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むかし、むかーしの話。 高山の三福寺峠というところに、化けギツネがおりました。 月夜の晩に木の葉をかぶってくるりんくるりんとさんべん回ればお殿様にも芸者にもあっという間に化けられる。 村人達をだましては、腹をかかえて笑っていました。 そんなキツネに腹を立てていたのが、峠の麓の小太郎だ。 気持ちの真っ直ぐないい若者で、 「人間様を化かすなんてなんて生意気なキツネだ!もう悪さできんよう懲らしめてやる!」 と、鼻息も荒く夕暮れた峠を登っていきました。 さて、峠についてしばらくあたりを眺めていたが、何も出てこない。 「はは~ん。キツネのやつ、おれが怖いとみえて逃げたんだな。」 ここにいても仕方がないと、小太郎は峠を下り始めました。 しばらく行くと提灯の灯火がひとぉつふたぁつと登ってくる。 「あれあれ、やつのお出まし、キツネ侍の行列だ。」 小太郎はそうつぶやくと、手頃な棒切れを拾い竹やぶに身を潜めて息を殺していました。 先頭の者が通りかかると 「この化けギツネめがー!」 と叫び、竹やぶからおどりでると、にぎりしめた棒切れでいやというほど張り飛ばした。 驚いたのは後続の者。 「すわ一大事、この無礼者が!」 と小太郎に飛び掛り、ついに首根っこを押さえつけた。 「拙者の供先を邪魔立てするとはどういう了見じゃー!!」 小太郎は、目を上げると息を飲んだ。 籠から出てきたのは、高山陣屋のお代官、水野高光様だった。 「しまった、間違えた。」 小太郎は血の気が引いた。 「なにっ間違えただと。どういうことだ、子細を申せ!」 青筋たてて水野様が詰め寄ると、小太郎は地べたに頭をこすりつけ、 「どっどうぞお許しを。実は毎晩この峠にキツネが出まして村の者が化かされて・・・・・・・。」 「無礼者!拙者をキツネ呼ばわりするのか。それもたわけた言いがかりをつけて、拙者の命をねらっておるのか。ええい、問答無用じゃ!」 言うが早いか水野様は刀を抜いて小太郎にせまった。 「お助け!」 もはやこれまで、小太郎はぎゅっと目を閉じた。 するとその時・・・・・・・ 「お待ち下さ~い。お侍様。」 麓のほうからかけてきたのは雲龍寺の和尚様。 「おお小太郎ではないか。どうしたというのじゃ。」 小太郎は地獄に仏といきさつを話すと、和尚様は、 「水野様、お怒りはごもっともでございますが、この百姓少々頭が足りません。あとでよく言って聞かせますのでここはひとつ、拙僧に免じてお許しを。」 と、頼まれた。 「切捨て当然の非礼、はらにすえかねたがご僧のしかたがあるまい。しかしけじめはつけねばならぬ。ご僧の弟子として頭を丸めるならば許してやろう・・・・・・。」 なんと次の朝、丸坊主になって木株をたたきお経をあげておる小太郎を村の衆が見つけてそれはもう大笑いだったそうな。 おしまい お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2012.06.08 12:01:20
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