殺し屋とストロベリー 総評(ネタバレなし)
主に購入を迷われている方向けのネタバレなし感想です。体験版をプレイして雰囲気が好み&真相が気になる世界観だったので購入しました。【世界観】舞台は現代日本のとある街。薬で眠らされ、ジュラルミンケースに入れて運ばれてきたヒロインが目を覚ますと、そこは『月影』と言う名の喫茶店だった。喫茶月影は裏社会に存在する店で、マスターもウエイターも本業は殺し屋。店の裏には闇医者の診療所付き。出入りする客も裏社会の人間ばかりだという。ヒロインがそこへ運ばれた理由は護衛対象であるからという説明を受け、声も感情も失い身寄りのないヒロインは、半信半疑のままウエイトレスとして身を置く事になる。喫茶月影で働き集う人々と交流しながら少しずつ感情を取り戻し、最終的に自分の境遇を解き明かすストーリーです。【キャラクター、グラフィック】メインのキャラデザはカズキヨネさん。乙女ゲーム大手の看板作品を担っていた方ですので、ご存知の方も多いかと思います。攻略対象は個性豊かな6人、その他のサブキャラも非常に魅力的です。特に瞳の塗りがとても綺麗で、どのキャラもついつい目に見入ってしまいました。ヒロインが唯一の10代で周りは全員大人なので、属性はそれぞれですがとにかく年上が好き!という方は是非。一番近くても20代前半、10歳程離れているキャラも複数おり、おすすめです。立ち絵はメイン6人は服装、ポーズ、遠近の見せ方などそこそこ豊富です。横顔がちょっと微妙なキャラもいますが見慣れれば気にならない程度。目パチ、口パクあり。スチルはキャラによって枚数の差があり、平均12枚位。立ち絵のクオリティよりバラつきが感じられましたが全体的にはキレイです。イズナや長谷川など筋肉質で体格のいいキャラは乙女ゲームだとしっかり描かれている事が少ないですが、予想に反して男っぽい力強さが見映えする出来の立ち絵やスチルがあり嬉しい誤算でした。背景は使い回しやチープ感はほとんどなくシナリオのシーンに沿って様々用意されていました。また、ヒロインのイチゴがとても可愛らしく差分が大量にあり、ヒロインのキャラデザが気に入れば髪型、服装などの変化も楽しめると思います。名前は設定上本名を名乗れないのでデフォルト名のイチゴで固定です。CVなし、顔グラなし、単独スチルあり。失声症で最初のうちは感情もほとんど失っているお人形さん状態なので、突飛な言動をしてイライラする事もありません。おとなしく健気なヒロインで、見た目の可愛らしさもあって非常に好きになりました。ただし、リアルでメンタルの調子が良くない、診断を受けている方は見ていてしんどい可能性もありますので、そこは要注意かもしれません。【攻略】・攻略制限ツキミ、イズナ、クラマ、ノイン、アモン、長谷川の6人のうちノインに攻略制限があります。ノインは他5人の恋愛EDをクリアするとルート解放されますので、実質真相ルートと言いたいところですが…各々のルートでないと拾えない情報が結構あるので、大団円的な位置付けではないと感じました。・攻略推奨順私はイズナ→アモン→ツキミ→長谷川→クラマ→ノインの順で攻略しました。コンプ後の感想としてイズナorアモン→ツキミor長谷川→クラマ→ノインがおすすめです。以下に感想を含めて理由も記載します。【イズナ、アモン】イズナとアモンは真相にほとんど触れないので前半推奨です。対になっている部分があるので、連続でプレイするとそれぞれお互いをどう思っているかが分かって良かったです。イズナは乙女ゲームのシナリオとして比較的王道だと思うので最初にして正解でした。イズナをクリアするとアモン側の胸中が気になると思うので次はアモン。【ツキミ、長谷川】ツキミと長谷川はヒロインの過去、境遇に一歩踏み込む部分があるので、その後に。月影内から片付けようと思いツキミを先にして、他ルートだと出番の少ない長谷川がどう展開するか気になり長谷川へ。後半の展開が月影2人&アモンと結構異なるのでこの順でも良かったですがこの後のクラマルートでツキミが結構絡んでくるので、長谷川→ツキミでも良かったかもしれません。【クラマ、ノイン】クラマはほぼ真相が明らかになるので5周目、最後にルート解放されたノインへ。※特にクラマのBAD EDはノイン攻略前に見ておくのがおすすめ!真相バレは気にしないというのであれば、5人誰からでもいいと思います。おまけのアフターストーリーは他キャラルートや真相の盛大なネタバレが含まれますので、コンプ前に推しが決まり後日談が気になっても、コンプしてから開く事を強くおすすめします。・攻略法、ルート分岐など共通ルートは短く、読み終えると任意のキャラを選択して個別ルートへ入るので易しい設計です。個別ルート内は一本道シナリオでエンディング分岐のみ、2種類です。愛キャッチがついていますので、選択肢が出たらクイックセーブ&ロードを使って正解を選んでいけば問題なく恋愛EDへ到達可能です。もう1種類のEDはスキップ最大速or選択肢スキップで愛キャッチを外せば簡単に回収可能。また、一本道シナリオなので初手はわざと選択肢を外して恋愛EDを後回しにする事も容易です。スチルと未読も選択肢を両方選んでいけば全て埋まります。特に中盤〜後半推奨キャラは恋愛EDでない方にも伏線的な要素があるので、全員の恋愛EDを見てからまとめて回収するよりは、1人ずつ両方のEDを見ながら攻略していく方がおすすめです。【糖度、シナリオのボリューム】まずヒロインが感情を失っているところからのスタートなので、ほとんどの場合相手への特別な感情が芽生えるまでやや時間がかかります。その代わり自覚したらしたで結構ストレート。キャラによっては相手側から先に興味や好意を示してくるのですが、エンディング手前までは微糖そのものです。ヒロインの境遇と立ち位置の関係上、基本的に優しく大切に守られる扱いという点はほぼ共通しているかなと思いました。CERO Cは裏社会のお話なので、流血沙汰故です。恋愛EDと後日談はキャラによりますがリップ音が入ってたりそこそこ甘めなシーンもあります。喫茶月影に運ばれてからエンディングまでの期間が非常に短いので、シナリオのボリュームは控えめ。サクッとプレイできます。その短い期間の中でもヒロインの感情変化はほとんどのルートで段階を踏んで丁寧に描写されていました。相手側の心情変化はやや急激な右肩上がりに感じるかもしれません。ネタバレにならない程度に記すと、それだけヒロインが彼らにとって興味を引く存在であるという点は納得できました。後日談がフルボイス4章とかなりボリュームがあるので、これにより様々な面でかなり補完されていると感じました。これはSwitch版の大きな利点だと思います。あるのと無いのとではゲーム自体の印象が相当変わると感じる程の濃度でした。駆け足気味だった本編を補うように世界観やキャラの深掘りがしっかりできており、どのキャラを読んでも本編の総まとめ的、オールスター大団円っぽい雰囲気かも。【システム】複雑な分岐は無いので標準的なノベルゲームのシステムとして十分だと思います。強いて言うなら選択肢スキップは選択肢ジャンプではないので次の選択肢へはジャンプできますが、前の選択肢にはジャンプできないので、クイックセーブ必須です。バックログから戻ってもいいのですが、シーンによって選択肢後の会話変化が結構長い事もありますのでクイックロードの方がラクです。他に特筆するとすれば、ボタン配置を変更できるのが便利でした。スチルコメントやシーン再生はありません。チャプターリストから任意のシナリオを再生できますが、例えばAを再生するとB→Cとどんどん進んでいってしまうので、イベントリストというよりフローチャートに近いかもしれません。【主題歌、BGM】喫茶店での日常を背景としたジャズ調のものから、真相に迫るシーンにぴったりのミステリアスなものまでどれもシナリオを盛り上げてくれていました。OP及びED曲は、本作が気に入ったら是非とも歌詞を読んでいただきたいと思います。配信DLも可能です。私は買いました。笑コンプ後に歌詞を読みながらフルで聴くと作品の余韻に浸れてとても良かったです。【総評】雰囲気とキャラクターが大変気に入っているので私はとても好きなタイトルなのですが、フルプライスだとややボリュームに欠ける、金太郎飴気味、裏社会モノというより喫茶店モノ寄りというのは否めません。その代わり、紅茶やコーヒー、スイーツ、軽食がとっても恋しくなるのは必須です。笑私はもう少しほのぼのした作風と思っていたせいで、ヒロインの境遇も相まって想定外に重たく感じました。逆に、ゴリゴリの殺伐とした血生臭い裏社会シリアスを期待した人には肩透かしになるのかな?中盤までほぼ喫茶月影内のシーンに終始し油断していると、後半〜エンディング手前で急展開になりハラハラします。どのルートも必ず起こる出来事があり、大筋のストーリーはそこまで変わらないのですがどのキャラと一緒にいるかによって同じ出来事でも展開が変わったり、違う角度から見られたり、という点で満足しています。みんな大好きでなかなか推しが決められませんが…期待通り癒されたのがツキミとイズナ。一番ギャップ萌えできたのはクラマ。超絶ダークホースは長谷川でした、シナリオが一番好み。後日談を含め異色さではアモンがダントツ。ノインは攻略制限があるだけあって、バレになるので書けませんが特別感がありました。サブキャラのラキアはビジュアルがどストライクなのでもうちょっと絡みたかったです。スマホのケースを赤に変えた程お気に入りのタイトルになりました。まず体験版を触ってみて雰囲気が気に入ったら是非検討してみてくださいね。セーブデータの引き継ぎ可能です。コンプ後に聴けるキャスコメも皆さんノリノリでお話して下さってて楽しめました。・余談女性の方では少ないと思いますが、ミリオタさんやFPS系が好きな方はキャラ同士が銃器諸々の会話をするシーンなんかで結構クスッと笑えるかもしれません。コーヒーやスイーツの蘊蓄もまあまあ出てきます。マイナーめなタイトルはこういうマニアックなところが異様に凝っているのが好きですね。