美味しい御飯の創り方 最終章
16. 何とかしなきゃ。何か、いい知恵は。 想いはそれだけだった。 それだけで。 二人は、空を飛んでいた。 誰かがそれを見て指差し、声を張り上げた。 そのまま何故か”その”飛行船に近づき、平行して飛行した。この飛行船が今回の騒動の主役?さっきの声明の主?。そうであるらしかった。 飛行船の乗員も気付いた。声を上げている。 突然、撃たれた。機関短銃の一連射をまともに浴びる。 だが、弾丸は身体に吸い込まれて無くなった。何ともなかった。 飛行船の船室で動揺が起こっているのが伝わって来る。 飛行船の船体が何か禍々しいものに覆われているのが判った。 美由紀はそれに気付いて、まずそれを、その分子構造を解きほぐすことから始めた。 あやとりをしている様な感触だった。みるみる飛行船は綺麗になってゆく。 そうしていたら、遂にロケットが発射された。 智英が美由紀の手伝いを止め、ロケットを追いかけて飛んだ。 いや、飛行ではなかった。瞬間移動だった。 そのままロケットに馬乗りになり、弾頭を引き抜き、両手で潰した。 ダンボールの空き箱を潰すほどの手応えもなかった。潰れたあと、それは手の中でさらさらと角砂糖が溶ける様に消えた。残ったブースターは蹴り飛ばした。皇居のお堀に落ちて、派手な水柱が上がる。 飛行船は針路を変え、遁走に入った。だが、周辺の空域を哨戒していたF15-Jが目ざとくそれを見つけピタリとその前後を押さえた。すると、乗組員は次々と空中へ身を投げた。末路だった。 それは、人間の最終進化の一つの到達点だった。 現人神となった二人は、現人神がおわします住居の上を飛行しながら、どちらとも無く笑い合った。 そして、二人は徐々に気付いた。 地上から浴びせられる視線を。 そう。 街角に、そこ、ここに。 神は、立っていた、或いは座禅を組んで瞑想していた。 神々が集う国、日本。 まさしく、”八百萬の神々”が棲まう国、日本の姿がここにあった。 危機は去った。 手段であり目的でもあった少女と、その親友による究極の自己解決であった。 中国はその手駒の総てを完全に失い敗退。 日本政府も、もはや現人神となりおおせた、その”標的”にこれ以上どういう方法手段を以ってしても、干渉すら許されないはずだった。 二人は仰ぎ見る矢嶋の元に降り立った。 ふいに、美由紀が言った。「ああ、おなっかが、すいたっ!!」 二人は爆笑した。「よーし、何でもおごってやるぞ!!中華街で食ってくか?」 矢嶋が請け負った「じゃあ、ラーメン!塩ラーメン食べたい!!」「お安い御用ですよ、女神様」 その後、同人誌界で空前のヒット作品が登場する。 その名は「美味しい御飯の創り方」 内容は、家庭で誰でも出来る、 食べると美味しくて、元気が出て、 体の奥底から知恵と勇気と希望が湧き出してくる、、 ”究極のレシピ”だった。