陸の≪近さと遠さ≫を超えるには、 相当なエネルギーが要りそうです。 それこそ≪芸術は爆発だァ≫と言えるエネルギーを持ったアーティストじゃないと、 なかなか難しい。 ←この美術展のことも、後日改めて画像と共にアップしますね。 いずれにしても、とても充実した美術展でした。 まだ開催中ゆえ、東京新国立美術館で開催中の「フェルメール 牛乳を注ぐ女ととオランダ風俗画展」だけじゃなく、 こちらもお勧めです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Nov 18, 2007 10:44:29 PM
[眼差し] カテゴリの最新記事
|