|
カテゴリ:カテゴリ未分類
上宝の双六谷に弘法様がやってきて、山深いこの地に寺をたてようとなさったんじゃ。 山の木出しが始まるとな、村が急に活気づいたそうじゃ。 ところでこの谷には一匹のアマノジャクが住んでおってな、好奇心の強い性格じゃ、じっとしとれんでのぞきにいったんじゃと。 「お~いみなの衆。お寺を建てる材木じゃ、くれぐれもけがれのない様にな~。」 「へーい。」 大きな声が飛び交うとアマノジャクもそわそわしてきてな、目ん玉をくるっと動かすといつものくせで悪さがしとうなったんじゃ。 月夜に照らされたアマノジャクは喜々として、毎晩悪さをしては村人たちの困り果てた顔を見て喜んでおったと。 これはさすがの弘法様も頭をかかえてしもうたんじゃ。 そこで、ある晩、弘法様は夜があけるまで一心不乱に読経をされると、アマノジャクはみるみる力を失いしおしおと枯れていってな、なにもできんようになってしまったと。 そうしてやっとあと一日で予定の材木に達しようという晩のこと、弘法様は疲れた体にむちを打って、明け方近くまで頑張っておったがやれもう一歩じゃと思うとつい瞼がおちてなぁ、こっくりと舟をこぐと、その勢いではっと目を覚まされたんじゃ。 丁度そのとき雲に隠れておった月がさあっと顔を出して夜明けの様に明るくなると、知恵をしぼったアマノジャクは、 「コケコッコー」 と鳴きまねしたんじゃ。 すると弘法様はこれでもう安心と寝入ってしまわれんだと。 さぁ後はわが天下とばかりアマノジャクは大はりきり、なんとまぁ、ひしゃくで全部の材木にこやしを掛けて回ったんじゃ。 翌朝、これを見て肩を落とした弘法様は、何か呪文を唱えるとそのまま飛騨を後にされたんだと。 するとその材木は、下の方から岩に変わり、今もなお、双六谷にはその岩が残っているということじゃ。 おしまい お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2012.06.29 14:05:36
コメント(0) | コメントを書く |