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カテゴリ:日記小説
15. そういえば、いつの間にか非常事態宣言の垂れ流しは止まっていた。 その付けっぱなしだったラジオから何かが流れ始めたのだった。 始めは、ノイズだった。それが少し続いた、後の内容に流石に全員があ然とした。 「・・・こちらは”日中格差を是正する有志の会”だ。我々は10キロトンの戦術核弾頭ロケット弾を保有している。我々は今、皇居を射程に納めた。我々の要求は米帝の走狗となり、中国を不当に苦しめている日帝の所業を悔い改めさせ、誠意ある態度を求めることにある。その証として、ミユキ・アンドウの身柄を引き渡すことを要求するものである・・・」 途中のゴタクはどうでも良かったが戦術核と美由紀がどう繋がるのかが完全に意味不明だった。 それでも放っておくことは出来なかった。 戦術核をどうするというのか!!。 撃つのか?!皇居へ?!。 「矢嶋さん!!これどう使うの?!」 美由紀は必死の形相で無線機を取り上げた。 矢嶋はまだ少し呆然としながら美由紀から無線機を受け取り上の空で操作した。 再び矢嶋から無線機受け取る。どうやら無線機の所属する原隊をコールした様だった。 相手が話し出す前に美由紀はそれにおっ被せて叫んだ。 「私がその安藤美由紀です!!誰でもいいから偉い人に代わって!!」 向こう側で少し混乱の気配の後、雑音交じりの声がした。 「私でいいだろうか」 TVでさんざん聞いた、深みのある声。総理大臣だった。 「安藤美由紀です!!この度はお騒がせしましてすみません!!」 そうではなかった、もっと言いたいことはたくさんあった。 だが、それこそ正に非常事態だった。些事には関わっていられない。 「私は、どうすればいいのでしょう?!」 相手は、首相は沈黙した。やがて、聞き取り辛い細い声でいった。 「相手はテロリストだ。要求に屈するワケにはいかん。今回の件は歴史の良い教訓となるだろう」 美由紀は何か言おうとして言えなかった。 国の為に犠牲になってくれと言われた方が、素直に反発出来るだけまだラクだった。 頭が真っ白になっていく。 こんな時こそ、何か、何か素晴らしい妙案が、自動で。 ムリだった。ムダだった。0に何を掛けても0だった。 直観はエラーを吐き出し続けている。 何も手はない。 いや。 矢嶋は自分を信じると言った。 私は何を信じる? 出来る? 智英は止めようとして、自分も一緒に”走った”。 ざらざらざらざらばきくしゃめきごくり。 タブレットの残りをの全部を、二人で仲良くはんぶんこして、飲んだ。 ぞごん それは、訪れた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Apr 28, 2007 09:07:09 AM
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