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カテゴリ:★★★★☆な本
ただ列車に乗るだけのための内田先生の旅は続く。「汽車が走ったから遠くまで行き著き、又こっちへ走ったから、それに乗っていた私が帰って来ただけの事で、面白い話の種なんかない」。台風で交通が寸断する九州では、なぜか先生と弟子の「ヒマラヤ山系」が乗る汽車だけはちゃんと走り「無事に予定通りに行動しているのが、相済まぬ」。悠揚迫らざるユーモアに満ちた、シリーズ第二弾。 <感想> ★★★★☆ 東大在学中に夏目漱石の門下に入り、芥川龍之介や鈴木三重吉とも親交を 結んだという経歴。 恐れ多くて近づけない内田百間ですが、リンク先で たびたび名前を目にしていたので、思い切って手にとってみましたが・・・・ 百間先生のユーモアのある文章と、落語を聴いているような流暢な文体。 そしてなにより、その鉄ちゃん(鉄道マニア)ぶりに舌を巻きました。 昨今、エッセイの巧い作家はいくらでもいますが、50年以上前にこんなエ ッセイを書いている作家がいたなんてホントぶっくりです。 さて、本書はいわゆる紀行文ですが、定番である旅の憂いとか、旅先の風 土や歴史などには一切触れていません。 とにかく列車に乗りたいという一心で旅に出るので、旅先に行っても観光 などは一切なし。 宿でたらふく酒を飲んで、翌日また列車に・・・とい うパターンです。 最近でこそ、鉄分が低下していますが、子供の頃バリバリの鉄ちゃんだった 私からすれば、新幹線がまだ通っていない時代の鉄道事情を知ることができ て、それだけでもうれしくなってしまいます。 さらに、百間先生は当時すでに大御所に域に達しているわけですが、決して 高みからモノを見たり語ることなく、あくまで近所にいるちょっと頑固なジイサン 的な視点もサイコーに好感が持てます。 百間先生にしばらくハマリそうです(笑) ※著者名に機種依存文字が含まれているため内田百間と表記しました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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