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還暦雲巣管理人独言(還暦を過ぎたウエブマスターの独り言)

還暦雲巣管理人独言(還暦を過ぎたウエブマスターの独り言)

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マル(アップ)-2



「マル」2003年11月11日、午前五時永眠




11月7日の夜、酸素室入院から退院して数時間は元のように元気だった「マル」も、

寝る頃には咽たり、息遣いも荒く、ゼイゼイ、呼吸も短く、特に眠ろうとすると呼吸が

しにくいらしく、うとうととしてもすぐに目を開いて、身体を動かし少しでも呼吸の

しやすい体勢をさがして、そんな体勢が見つかると、またウトウト、寝る時はオレが

ベッド、ヨメは布団、その間にペットのゲージの上を取っ払って下の部分にマットや

バスタオルを敷いて、そこを「マル」のベット代わりに、変則の川の字状態。


夜中に何度か、きつく咽返るとヨメが背中を摩ったり胸を撫でたり、8日、9日と

二日間はこの状態、ただ時折呼吸が物凄く楽になるような時があり、心臓の薬を飲み

だしてから1週間、ボチボチ薬の効果が出始めたのかなァ、淡い期待を抱くも長続きは

せず、一進一退、いや、確実に悲観的な方向へ。


毎朝6時半に目覚まし時計がなると、寒い時にはヨメの布団にもぐりこんだり、寝て

いるヨメの腕をかき出して、ヨメの腕を手枕にしたり、オレの脱いだ服の上や、部屋の

隅っこで寝ているのだが、その音で目を覚まし、寝ているヨメの枕もとで、

「オイ、オイ、起きろ」といわんばかりに肩をトン、トン、これが「マル」の一日の

始まり、起きたヨメは洗面を済ますと、まず散歩、このときにウンコとオシッコ、朝食、

その後オレが起きてくると、尻尾を振って朝の挨拶、ヨメがパートに出かけるときに、

「行くなよ~!」といわんばかりにひとしきりに吠えて、階段のところでお見送り、

その後は夕方まで、オレは1階で仕事、「マル」は2階で一人で過ごす、チャイムが

鳴ったり、郵便物や新聞やチラシがポストに入れられる時、午前と午後に豆腐やさんが

家の前を通り、その時のラッパの音、来客があるとき、そんなときに吠える以外は、

寝心地のよさそうな場所を見つけてはそこで昼寝、オレが2階に上がっていくと、起き

て尻尾を振ってお迎え、服を着替えだすとオレが外出するから、また嫌な留守番させ

られるといわんばかりにソワソワ。


服を着替えないと安心して、また居眠り始める、夕方近くに2階へ上がっていくと、

夕方の散歩と勘違いして大喜び、そのたびにオレは、「もう、チョッと待ってな」とか

「後でな」とか、たえず弁解、区切りのつたところで夕方の散歩、このときにウンコと

オシッコ、夕食、今度は玄関先の物音に神経を集中して、パートから帰ってくるヨメの

お迎えの準備、午後の10時くらいまではたえずオレかヨメのそばにまとわりついてい

るが、それ以後は眠くなってくるようで、眠くなってくると今度はかまわれるの嫌で、

少し離れた場所へ移動、ヨメが寝る時に、「マル、寝るよ」と言われると、置いてき

ぼりを食らわせれたら大変とばかりに、どんなに寝込んでいても慌てて起き上がり、

ヨメに抱かれて3階の寝室へ、これで「マル」の一日の終わり。


こんな普通の生活に戻れる日がキット来るとは信じながらも、9日の夜あたりから、

時折顔を天井の方に向けて、うつろな目で部屋を何度も、何度も見渡すしぐさ、それを

見ると、ア、ア、もうそこまできているのか、その時が。


11月10日の朝、いつもの時間どおりに「マル」は散歩、昨日は一度もウンコを

していない、今朝は雨という事もあってウンコがでない、その上に、いつもはあっ

という間に朝食を食べてしまうのに、手をつけようともしない、手のひらに載せて口に

持っていくが横を向いてしまう、水も掌からは舐めるようにして飲むだけ、昼に2階へ

上がって行くと、朝食は残ったまま、オレは自分の昼食が終わっても、先ほどから何度も、

何度も、鼻を天井の方に向けて、クン、クンと匂いをかぐようなしぐさをした後で、

空ろな眼差しであたりを何回も見渡すしぐさ、そのしぐさが気になってすぐに2階に

様子を見に上がる、そのたびいつものようにオレを迎えようと階段のほうに出てくる、

動くと息遣いが荒くなる。


夕方の散歩の時、相変わらず雨が降っているので、抱いて近所の公園へ、その公園の

真中の欅の樹、いつもはその根元をガリガリと掘ってから、数回くるくると身体を回転

させて、お尻を根元の方に向けてから、堅い目のオレの親指くらいの大きさと、その

半分くらいの大きさのヤツをコロンと、いつも同じ場所を掘っているから、窪みに

なってしまっていて、あいにくの雨で水溜りに、結局、ウンコは出ず仕舞い、何時も

どうりにヨメのパート先からの帰宅をお出迎え、そして夕食もまた手をつけず、仕方なく

心臓の薬を飲ますために、竹輪に薬を埋め込んでみると、これは何とか。

 
夕食後オレとヨメで、寝るまでの間、背中を撫でたり、胸や咽喉を摩ったり、時折、

呼吸が楽になるらしく、気持よさそうにウトウトと、12時くらいに3階へ一緒に上が

って変則的川の字状態で、スタンドの電気を消してから、しばらくの間、「マル」の

息遣いを伺っていたが、この数日間オレとヨメは熟睡していなかったからすぐに眠りに

ついてしまって、ヨメの「マル」という声で起こされて、急ごしらえのベットから出て、

ヨメの枕のそばで横たわっていて、その時にはもうすでに息を引き取っており、まだ

温かみの残っている身体をベッドに戻し、呼ぶと、ムクッと起き上がってきそうな、

いつもと全然変わらない表情の顔を覗き込みながら、二人とも言葉が出てこず、顔を

見合わせて、ウン、ウン、と互いに何度も何度もうなづきあうだけ、

11月11日午前5時。


最後は苦しくなってベッドから這い出して、ヨメに手枕をしてもらおうとして、途中で

息絶えたかのような様子、数日間徐々に衰弱して、息が苦しくなっても、入院させずに

いたことを決して悔やませないように、心遣いまでしたかのような、表情も身体も

苦しんだ様子を全く感じさせなく、まだ生きているのかと思わせるほど安らかで自然。


出来れば何時までも手元において置きたかったが、今日と明日のもう一日にだけは、

生きている時と全く同じよう話し掛けたりしながら暮らそうと決めて、ペットの葬儀社

に13日の午前10時に葬儀の依頼、オレとヨメと、息子の嫁と孫の「航大」の4人で

葬儀、30分後、2kg足らずの小さな、小さな身体に楽しい思い出が一杯につまって、

最後の別れ。


 楽しい思い出を有難う、「マル」よ、安らかに!。





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