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カテゴリ:浦添市
(安波茶樋川) 沖縄本島中南部の「浦添市」に古琉球より湧き出る「ヒージャー(樋川)」があり「ヒージャー」とは湧き水から樋で引いた井泉を言います。「浦添市安波茶」に「安波茶樋川(アハチャヒージャー)」があり、1713年に琉球王府により編纂された「琉球国由来記」にも記された井泉で、水道が整備される以前まで飲料水を汲む人、洗濯をする人、畑仕事の帰りに農具を洗う人など多くの住民が訪れました。地域住民の出会いや情報交換の場所としても賑わっていたと伝わります。 (安波茶樋川の石樋) (安波茶樋川の名水) (安波茶樋川の洗い場) 「安波茶樋川」は現在も木々が生い茂る湧き口から長い石樋を通じて豊富な水が流れ出しています。昔は石樋なの下部にタライを設置して水を受けていました。勢い良く注ぎ込む水がタライに当たる大きな音が特徴的であったと伝わっています。昭和30年代の大旱魃の際には周辺の井戸は全て枯れてしまいましたが「安波茶樋川」だけは枯れる事なく水が湧き出ていました。そのため離れた地域からも飲料水や洗濯の為に多くの人が訪れたそうです。「安波茶樋川」の周辺地域では最後まで稲作が行われていたほど水源に恵まれていたと伝わります。 (澤岻樋川) 「浦添市沢岻」に「澤岻樋川(タクシヒージャー)」があり、この井泉は1000年以上前に「澤岻集落」が発祥した頃から湧き出る名水として大切にされています。琉球王国時代、正月の朝には国王と国民の健康と長寿、国に繁栄と五穀豊穣を祈願した名泉です。また、元旦の朝一番に汲む「若水」を国王に献上した水として良く知られています。現在でも水量が多く湧き出ており、正月には沢山の人々が「澤岻樋川」に若返りの効果があるとされる「若水」を汲みに訪れます。 (澤岻樋川の溜め池) (澤岻樋川の拝所) 「澤岻樋川」は崖下の岩と「クチャ」と呼ばれる世界で沖縄でしか採れない泥岩の地層の間から水が湧き出て、自然のガマ(洞窟)に水が溜まる仕組みになっています。水量が豊富で非常に澄んだ水は大雨が降った後でも濁ることはありません。綺麗な水質を好むウナギやモクズガニの生息も確認されており、現在でも飲料水として周辺住民の生活に欠かせない名水となっています。「澤岻樋川」には拝所がありウコール(香炉)にヒラウコー(沖縄線香)がお供えされています。水の神様に水源の感謝を祈る神聖な場として地域の人々に崇められてらいるのです。 (澤岻樋川のガマ) (澤岻樋川の水路) 「澤岻ヒージャー」を管理する玉城弘さんによると、玉城さんの祖父母がまだ子供の頃に国王の健康と国の安泰を祈願する「首里城お水取り」と呼ばれる行事が行われており、元旦に巫女(ノロ)が白馬に乗って「澤岻樋川」で汲まれた水を首里城に届けたそうです。この白馬は「首里城お水取り」の行事の時のみ使われ、井戸にはこの白馬を繋ぐ専用の石が設置されていました。琉球王国に献上する水が湧き出る「澤岻樋川」は神聖な井泉として周辺住民の祈りの対象として崇められていたのです。 (仲間樋川) (仲間樋川の石樋) (仲間樋川の溜池) 「浦添市仲間」に「仲間樋川(ナカマヒージャー)」があります。「琉球国由来記(1713年)」にも記される歴史の長い「仲間樋川」は、その当時から井泉には石樋が掛けられていました。昭和10年に改修されコンクリートで溜池や平場が造られ井泉は拡張し、現在の石積みは戦前から残っているものとなります。子供が生まれた時の産水(ウブミジ)を汲んだウブガーであり、元旦に汲んだ若水(ワカミジ)を中指で浸し額を撫でるミジナディ(水撫で)と呼ばれる儀式で子供の健康を祈願しました。また、結婚式でも新郎新婦にミジナディを行い新婚夫婦の幸せを祈りました。 (仲間樋川の平場) (仲間樋川の水槽) (仲間樋川のウマアミシ) 琉球石灰岩の洞穴から湧き出た水は石造りの樋で導かれ溜池に注ぎ込み、飲料水から洗濯用水、雑用水から灌漑用水へと循環させて貴重な水の恵みを有効的に利用していました。「仲間樋川」の平場には3箇所に十字(約24 x 21cm/中央)が刻まれた場所があり、刻印はその位置から内側で洗濯をしてはいけない意味を示しています。平場の脇には石造りの水槽があり水を溜めて洗濯や行水が行われていました。最終的に湧き水はウマアミシと呼ばれる馬の水浴びをさせる場所に注ぎ込みます。更にウマアミシの水は農具や農作物を洗うためにも使用されていました。 (平場に刻まれた十字/中央) (仲間樋川の竣工記念石碑) 井泉は水の神が宿る神聖な場所として祈りの場所となっています。カー拝み(カーウガミ)はカーウガンや井戸詣(カーメー)とも呼ばれ、集落の年中行事で水の恵みへの感謝や住民の健康や集落の繁栄を祈願していました。現在でも旧暦の5月と6月のウマチー(豊作祈願/感謝祭)や12月の御願解きの祭祀の際に住民により拝まれています。首里に琉球王府が置かれる以前に220年間の繁栄を極めた「浦添グスク」周辺を潤したヒージャー(樋川)は、現在でも決して枯れる事なく聖なる水が湧き出ているのです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2022.11.12 21:55:51
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