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カテゴリ:うるま市
![]() (屋慶名のガジュマル) 「屋慶名集落」は沖縄本島うるま市の東方に位置し太平洋と金武湾に面しています。琉球王朝時代に勝連間切りに含まれ、与那城の先人は奄美から大和、朝鮮にかけ海外貿易の船乗りとして活躍していました。屋慶名港は前に浮かぶ藪地島が太平洋の荒波を防ぐ防波堤となり、船舶の出入りに都合の良い港であり当時のエネルギーであった薪や炭を始め、あらゆる生活物資を輸送するマーラン船(山原船)の中継拠点として大いに栄えていました。 ![]() (屋慶名の土帝君) 「土帝君(トゥーティークー)」とは沖縄における中国の土地公(土地の神様)を意味し「球陽」の巻九によると、1698年に大嶺親方鄭弘良が中国から土地公の神像を持ち帰り自分の領地である旧小禄村大嶺を祀ったのが最初だと言われています。現在、沖縄では42箇所の「土帝君」が見つかっており「屋慶名の土帝君」の祭祀は農業等の繁栄を祈願し、中国の土地公の誕生日である旧暦2月2日に拝まれています。 ![]() (3代目屋慶名のクワーディーサー) ![]() (屋慶名のクワーディーサーの歌碑) 屋慶名自治会の敷地に「屋慶名のクワーディーサー」があり、現在のクワーディーサーは3代目となっています。古葉手樹(コバテイシ)と呼ばれる木で沖縄だけでなく小笠原、アジア、アフリカの海岸に分布しています。墓の庭に植えられ人の泣き声を聞いて成長すると言われる神秘の木です。1670年頃から歌い継がれる「屋慶名クワーディーサー」の歌はとても有名で、木の麓には歌碑が建てられています。また、10月には「屋慶名クワーディーサー祭」が行われ集落の有志によるエイサーの演舞が奉納されています。 ![]() (旧屋慶名区役所のヒヌカン) ![]() (ヒヌカンの祠内部) 屋慶名区役所と屋慶名公民館は道を一本挟んだ「屋慶名自治会」に移転しており「ヒヌカン(火の神)」は昔から同じ場所で住民に拝まれています。祠の内部には3基のウコール(香炉)と、天地海を意味する3つのビジュル霊石が祀られています。屋慶名集落の守護神として外部からの悪霊を祓う役割があります。隣接する「屋慶名のクワーディーサー」と共に屋慶名集落の長い歴史を見つめてきた大切な文化財となっています。 ![]() (屋慶名のフクギ) ![]() (フクギの麓にある古井戸) 屋慶名集落の中央に「西屋慶名」と「東屋慶名」を分ける屋慶名川が流れています。西屋慶名にある屋慶名川沿いの屋敷に、周囲をブロックで円状に囲んだ古井戸があります。古井戸には石作りの半蓋と屋根が取り付けてあり、苔に覆われた古い石段が敷かれています。古井戸の脇には樹齢の古いフクギの木が育っており、古井戸の水の神を祀っているように天に向かって一直線に伸びていました。 ![]() (屋慶名西公園のガジュマル) ![]() (屋慶名西公園の拝所) 屋慶名自治会の北側に「屋慶名西公園」があります。公園には高樹齢のガジュマルがあり、幾本もの枝がお互いに絡み合いながら大地にしっかりと根を伸ばしています。ガジュマルはキジムナーと呼ばれる妖精が宿る神の木として崇められ、勝手にガジュマルの枝を切ったりすると妖精に祟られると言われています。公園の東側には小さな井戸跡に拝所の祠が祀られていました。 ![]() (与那城監視哨跡の入り口) ![]() (与那城監視哨跡) 「与那城監視哨」は航空機を早期に発見し、敵味方を区別して防空機関に知らせるための施設で、屋慶名集落の「イシマシムイ」の丘の上にあります。正八角形のコンクリート製で、入り口以外の7つの壁面には1つずつ窓枠があり360度見渡せる構造になっています。壁面には沖縄戦当時、米軍による銃撃を受けた痕跡が現在も生々しく残っており、戦争遺跡として大変貴重な文化財となっています。 ![]() (イシガー) ![]() (イシガーのガジュマル) 「屋慶名監視哨」がある「イシマシムイ」の丘の麓に「イシガー」と呼ばれる井泉があります。水源が豊富な「イシガー」はかつて集落の飲料水や生活用水に使用され、水の神様が祀られています。井泉の霊水の恵みを受けて樹齢の高い立派なガジュマルが育っています。神が宿る「イシガーのガジュマル」と呼ばれ、昔から集落の住民の信仰対象とされていました。 ![]() (イリーガー) ![]() (アガリガー) 「屋慶名集落」の西側(西屋慶名)に「イリーガー」、東側(東屋慶名)には「アガリガー」があります。沖縄の言葉でイリーは西、アガリは東、ガーは川や井泉を意味します。屋慶名集落の井戸は比較的大規模で井戸の手前に広い空間が設けられている事が特徴的です。他集落ではあまり見かけない構造を可能にしているのが屋慶名集落の豊富な湧き水で、この集落が古より港町として繁栄した証となっています。 ![]() (メーガー) ![]() (フルガー) 「屋慶名(東)交差点」の周辺には井泉が集中しており、東屋慶名地区が水源の宝庫となっています。西屋慶名はガジュマル、フクギ、クワーディーサーなど数多くの霊木に覆われており、東屋慶名には豊富な神水が湧き出ているのです。「メーガー」も大規模な井泉で門構えがある堅固な構造です。「フルガー」は東屋慶名の「兼久商店」駐車場にある小さな古井戸となっています。 ![]() (兼久商店) ![]() (兼久商店の自動販売機) ![]() (屋慶名の海にあるHYロゴマーク) 東屋慶名の「兼久商店」は沖縄のバンド「HY」のファンにとって、余りにも有名な聖地として知られています。HYが2001年に発表したアルバム「Departure」に「兼久商店」というタイトルの曲が収録されています。商店の自動販売機には「HY誕生の地」と記されており、HYと非常に関わりのある商店としてメンバー、ファン、地元住民に愛され続ける非常に価値の高い文化財となっています。更に、屋慶名の海には石が並べられてHYのロゴマークがデザインされています。このロゴマークは干潮時のみ現れて見ることが出来ます。 ![]() (屋慶名郵便局前のフクギ) 「海の民」であった与那城の人々は大正から昭和初期にかけて東南アジア、中南米など広く海外へ雄飛し活躍し、屋慶名地区は周囲の離島を結ぶ拠点として政治、経済、文化の中心地として繁栄しました。屋慶名集落には東屋慶名の井泉と西屋慶名の木々の自然という貴重な財産があり、琉球王国時代からの遺跡文化財が多数継承される魅力溢れた地域となっています。集落には古き良き琉球の時間がゆっくりと流れており、大自然の神々を感じるパワースポットとなっているのです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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