本多俊之:Dinosax
作曲家、サックス奏者の本多俊之が還暦記念として製作したアルバム。「自身の音の集大成であり、未来への提案であり、大切なものへのオマージュ」とのこと。本多の趣味である“恐竜”を主題とする物語の一場面だそうだ。アルバムタイトルは、dinosaurs(恐竜)とsaxの造語だろう。トルヴェール・クヮルテット、川口千里、2つの高校生バンドが共演している。高校生バンドとの共演の狙いは、「吹奏楽でやるコンチェルト風ジャズ・フュージョン」楽しくユーモアのある音楽で、時折聞かせるスピード感のあるサックスソリなど本多らしさを感じさせる。ただ、高校生との共演を意識したのか、いまいち温いのが惜しい。その中ではトルヴェールも加わった「CRETACEOUS WIND」が哀愁を感じさせるキャッチーなメロディーで気に入った。トルヴェールとのアンサンブルは本多の作曲家としての良さが出ているし、演奏も、もう一人のトルヴェールみたいな感じで、アンサンブルに溶け込んでいて、演奏としてはバンドとの共演より数段上だ。こういうユーモアとのんびりした感覚を覚えるような曲は、本多ならではだろう。最後はサックス2本にピアノが加わって、静かに締めくくられているのも、気が利いている。いい曲が揃っているので、楽譜がリリースされたら、吹奏楽、サックス・アンサンブルとも結構流行りそうだ。本多のサックスは年齢を感じさせないパワフルなもの。川口は叩き過ぎでうるさい。櫻井のエレキ・ベースも、もう少し抑えたほうがよかった気がする。高校生バンドは技術的な綻びも感じられなかったし、立派な仕事をしたと思う。録音はポピュラー系の音場で、奥行きは感じられないが、曲にはあっていると思う。ということで、このアルバムはこの分野では飛びぬけて素晴らしい録音の一つなことは確かだ。少なくとも業界の皆さんには是非聴いて頂きたい。本多俊之:Dinosax(SEVEN SEAS KICC-1371)1.AMPLITUDE2.FEATHER TOUCH3.WADDLE-WADDLE4.THE TIME HAS COME5.IN THOSE DAYS6.TO THE SKY7.SEA FANTASY8.FILLED WITH TENDERNESS9.TACHIMACHI10.CRETACEOUS WIND11.うつろい本多俊之(as)櫻井哲夫 (eb 1,2,4,6,8)川口千里(ds 1,2,4,6,8,10)トルヴェール・クヮルテット(3,5,7,9,10)本多尚美(7,9,11)彦坂眞一郎(as 11 only)浜松海の星高等学校(W.Winds, Brass&Percussion 1,4,8)東海大学付属高輪台高等学校(W.Winds, Brass&Percussion 6,10)録音:2017年2-4月