すべての学習は、遊びの中にある○ 多湖 輝 千葉大学名誉教授 幼児開発協会理事長 (心理学)すべての学習は、遊びの中にある 一般に日本人は、「遊ぶ」ことがきらいなようです。昔から、「遊び人」といえば、アウトローを意味していましたし、ハンドルの「遊び」と言えば、一見、無駄な空白の部分のことを指すように見えます。 「遊び」は、「仕事」とか「まじめさ」の反対語として、あまりかんばしくないイメージを、日本人の中にもっています。 たしかに、遊びは、現実からの逃避とか、憂さ晴らしとか、役にもたたないものに余分のエネルギーを消費するとか、好ましくない一面もあります。 しかし、一方、遊びの中には、その人しかわからない喜びや楽しみがありますし、時にはスリルがあります。遊びには、儀式や習慣にとらわれない心の自由があります。 これは、創造活動とは言わないまでも、それに酷似した体験だと見ることもできるのではないでしょうか。 とくに、子どもの場合、すべての学習は、遊びの中にあると言っても言い過ぎではありません。勉強と遊びをはっきりわけて、そこにケジメをつけようなどと思うのは大人の発想であって、子どもにとっては勉強も遊びも区別があるはずはないのです。 遊びのもつ自発性こそ、頭をよくする素 子どもが楽しみながらやれるということは、別な見方からすれば、子どもの自発性が、フルに発揮されているということになります。私は、こうした学習における自発性を、ことさらたいせつだと考えています。 これも、私たちの日常経験で明らかなところです。私たちの勉強で、真に身に付くのは、自分が自発的にやろうと思って手がけたことだからです。 これが、なんの問題意識もなく、ただ、親に言われ、学校に通っている子どもでは、何をやらせても、身に付くはずはありません。 そこで問題は、いかにして、自発的にすすんで、勉強しようという気持ちを起こさせるかにかかってきます。 ところで、こうした動機付けの原理として、心理学ではしばしば、賞と罰の効用が論議されます。成功したら、ほうびを与え、失敗したら罰を与えるという強化法です。そのいずれもが、外からのエサやムチで動機づけを行うので、「外的動機付け」と呼ばれています。 これに対して、学習者自身が、学習そのものに興味をいだき、自発的に学習を進めて行くのが、「内発的動機付け」と呼ばれるものです。 学習効率がよいのは、むろん、この「内発的動機付け」が成功しているときということになりますが、子どもの遊びながらの学習というのは、まさに、内発的動機付けが、完全に行われている状況なのではないでしょうか。 子どもの頭を良くする最大の条件は、子どもの血となり肉となったさまざまな能力の基礎づくりをしてやることです。 そして、その最大の近道は、子どもが楽しみながら学ぶということであり、それは遊びの中でこそ、もっともよく達成されるものです。 ジャンル別一覧
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