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カテゴリ:日々の読書(ミステリー)
骨董を扱った北森鴻の作品と言えば、美人旗師(店舗を持たない古物商)の宇佐見陶子が活躍する「冬狐堂シリーズ」が有名であるが、もうひとつ、「孔雀狂想曲」(集英社)という作品もある。しかし、こちらの方の主人公である越名集治は、陶子とは異なり、下北沢の片隅にちゃんと店を構えている。店の名前は、「雅蘭堂」。名前の通り、いつもがらんとして暇な店だ。この作品は、越名が見事な目利きぶりを発揮して、骨董にまつわる事件を次々に解決していくという連作短編集である。 ○孔雀狂想曲(北森鴻:集英社) この越名とよいコンビなのが安積という女子高生。この店で万引きをしようとして見つかったことがきっかけで、なぜか押しかけアルバイトとして居ついてしまった娘だ。これがまた、あっけらかんとした、いかにも今どきの娘と言う感じで、越名との掛け合い漫才のようなやりとりが、なんとも言えず面白い。 その一方で、出てくる事件は、殺人事件だったり、骨董に関する悪だくみだったりして、少し「冬狐堂シリーズ」とかぶるようなところもある。骨董や古美術に関する知識については、作者の取材に関する努力がうかがえ、興味深く読めるものとなっている。収録されているのは、表題作の「孔雀狂想曲」をはじめ計8篇。 なお、文庫版の解説を、哲学者の木田元氏が書いていた。実は、それまで名前も知らなかったのだが、なんとなく興味をひかれて、最近、氏の大学の退官記念の最終講義を収めた本を買っていたのである。意外な人が北森鴻のファンだと知って、ちょっとびっくりした。 ○応援クリックお願いします。 風と雲の郷 別館「文理両道」はこちら 風と雲の郷 貴賓館「本の宇宙(そら)」はこちら お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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