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2007.06.01
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カテゴリ:SS系のお題
■和の言葉を題材にして50のお題
提供元:http://alethea.velvet.jp/wa_50/index.html

25:いざよひ

『誰もおまえを必要としてないよ』

 そんな声が聞こえた気がした。
 夜風が頬を打つ縁側で、ぶらりと足を投げだし雲に霞んだ月を見上げる。自分で放った心の声だと自覚しているのに、仲間外れにされたときのように、からっぽな寂しさが楽しい夢を闇に落とす。繕った笑顔も独りのときには重く沈んだ。
 緑が吐きだす雑じり気のない空気を鼻で吸い込み、ゆっくりと口から不要な毒素を抜きだす。ほんの少しだけ悲観的に傾きかけていた思考は持ち直すが、心が完全に晴れるわけでもなかった。
 記憶の縁にこびりつく根本的な癌細胞を取り払わなければ解決はしない。現状を守ろうとする内側の番人は、癌に触れることを徹底に拒んだ。
 いつから躰の動きが鈍くなったのか解らない。空に瞬く星には触れられないと知ったときからだろうか。必死で手を伸ばす行為は無意味で滑稽だと、もう一人の自分が呟く。
 だが、欲しているのは事実なのだ。

 もしも、背伸びをして星に近づこうとする子供がいたとする。
 その子に何を教えるだろう。
 物音に誘われ目線の位置を変えて隣家のベランダを見上げた。

「空まで梯子をかけようか、それとも星を創ろうか?」

 小さな手のひらで星を掴もうとしていた子供はキラキラと光っていた。笑いかけてくれた子供の顔が、もう一人の自分のうるさい声を消していく。


---------------

せっかくの和の言葉のお題なのに、まったく和ではない…。
腕慣らしなので、ご勘弁を。
にしても、やっぱり自分は、そのとき読んでいた小説に文体が引っ張られる。


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Last updated  2007.06.02 02:03:10
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