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カテゴリ:★★★★☆な本
重い腎臓病を抱え、命懸けで将棋を指す弟子のために、師匠は彼のパンツをも洗った。弟子の名前は村山聖。享年29。将棋界の最高峰A級に在籍したままの逝去だった。名人への夢半ばで倒れた“怪童”の一生を、師弟愛、家族愛、ライバルたちとの友情を通して描く感動ノンフィクション。第13回新潮学芸賞受賞作。 <感想> ★★★★☆ 平成10年8月8日、一人の棋士が死んだ。 村山聖、29歳。将棋会の最高峰であるA級に在籍したままの死であった。 村山は幼くしてネフローゼを患いその宿命ともいえる疾患とともに成長し熾 烈で純粋な人生をまっとうした。 彼の29年間は病気との闘いの29年間でもあった。 村山は多くの愛に支えられて生きてきた。 肉親の愛、友人の愛、そして師匠の愛。 もうひとつ、村山を支えたものがあったとすればそれは将棋だった。 将棋の世界に疎い私は、棋士といえば羽生善治、谷川浩司、先崎学ぐらいしか 知りません。棋士の世界は、プロとアマがありますが、四段以上がプロ。 さらにプロの中でもC級B級A級に分かれていて、前出の人達はA級の属す る棋士ですがその数はわずか十人。本書に描かれている村山聖(さとし) もA級に属し彼らと同じ時代を生きたトップ棋士の一人です。 現在、作家として活躍している著者ですが当時、日本将棋連盟で雑誌の編集に 携わり、直に村山聖と接していた一人でもあります。とりわけ村山の師である 森信雄と親交が深く村山の子供時代、入門、棋士としての活躍が余すところな く描かれています。 厳しい年齢制限のあるプロ棋士までの道のり、深夜まで及ぶ一流棋士達との対 決。静のイメージがある将棋ですが、激しいぶつかりあいの中で村山は、勝利を 勝ち取るたびに自らの命を消耗させ、29歳で燃え尽きてしまいます。 将棋会に革命をもたらしたといわれる同期の棋士達は現在でも華々しい活躍を しています。もし村山聖が生きていたらどのような棋士になっていたのだろう かと考えます。しかしそれは意味のないことかもしれません。 子供の頃から病に悩まされつづけた村山聖の将棋への情熱。それは常に死を 意識しなければならなかった者だけが持つ生への執着そのものだったように 思えるからです。 将棋なんてぜんぜんわからないという方も何かを感じ取れる作品です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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