吉原彼岸花 総評(ネタバレなし)
主に購入を迷われている方向けのネタバレなし感想です。真相ありの良シナリオ、大人向けの糖度もしっかり。ヒロインの職業に抵抗が無ければおすすめできるタイトルです。【世界観】舞台は江戸時代の吉原。稼ぎ頭の花魁であるヒロインの千早(源氏名:変更不可)は楼主や妹分の禿、親友と呼べる同僚に囲まれ苦界と呼ばれる世界でも気丈に生きてきた。本当の恋を知ってしまったことで時代の激動に飲まれていく、シリアス色の強い重々しい物語です。【キャラクター、グラフィック】6人の攻略キャラがおり、各々性格や置かれている立場、ヒロインに向ける感情が異なる為、シナリオ展開は三者三様。スチルや背景含めグラフィック全般が綺麗なので、R18からの移植ではありますがとっつきやすさはあると思います。目パチや口パクはありませんが、会話中に表情が変わるのであまり気になりませんでした。ヒロインは本名のみ変更可能で源氏名は変更不可、源氏名のみデフォ呼びあり。CVと顔グラはなしでスチルにはがっつり。苦界の吉原で上り詰めた花魁という事もあり、基本的には切れ者でそつのない女性。本人はこの世界に頭までどっぷり浸かっていると言いますが、恋に落ちると年相応の可愛らしさもあり好感度の高いヒロインでした。【シナリオ、糖度】ルート判定の共通章から個別に分岐し、十一~十四章ほどですが、一章ごとのボリュームは控え目なのでプレイ時間があまり取れない方にもおすすめ。女性向けADVとしては文学色の強いやや硬派なテキストで、初見はキャラクターの話す廓言葉や吉原の専門用語などが頻発する為、慣れるまで読みにくさを感じた部分もありますが、共通ルートが終わる頃には世界観に入り込めていると思います。ごく一部のキャラクターを除き、約半数が“好きになってはいけない相手”という事もあり、中盤まで比較的順調に思えても必ず何らかの壁が立ちはだかります。バッドエンドも充実しており、シリアスタイトルでは鉄板かと思いますがベストエンドが必ずしもハッピーエンドと呼べるかは読み手側の感性によるところが大きいと感じました。特に攻略制限のかかっているルートは非常に重たいので、好きな方には良いでしょうがご都合でももう少し幸せにしてあげたかったというような幕引きも少なくありません。また、歴史考証に関しては詳しい方でもほぼ心配ないと思います。【攻略】・攻略制限一部キャラクターとエンディングに制限があります。惣一郎…ベストエンドに制限あり→他5人のベストエンド読了で読了でベストエンド解放時雨…真相ルート、エンドに制限あり→惣一郎のベストエンド読了で真相ルート、エンド解放辰吉…ルート自体に制限あり→惣一郎のバッドエンド読了でルート解放・攻略推奨順惣一郎のベストエンド→真相ルートは制限の都合上必ず最後になります。惣一郎は条件を満たすまでバッドエンドにしか分岐しませんが、読了すると辰吉を攻略可能になるので、どうしても辰吉が気になる方は惣一郎からでも良いと思いますが前半推奨のキャラのルート中にも様々な伏線が張り巡らされているので、個人的にはいきなり特攻するより少しずつ紐解いていくのがおすすめ。筆者は朔夜→彰人→忍→時雨→惣一郎BAD→辰吉→惣一郎BEST→真相の順でプレイしました。個人的なおすすめは朔夜or忍→彰人→時雨→惣一郎BAD→辰吉→惣一郎BEST→真相です。【システム】同じプロトタイプさんのPC移植・蝶毒をプレイ済の方であればほぼ同じですので勝手はわかると思います。やや不便に感じた点はスキップ速度の調整不可な点と、ボタン配置のカスタムがあと一歩なところ。それ以外は比較的細かいカスタムが可能ですし、選択肢ジャンプがあるので共通周回やBAD回収も快適です。【BGM、UIなど】吉原が舞台ということもあり、雅な雰囲気を壊さないUIや、和の旋律で奏でられるキャラクターBGMなどどれをとっても世界観にぴったりでした。【総評】誰とどんな結末を迎えても、こんな事がかつて日本のどこかで本当にあったのかもしれない…と感じられ、闇の深い廓の世界にどっぷりハマることができました。ごく一部のエンディングを除きご都合的な展開はほぼないので、胸の詰まるような幕引きを迎える事も多々。かの時代の遊女が無事に年季を明けて外の世界へ出られる事は決して当たり前の事ではなく、かといって請け出された=幸せと言える事も決して多くはなく、一握りの運に恵まれた女性だけでした。加えて攻略キャラの半数が許されない恋の相手です。このことを踏まえて、歯応えのあるシリアスタイトルを手に取ってみたい方にはおすすめします。蝶毒よりも濡れ場のシーンはテキストで上手く補えていたように感じました。キャラによっては結ばれるまでに時間こそかかりますが、糖度高めを期待している方にもおすすめ。ボリュームとしてはコンプリートまで30時間ほどですが、内容が濃いので満足度は高かったです。vitaより追加要素も多めですので、今からプレイするなら是非Switch版を。