『ザ・キャッツ catwise』
『ザ・キャッツ catwise』Wilbur Pippin & Marian Winters訳・詩 江間章子 教育出版センター 1986年昨日吉祥寺の古本屋で購入(500円)。気の利いた猫に関する本は買うことにしています。猫=かわいい…というスタンスの本は買いません。原書は、New YorkのAlfred A Knopfから1979年に出版されたもの。写真家ピピンによる猫のモノクローム写真に、演出家・劇作家ウィンターズが撰んだ古今の著名人(Aristoteles、Shakespeare、Emersonなど)の名言が添えられたアンソロジーです。原タイトルの"catwise"は耳慣れない単語ですが、"cat whys"(猫に関する疑問)とひっかけてつくった造語でしょうか?。"...wise"という単語には「~のように」というニュアンスがあり、また"wise"には当然「賢さ(wisdom)」という含みがありますから、「猫のように賢く」とうい程度の題であったようです。日本で1986年に『ザ・キャッツ』と題されて出版されたものは「夏の思い出」の作詞者として著名な江間章子による名言の翻訳と、オリジナルの詩が添えられたものです。面白い意訳もあるけど、誤訳もある。例えば、 The slander of some is as great a recommendation as the praise of others. HENRY FIELDINGに対する、 他人を中傷できる人は 賞賛するとおなじ 凄い才能の持主という江間氏の訳などは、意訳なのか誤訳なのか微妙。逐語的に訳すと、 ある人々からの中傷は 他の人々からの賞賛に 匹敵する推薦となるなんだけど…。もう一つ。 One bad general is better than two good ones. NAPOLEON BONAPARTEは江間訳では、 腕ききの将軍二人? 必要ないね 俺には 取り柄のない将軍一人 ついていれば十分だ と ナポレオン・ボナパルトが 言ったンですってになってます。ナポレオンがどんな場面でいった言葉かは知らないけど、原文の字面だけを読んだら、 船頭多くして船山に登ると同じ意味の格言にしか見えませんが…。 二人の名将より一人の愚将という訳もあるようです。自分なら、 子猫たちの引率は 私一匹で十分みたいな意訳をつけたでしょう[上の写真参照]。なかなか面白い本でしたが、和訳によって原書のニュアンスが損なわれている点があります。翻訳書すべてに言えることですがね。