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関係力(相対性)経済学RELATIVITY ECONOMICS

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ひかる0513

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2012.05.28
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  • DSC_0065carp nobori.jpg


5月5日。千葉の教え子の好意で、ニックに鯉のぼりを見せてもらった。山間の青空に泳ぐ鯉のぼり。彼は一生覚えているのではないかな。ぼくはつねづね日本人が5月の晴れた日に、空に巨大な鯉を泳がせるという発想が好きだった。

タイランドは「ほほえみの国」である。スワンナブーム空港から都心に向かう途中に、ゲートにウェルカム・トゥ・スマイリング・カントリーという文字が目に飛び込んでくる。ぼくは、このほほえみにどれだけほっとさせられるか。

なんとなく、あんまり証拠もなしに感じるのだが、日本は礼節とほほえみの国であると思っていた。あいさつはきちんとする。決して相手に不愉快な思いをさせないように言葉を選ぶ(あるいは禁句する)。柔らかい笑顔を絶やさない。

ところが、最近、これも、あんまり証拠もなしに感じるのだが、どれも、崩れているような気がする。礼節なんかどこかにすっ飛んでいる。あいさつはしないか省略形ですます、平気で相手を傷つけるような、身体的特徴(「欠点」と感じられること)を話題にする。そして、年齢がいくことを悪として表現する。それが親しさの程度を表すものと思っている人がいるからやりきれない。それを咎めると「ささいなことにこだわる」「ひかるも焼きが回った」という非難が待ち受けているからいっそうやりきれない。

しかし、タイランドでは、ぼくの交際する階級=中産階級に限られているのかもしれないが、この礼節が非常に重んじられる。合掌して「サワディクラプ」(女は「サワディカー」)と頭を下げる。別れの時も同様合掌して「サワディクラプ」と言わなければならない。年下の者は必ず年上の者に先にあいさつをして、尊称をつける。「ピー」「ナー」「ルン」「クーン」などなど。これを怠ると手厳しく咎められる。ニックは、11歳年上のいとこのナムに必ず「ピーナム」と呼ぶ。二人が喧嘩したとき、ナムのいないところに来て、ニックは「ナム ノーグー!」と呼び捨てにすることがある。時々、母親をぼくの前で「N バッド」と母親を呼び捨てにすることがある。しかし、面と向かっては決して決して呼び捨てにはできない。親しさの余りニックはぼくに「ルンコイチ」の「ルン」がしばしば聞き取れないことがある。間髪を入れず、周囲から、一斉に「ニックニック! ルンコイチ」と咎められる。彼は、「ぼくちゃんと言ってるよ ルンコイチと」と抗議する場面がある。でも、みんなが「聞こえな~い!」と改めて叱る。ぼくは、多くの場合、名前の後ろに「さん」をつける。小さい子に「ちゃん」をつけると、失礼に当たるらしいから気をつけなければならない。「ベリーバッド」と注意を受けた。だから、簡単化のため日本語の「さん」で押し通す。だからここでも「Nさん」と言っている。直接呼ぶときは、「N」と呼び捨てだが、改まったとき(お礼を言う時など)とか、人さまには「Nさん」と言っている。「さん」付けはインドのケララでとくに有効である。ケララ人も好んで「ひかるさん」と呼んでくれる。Nさんは、現地のあだ名が「ノン」である。一昨日、昨日の高校時代の友だちも、「ノン ノン」と呼んでいるが、しばしば「ピーノン」と丁寧な呼び方をすることもある。

他面では、ぼくが定年退職した後で何かの集いの時、後輩教授がぼくを評した。「ひかるさんは 教員同士 教員学生関係を すべて平ったく 上下関係をとっぱらってくれた これがひかるさんの 在職中の最大の功績だ」と。それこそ最大の賛辞として受け取ったが、ぼくはすべてに「タメ口」で話したわけではない。学生にも先生にもキチンとあいさつをして、歳がどんなに下の先生に対しても、敬語と丁寧語を用いて対したのであって、そういう意味の、つまり、敬意を払うという意味の、平べたっくして付き合ったのである。学生には、学生の先生に対する礼節を要求したし、ぼくの方は、学生を傷つけることを極力避けた。罰したい時でも、必ず逃げ口を示してやった。そして、徹底的に生活場面でも「付き合った」。

ぼくのこの礼節の態度は、親から教えられたのではない。後天的にぼく自身が自らを鍛えて、意識的に身につけたものである。これだけは、誰に対しても誇れるぼくの資質である。ぼくが10歳の時から家計補充の労働をさせられた、その資質はそこから築きあげてきたものである。中学校1,2年生の時の、新宿区が編纂した作文集に、新聞配達の経験から、ぼくのこの態度を自覚的に形成したことを自ら記している。さらに、ぼくは自分を律する力も、人間としての矜持もこの苦しい労働から身につけたことを誇りに思う。少し長じて、学生運動の中で、共産主義者として著名であった友人の父親が、「人民に支持されたかったら まず礼節をもって 人民と交わらなければならない もし礼節正しいなら 人民は君を階級敵に売ったりせず 逆に階級敵から君を守ってくれる」と具体的に、訪問時の礼節、お呼ばれされた時の礼節、感謝の礼節を教わった。これもその後長くぼくの宝となった。

いいところの息子、お嬢もお育ちによって、自ずから礼節を身につけた人々も大勢知っている。そういう人々は何気なく品位がある。心から羨ましいと思う。飢えと貧困のどん底で育ったぼくが、嫌味な礼節にならないようどんなに努力したか想像していただきたい。

ひところの礼節とほほえみの国日本が、ここタイランドに生きている。まだ生きていると言いたくはない。

青空に鯉のぼりを泳がす風習は、このタイランドにこそふさわしいと思う。





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Last updated  2012.05.28 23:18:03
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