『幻獣辞典』
『幻獣辞典』は世界各地の新旧の書物に記された架空の生物を集めた書物。原題を直訳すると、「空想的な存在の書」。「幻獣」という訳語があてられているが、扱われているのは獣系ばかりではなく、「being/存在」としか括りようの無いものである。中には「天体=生命体」説の紹介がなされている項目もある。ただし「幻獣辞典」という邦題は耳残りがよく、訳者の卓見であったと思う。ホルヘ・ルイス・ボルヘス(Jorge Luis Borges, 1899-1986)とマルガリータ・ゲレロ(Margarita Guerrero)の共同編纂による。可能な限り原書にあたって蒐集された情報が盛り込まれている。編著者自身による序文(1969)より、改訂とともに項目数を増補していったことが知られる。 1957年 『Mannal De Zoologia Fantastica』(幻獣動物案内) 82篇収録、メキシコで出版。スペイン語にて執筆。 ↓ 1967年 『El Libro De Los Seres Imaginarios』(想像の存在の書) 34篇追加、116篇収録、ブエノスアイレスで出版。 ↓ 1969年 『the Book of Imaginary Beings』 項目をかなり変更し、訂正・補足・修正を行う。120篇収録、英語版。項目が立てられているのは、ケンタウロス、ハルピュイア、セイレーン、中国の一角獣(麒麟)、八岐大蛇、チェシャ猫などなど。典拠は神話から文学作品まで幅広い。柳瀬尚紀翻訳による日本語版は1972年に晶文社より出版された。増刷を繰り返し第31刷(1991.7)にまで及んだ。1998年には同社より装丁をあらためて再刊がなされたが、現在は絶版となっているようである。