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カテゴリ:福島第一原発 汚染水
当記事は、前回の「緊急アップ! フクイチのトリチウム水に関する説明・公聴会の情報」とセットでお読み頂ければ幸いです。
経産省は、何故、トリチウム水の最終処分に関して「公聴会」を選んだのか 当ブログで前回記事に書いたように、経産省は、フクイチ(福島第一原発)で増え続けるトリチウム水(ALPS処理水)の最終処分方法・時期に関する説明・公聴会の開催を決定しました。 私は、5月の第8回小委員会を傍聴し、資料も確認して「公聴会」という文言を見た時、経産省のサイトを調べ回った時のことを思い出し、ピンとくるものがありました。 核災害によって発生し続けている放射性廃棄物の処分は、日本国内では前例の無いことでもあるので、経産省は、海外の事例を参考にしたものと思われます。 世界で唯一、核災害によって発生したトリチウム(三重水素)を意図的に環境中に放出した例が、1979年3月にアメリカ合衆国で発生したスリーマイル原発事故です。 この事故の際は、1991年から93年にかけて、凡そ8500t・約24兆ベクレルのトリチウム水が煮沸処理(大気放出)されました。恐らく経産省は、その際の意思決定プロセスから学んだのでしょう。 経産省は、年度毎に、外部機関に様々な調査を委託しています。 委託調査報告書のご案内(経産省のサイト。年度毎にクリックするとPDFファイルが開き、調査報告書を個別にダウンロードが可能) 私が上記サイトから調べたところ、過去の原発事故(チェルノブイリ・スリーマイル)と、トリチウムを含む放射性廃棄物の扱いに関して、2つの報告書が見付かりました。下に直リンクを張っておきます。 「平成23年度発電用原子炉等利用環境調査(スリーマイル島及びチェルノブイリ原子力事故等に関する調査)報告書」 (2012年3月・財団法人「エネルギー総合工学研究所」/担当課は「資源エネルギー庁原子力政策課」) 「平成28年度実用発電用原子炉等利用環境調査(トリチウム水の処分技術等に関する調査研究)」 (2017年3月・株式会社「三菱総合研究所」/担当課は「資源エネルギー庁電力・ガス事業部原子力政策課原子力発電所事故収束対応室」) スリーマイル島原発事故で発生したトリチウム水が煮沸処理された事や、その承認プロセスに於いて公聴会が実施された事は、2012年3月に提出された報告書に記載されており、より詳細な経緯は、2017年3月に提出された報告書に記載されています。 私は、フクイチ事故のトリチウム水の最終処分方法・時期に関して、経産省が「公聴会」という手法を採用したのは、スリーマイル島原発事故の経緯を把握し、それを参考にした上でのことではないかと推測しています。 スリーマイル原発事故に於ける、トリチウム水の煮沸処理(大気放出)に至る経緯 それでは、スリーマイル原発事故が起きた後、トリチウム水の扱いはどのようなプロセスを経て決定され、実行されたのでしょうか? 先の委託報告書で、三菱総研が2017年3月に提出したものに詳細が記載されていたので、それをエクセルでまとめたものを下記に掲載します。 無断転載・利用は御遠慮下さい。 資料 スリーマイル原発事故後の、トリチウム水処理に関する動向 情報を独占しようとする経産省と、機能していない国会 ここから先は、私見です。 フクイチのALPS処理水をどうすべきか、ここでは私見は論じませんが、経済産業省のやり方は、「国民の為の省庁」とは思えないものです。国民の納めた税金を遣って専門機関へ調査を依頼し、その成果はひっそりとWebサイトに掲載しているだけです。「多核種除去設備等・・・小委員会」へも公開・提出していません。 私が経産省の委託調査に気付いたのは、全くの偶然です。トリチウムの情報をネットサーフィンしていたところ、やたらと詳しく記載されたPDFファイルが引っ掛かったので、様々な文言で検索をやり直し、経産省の委託調査に辿り着きました。 国民の税金を遣って、国民生活に関わりのあることを調べているのですから、その成果は積極的に公開し、国民と情報を共有するのが民主主義国家として、当たり前の事でしょう。やっていることは正反対で、判断材料となる過去の事例を自分達だけ収拾し、情報を事実上独占しています。 経産省としては、「Webサイトに誰でも見られる形でアップしている」と反論するかも知れませんが、委託調査なるものが知られていませんし、仮に、国民が年度毎の調査一覧に辿り着いたところで、40行前後の項目の中から、題名と担当部署名だけで、目的の調査を探り当てるのは至難の業でしょう。 到底、「国民に知らせよう」という姿勢ではありません。 又、輪をかけて情けないのが国権の最高機関たる国会です。本来、経産省の行っている委託調査のような事は、国政調査権を使って国会が実施し、その成果を主権者たる国民と共有すべきです。 私は、経産省の委託調査のリストが膨大であることに驚きました。 この国は、「行政主導」から抜けられないのですね。行政機関が綿密に調査し、国権の最高機関よりも多くの情報を持っているのでは、国会が「国権の最高機関」として機能するのは困難でしょう。 この国のガバナンスは、3.11を経ても変わっていません。 些か、話が大きくなってしまいました。元に戻しましょう。 スリーマイル原発事故後の経緯については、今まで知らなかったので、三菱総研の報告書は勉強になりました。 今後も、「多核種・・・小委員会」では、取り上げられていない情報を当ブログでも発信して参ります。 8月末の説明・公聴会に向けて、どれだけ多くの主権者・国民が一人称で声を上げるでしょうか? 核災害を起こした国の主権者としてのありようが、問われます。 春橋哲史(ツイッターアカウント:haruhasiSF) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2020.12.13 10:21:11
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