はてなのゆりさん

　

今年３５歳になる息子が、お腹にいるときに
読んだ講演録で 原発の怖さを知りました。

出産前に原稿をまとめて、出産後に発行‥
宇宙はてない社発行の 初めての印刷物です。





1976年１０月　発行

絵と文　清水ゆり子




この絵本に出てくる主人公たちです。




ウラン２３５が燃えると、その分の【死の灰】ができます

エネルギー不足を解消するために‥ということで

原子力発電所が いくつも つくられています。　

原子力をエネルギーの中心にした社会は、

言われているほど良いものなのでしょうか？

どんなに最新の技術を用いたとしても、ひとたび

原発が動けば、電気と一緒に大量の【死の灰】や

毒性の強い【プルトニウム】も できてしまいます。　


原子力発電の燃料となるウランには、燃えるウラン235と

燃えないウラン238があります。　ウラン235が燃えると、

それと同じだけの【死の灰】ができます。　１００万ＫＷの

原発を１年間稼動させるには１トンのウラン２３５が必要

ですから、【死の灰】も １トンできます。　広島上空では

約１ｋｇのウラン235が 瞬間的に燃えたと言われていて

１トンは、その１０００倍ということになります。






ウラン２３８が中性子を吸収してプルトニウムになります

原子炉の中で、燃えないウラン238の

一部が変化して、２５０ｋｇのプルトニウムも

つくられます。　これは長崎に落とされた原爆

（原料はプルトニウム）の５０発分になります。

原子炉の中で ウラン235に 中性子がぶつかると

二つの原子核に分れ、２～３個の速度の速い中性子と

熱とがつくられます。　この現象が≪核分裂≫で、

新しくできた原子核が【死の灰】、つまり

自然界にはなく、人工的に つくり出された

多種類の 放射性物質ということになります。

核分裂でできた中性子を 効率よく利用するため

≪減速材≫で 中性子の速度を 落とします。　

この中性子を 燃えるウラン235が吸収して、

連鎖反応的に 核分裂を くり返します。






核分裂は 水の中でおこなわれる

核分裂によってできる熱で、タービンをまわして

電気を起こすのが原子力発電です。発電炉には

いろいろな型がありますが、東海１号炉を除いて、

日本ではアメリカ生まれの軽水炉を用いています。

軽水炉は、減速材と冷却材にふつうの水を使います。

原子炉の中には、うすい金属のサヤで包まれたウラン

燃料棒が、直径約１ｃｍ、長さ４ｍ位の大きさで

束にされ、約１～２万本も挿入されています。

燃料棒の間を、減速材と一次冷却材をかねた

水が流れていて、核分裂がおこなわれます。






くり返される 原因不明のままの事故

１００万ＫＷの原発一基には、核実験によって、

これまで地球上にばらまかれたストロンチウム90

の約半分が入っています。１００万ＫＷというような

大型炉は、運転を始めてから日が浅いため、日本では

大量の死の灰が外に漏れるような大事故は まだ起きて

いませんが（1976年当時）、 小さな事故は たくさん

起きています。 現在（当時）、日本の約５倍の原発が

稼動しているアメリカでは、事故の報告が１４００件も

あったのに、日本では１０件そこそこしかありません。

これは、日本の関係者が事故の表面化するのをさけ、

もみ消しているためと思われます。　しかも、日本には

大事故の原因を究明するための機関がないのです。






空だき事故を防ぐための、

緊急炉心冷却装置の有効性は未確認

発電炉が大型化されて、もっとも怖いのが原子炉の

空だきです。　ウラン235は、減速された中性子しか

吸収しませんから、減速材の水がなくなってしまえば

連鎖反応は自然に止まります。けれども水がなくなって

核分裂はおさまっても、炉は空だきの状態となります。

死の灰から出る熱で、水が沸騰して吹き出し、炉が

空になるからです。溶けてドロドロになった燃料棒は

底にたまって、原子炉の容器や、その土台に穴をあけ、

どんどん沈んでいくことが考えられます。　アメリカでは

地球の反対側の中国にまでいくかもしれないと冗談

めかして、チャイナ・アクシデントと呼んでいます。

このような空だき事故を 防ごうというのが、緊急

炉心冷却装置（ＥＣＣＳ）です。でもその有効性を

ためすアメリカでの実験は完全に失敗しており、

この装置がうまく作動するかどうかは、その時に

なってみなければわからないというのが実状です。







死の灰が 環境にもれたら どうなるか？

空だき事故で、格納容器が破壊されるようなことに

なれば、死の灰は外に飛び出します。大きな事故の

時だけでなく、普通の運転の時でも、煙突の排気や

温排水にまじったりして外に出ています。　煙突から

もれて、風で運ばれた放射能は、人間が 直接 あび

たり、吸い込んだりして、体内に取り込まれます。

検出器にかからないほどの微量でも、食物連鎖を

通し、生物濃縮を くり返して、濃度を高めます。

ストロンチウム90は、海藻などで60000倍にも

濃縮された例があります。

一方で、冷却水に使われた大量の温排水は

再び海に流されます。１００万ＫＷの原発ですと

２００万ＫＷもの熱が 海に放出されるそうです。







天然にある似た物質と同じところに集まります

たいていの死の灰は、天然にある物質と同じような

働きをします。カルシウムと似ているストロンチウム90

は骨にたまります。セシウム137は ナトリウムやカリウムと

よく似ていて 筋肉内に入りこみ、生殖細胞を照射すると

遺伝的影響が 大きいと言われています。

ストロンチウム90も セシウム137も、

寿命がとても長いので、体の中に

長い間、居つづけます。


≪つづく≫





【原発の絵本シリーズ】

≪原発いらない ニコニコ かるた≫ その２