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元SF小説家・春橋哲史のブログ(フクイチ核災害は継続中)

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2015.11.16
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カテゴリ:カテゴリ未分類

 11月13日の定例会で、原子力規制委員会は文部科学省に対して、高速増殖炉「もんじゅ」の運営主体を変更するように、文部科学省に勧告しました。

 今回は、その件について書きます。

 11月4日の第39回原子力規制委員会では、「議題1」として、田中俊一委員長が「もんじゅの運営主体」についての「委員長私案」を読み上げ(資料配布は無し)、他の4人の委員の賛同を得ました。その上で、13日の第40回委員会で事務局(規制庁)が勧告文書案を提出し、5人それぞれが賛同を表明しました。その日の内に、田中委員長から馳文科大臣に勧告文書が渡されたそうです。

 私は、11月4日の委員会を傍聴し、13日の「本番」は動画で視聴しました。

 もんじゅの保安検査の結果等は委員会定例会でも度々報告されていましたし、私が初めて原子力規制委員会を傍聴した際には、たまたまですが、日本原子力研究開発機構の松浦理事長(当時)自らが説明者として出席し、「もんじゅは理事長直轄にしました」「機構の内部をこれこれのように変えていきます」「松浦宣言を出しました」等、色々と説明していたので、もんじゅや日本原研の件が規制委員会で取りあげられる度に、個人的にも興味・関心を持って見てきました。

 文科省への勧告という決定で、日本原研に関する一連の動きは、節目を迎えたと言えます。今後の行方に関しては、文科省の判断なので、予断を以て書けませんが、私が、原子力規制委員会の行動で注目したのは、文科省への勧告以上に、特定重大事故等対処施設に関する議題についてでした(13日の第40回原子力規制委員会で決定)。

 その前に、先ず、第39・40回委員会への動画と資料へのリンクです。

第39回原子力規制委員会・資料一覧

同・動画(約80分)

第40回原子力規制委員会・資料一覧

同・動画(約70分)

 第40回委員会では、文科省に対して「もんじゅ」の廃炉に繋がりかねない勧告を決定すると同時に、既存の原発に設置されるべき特定重大事故等対処施設(以下、「特重」と略)の設置期限を大幅に後ろ倒しする提案があります(議題4の資料)。

 特重とは、免震重要棟やベント施設等のことで、シビアアクシデント(過酷事故)に備えたものです。フクイチ事故を教訓に規制基準の中に盛り込まれましたが、2018年7月7日までに設置すれば良いという経過措置が盛り込まれていました(新規制基準施行日から5年間)。

 今回の提案は、5年間の年限は変えずに、起算点を大幅に後ろ倒しする事で(本体施設の工事計画が認可された日を起算日とする)、設置期限を大幅に先送りするものです。パブコメを募集するという決定ですから、正式決定ではありませんが、事実上の決定と見て良いでしょう。

 原子力規制委員会は、元々の期限である18年7月7日まで2年半を残しているにも関わらず、「現時点での適合性審査の進捗」から、大幅な先送りが妥当と判断したことになります。審査の進捗が遅れているのは、事業者の資料提出や説明の仕方にもよるのでしょうから、事業者の責任も有る筈ですが、13日の会議では事業者の責任には触れられず、各委員から、「規制委員会側の見通しが甘かった」と反省の弁ばかりが並べられています。誰に追及された訳でもないのに、この卑屈とも言えるべき言動に、あざとさを見るのは私だけでしょうか?

 議題1では「安全」に対して厳しい文言を並べているのです。同じ会議とは思えません。

 原子力規制委員会は、第40回定例会で、政治的な動きをしていると思います。即ち、「もんじゅ」にはブレーキを踏み、既存の原発の再稼動にはアクセルを踏んだのです。言い換えるなら、原子力ムラの中で「もんじゅ」だけを孤立させた訳です。私は、文科省への勧告と特重の設置期限延期はセットで見るべきと思います。恐らく、規制委員会の狙いは次の点でしょう。

1.「もんじゅ」を叩き、特重の期限もそのままでは、政界・財界・報道から「原子力規制委員会は厳しすぎる」と、政治的な集中攻撃を受ける恐れがあるので、最も危険性が高い「もんじゅ」だけを狙った。

2.法的拘束力の無い「勧告」にとどめたのは、国策である「もんじゅ」を潰せば、文科省だけではなく、核燃サイクルを含む原子力政策を推進している経産省とも対立することになり、規制委員会が政治的に潰される可能性が高いので、それを回避した。

3.勧告内容も「運営主体の変更か、廃炉」であり、何れの選択を取るにしても、文科省の責任になり、政治的な責任を文科省に押し付けることに成功した。

4.仮に、文科省が原研に代わる組織(例えば、関西電力や日本原電)に「もんじゅ」を委ねたとしても、新組織の管理の元で問題が起きれば、組織を選定した文科省の責任にもなり、今後、文科省は規制委員会に頭が上がらなくなる(規制委員会の政治的優位性)。

5.「もんじゅ」が廃炉に追い込まれるとしても、勧告を受けた文科省の判断となり、原子力推進の中心である経産省との調整・対立も文科省が行うことになる。規制委員会はそれには関与する義務は無く、政治的な問題に巻き込まれない。

6.既存の原発の適合性審査(事実上の再稼働に向けた審査)に関しては、可能な限り緩和するというメッセージを発し、文科省側に立って規制委員会を政治的に批判・攻撃する勢力が表れるのを事前に防いだ。

 孤立した文科省は、今頃、「やられた」と思っているでしょう。法的拘束力の無い勧告ですから、無視もできますが、それで「もんじゅ」が問題を起こしたら、規制委員会の勧告を聞かなかった文科省が叩かれる訳で、文科省には、政治的に逃げ場がありません。

 私はつくづく、原子力規制委員会の決定は政治的に見事だと思います。賛否はともかくとして、巧みと言うか、したたかと言うか。

 規制委員会が政治的に絶妙な判断を下したのは今回だけではありません。2014年春に、フクイチでの凍土方式遮水壁の建設を認めるか認めないか議論になった時、更田豊志委員は「着工を妨げるものではない」という言い回しで、着工を認めました。その結果、14年6月にボーリングと打ち込みが始まり、15年11月に完了したのですが、更田委員は凍結開始は認めておらず、地下水の水位管理ができるかどうか見極めるという立場です。

 国費が投入され、安倍総理と経産省がぶち上げた凍土壁ですから、認めない訳にはいかない。かと言って、地盤に悪さをする可能性も否定できない。そこで、「着工を妨げない」という言い方で、出来るところまで進め、最終的な判断は実証性を盾に留保している訳です。

 私は、規制委員会の「政治的なしたたかさ」は侮れないと思います。原発再稼動を推進し、低線量被曝の影響を無視し、原子力ムラを守る為の規制という前提は踏まえつつも、原子力ムラや政治の言いなりではないというしたたかさです。しかも、自らを政治的に防御する術を講じつつ、行動しています。誰かの入れ知恵か、それとも田中委員長の判断か。或いは更田委員でしょうか?

 何れにしても、原子力規制委員会は、淡々と再稼動に向けた道筋をつけていくだけの「下請け」ではないということです。やはり、目が離せません。私は今後も、傍聴し、チェックを怠りません。

春橋哲史(ツイッターアカウント:haruhasiSF)






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Last updated  2015.11.17 04:22:08
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