【5月17日】脱毛が起きているとしたら、鉄欠乏の可能性がある。 40年間にわたる研究のレビューにより、鉄欠乏は、大多数の医師の認識よりはるかに脱毛に関連が深いことが示されている。鉄は発毛を回復する鍵となる可能性があることをクリーブランド・クリニックの皮膚科医は認めた。 「脱毛の治療は、貧血の有無に関わらず、鉄欠乏を治療すると強化されると考えられる」とLeonid Benjamin Trost, MD、Wilma Fowler Bergfeld, MD、およびEllen Calogeras, RD, MPHは『Journal of the American Academy of Dermatology』5月号に記している。 これ意見が分かれる問題である。全ての研究が鉄欠乏と脱毛との関連性を示しているわけではない。脱毛のある人たちに対して、鉄欠乏スクリーニングをルーチンな検査として確立するだけの確たるエビデンスはまだ得られていない、とTrost博士は述べている。 しかし、研究を行ったBergfeld博士は長年にわたりこの検査を行ってきた。そして、男女いずれにとっても、脱毛の原因がなんであれ、血中の鉄が少なすぎると脱毛が悪化することをBergfeld博士は明らかにしつつある。 「Bergfeld博士が数十年間の経験で認めたのは、たとえ患者に貧血がなくても、鉄欠乏の治療をすると、発毛の能力を最大限化できるということである」とTrost博士はWebMDに述べている。「これは脱毛に対する特効薬ではないが、患者の発毛の度合いを最大化するのに確実に有効となりうる」。 こうした研究を行っているのはクリーブランド・クリニックのみではない。ペンシルベニア大学毛髪・頭皮クリニック所長のGeorge Cotsarelis氏は、さまざまなタイプの脱毛の女性を対象に鉄補給の研究を行っている。 「当クリニックの経験から、鉄サプリメントにより脱毛患者の鉄貯蔵を補給すれば患者の発毛が促進されるか、または少なくとも脱毛は止まることは私には明白にわかっている」とCotsarelis氏はWebMDに述べている。「そして、脱毛患者は貧血である必要はない。そこに医師が犯す最大の間違いがある」。 さらに大きな間違いは、脱毛しつつある人たちが自分で鉄サプリメントを服用することである。鉄欠乏であると医師に診断されたのでない限り、鉄サプリメントを服用すると鉄の過負荷により非常に危険な状態に至る可能性がある。 脱毛は重篤な疾患の症状のこともある 全身鉄貯蔵量を調べる感度の高い方法は、血中フェリチン量を測定することである。フェリチンは鉄貯蔵に重要な役割を果たす蛋白質である。一般に血中フェリチンが少なければ少ないほど、体内の鉄貯蔵量は少なくなる。 ほとんどの医師が正常フェリチン濃度と考えているものは実際には低すぎる、とCotsarelis氏とTrost博士は話している。フェリチン濃度10-15ng/mLは「正常」範囲内である。発毛を助けるためには、最低50ng/mLのフェリチン濃度が必要であるとCotsarelis氏は述べている。Trost博士とBergfeld博士は70ng/mLを目標値としている。 「医師はフェリチン濃度が正常範囲だと、何もしない」とCotsarelis氏は述べている。「しかし、この正常範囲というものが間違っていると私は思う。女性の正常範囲は10-120ng/ML、男性の正常範囲は30-250ng/mLである。女性の正常範囲が男性より低いのはどうしてだろうか。女性が鉄欠乏であるというのが主な理由である。これはほとんど公衆衛生上の問題である。脱毛はこのことを意味しているに過ぎない」。 Cotsarelis氏らは、脱毛のある女性は脱毛のない女性より鉄貯蔵量が有意に少ないことを認めている。驚くべきことに、このことは、免疫反応の乱れにより引き起こされる円形脱毛症の女性に特に当てはまった。 「われわれの理論は、遺伝的素因のある人において、鉄濃度が低くなると、あらゆる種類の脱毛発生の閾値が低下する、というものである」とCotsarelis氏は述べている。「それで、鉄濃度が低ければ、そのプロセスが加速され、遺伝性脱毛も発現しやすくなる。毛包が著しく成長するためには、鉄が多量に必要となると考えられる」。 月経が重いことの多い女性は鉄欠乏になる場合が多い。「脱毛のある健康な女性を見たら、鉄欠乏があると推測できる」とTrost博士は述べている。 鉄欠乏は妊娠可能年齢の女性より男性および閉経後女性の方が頻度が低い。しかし、Cotsarelis氏およびTrost博士は脱毛のある人たちに鉄欠乏をしばしば認めている。特に、貧血まで達したときには、鉄欠乏は非常に重篤な疾患の一症状の可能性がある。医師は、貧血が起きている理由を明らかにすることが重要である。 「鉄欠乏性貧血のある男性または閉経後女性がいたら、その理由を明らかにするために精密検査が必要である」とTrost博士は述べている。「例えば鉄欠乏性貧血のある55歳の男性がいれば、大腸癌による出血が原因となっている可能性がある。信じられないかもしれないが、脱毛の愁訴のある人が受診し、何か重大なことが見つかる可能性がある」 医師の診察を受けずに鉄サプリメントを摂取してはならない 鉄サプリメントは脱毛の治療薬ではない。しかし、多面的アプローチの一環として、Cotsarelis氏とTrost博士は、サプリメントが大きな助けになりうると述べている。 鉄含有量の多い食物、例えば、豆腐、レンズマメ、豆類、牡蠣、ホウレンソウ、プルーン、レーズン、そしてもちろん赤身の牛肉などの多い食事も同じである。 Trost博士とBergfeld博士は通常はこれらの食物に加えて、硫酸第一鉄325mg/日の空腹時服用による補給を推奨している、とTrost博士は述べている。 鉄は安易に服用するサプリメントではない。 「鉄サプリメントは便秘および胃腸障害を引き起こす」とCotsarelis博士は述べている。「われわれは種々の調剤を試みたが、それらは、全てではないが、似たような問題を持っているとみられる。そして、オレンジジュース、ビタミンC、リシンは、鉄とともに服用すれば、吸収の助けになるといういくつかの事例報告によるエビデンスがある」。 医師に鉄欠乏と言われない限り、鉄サプリメントを服用してはならない、とTrost博士は警告している。 「鉄サプリメントはOTC薬として市販されているが、医師の指導の下でのみ服用することが推奨される」とTrost博士は述べている。「鉄サプリメントは、適切に用いれば安全であるが、不適切な場合に服用すれば、多少の有害作用を引き起こす可能性がある。ビタミンCを高すぎる用量で服用すれば、身体はそれを消失させるが、鉄はそのようにはいかない。身体は鉄の吸収速度は調整できるが、鉄を速やかに排泄する能力は備えていない。欠乏していなければ、鉄を過負荷で摂取する可能性があり、それは危険となりうる」 |