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![]() ![]() むか~しむかしの話しじゃ。 細江村に緑色にしずむ淵があったんだと。 いつの頃からか、旅人がこの淵の中に吸い込まれてしまうという不吉なうわさがたってな。 ほとほと困ったとちんp郷士は、連日ともも連れずに落ち窪んだ目で調べまわっておったんじゃ。 ある日、見ておるとじりじり動いているようじゃ。 岩には亀甲の紋様がうっすらとうかんでおってな、どうやら大亀の妖怪らしい。 「そうか、こいつらだったのか。旅の者が岩かとまちがえて腰をおろすとそのまま淵にひきこんでおったんじゃな。」 郷士は大亀をぐっとにらみ、 「なむあみだぶつ」 と祈ると、腰の刀を抜き取り、、 「やあ!!」 ときりつけた。 「ギャアァァァァァァ・・・・・・・。」 体の芯まで凍てつくような叫びがあがり、郷士は返り血で全身ぐったりと濡れておった。 しばらくたって死んだ大亀が淵に浮かび上がると、この淵も以前のように穏やかな緑の淵に変わったんじゃと。 やがて、年月も流れこの郷士の「家に玉のような男の子が産まれ、正蔵と名づけられた。 そして、宝のように育てられたのだが誕生が過ぎても何も言わず、歩けもせんのじゃ。 ついに五年の月日が過ぎたが、うんともすんとも言わんままじゃった。 両親は悲しみにくれる毎日でな、まわりの者たちも心配しておったが何の手助けにもなれんかったんじゃ。 そんなある日郷士が子供を抱き上げあるイ涙をおとし、 「わが子よ、何の因果でこうなったんじゃ。我が家の家宝や名刀も血縁のない者たちにゆずらねばならんのか。」 というと、 「その宝物や名刀を見せてくれ。」 なんと口のきけん子供がしっかりとした言葉でしゃべるではないか。 郷士は、舞い上がって喜び、子供の前にすべての家宝をずらりと並べたんじゃ。 「さあ正蔵よ、そっくりと見るがよい。すべてはお前のものじゃ。」 すると正蔵はすっくと立ち上がり、宝を背負い刀を持つと呆然とした父親をあとに因果の淵へと向かったんじゃ。 その足の早いこと、早いこと。 父親のすがるのも振り切り吸い込まれるようにスウーッと淵に沈んでいってしまったんだと。 「正蔵ー、しょうぞーう。」 あとは父親の凶器がうずまくばかりじゃ。 それからいつしかこの淵は「正願坊」と呼ばれるようになったということじゃ。 おしまい ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2012.07.18 13:47:02
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