結論から申し上げますと、純粋な医学的判断と法的判断は別問題です。仮に統合失調症と診断された患者が犯罪を犯したとします。この場合、本人が統合失調症患者であるかどうかではなく、行為当時、刑法39条1項の「心神喪失者」及び同2項の「心神耗弱者」の要件を充たすかどうかで判断されます。
ここで「心神喪失者」とは「精神の障害により、行為の是非を弁識し、またはこの弁識に従って行動する能力のない者」(判例)と定義され、「心神耗弱者」とは「精神の障害により、行為の是非を弁識し、またはこの弁識に従って行動する能力の著しく低い者」(判例)と定義されます。行為当時、「心神喪失者」であった者は処罰されず、「心神耗弱者」であった者は減刑されます。
ただし、統合失調症=心神喪失者又は心神耗弱者ということではなく、実際の行為当時の本人の状態により判断されます。ですから、普段異常でも行為当時正気に戻っていれば、刑法39条は適用されません。もっとも、統合失調症患者であれば、検察官は起訴を躊躇する可能性が高いです。
ところで、事前に「心神喪失者」又は「心神耗弱者」の状態を利用して犯罪を実行する意図の下に自らを「心神喪失者」又は「心神耗弱者」の状態に陥れた場合には同条は適用されません(原因において自由な行為)。 これは責任能力ある状態での故意に基づいて責任能力ない状態の自分を道具として利用していると解されるからです(間接正犯類似行為)。
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