栄枯盛衰
僕の叔父さんはお金持ちでした。事業やってて、羽振り良くって、昔からいろんなものを僕に買ってくれた。僕が生まれたときはまだ高校生だったこともあって、僕はこの叔父さんのこと「兄ちゃん」って呼んでいた。スキー板、バイク二台(中古やけど。)、車(これも中古やけど。)などなど。この兄ちゃんのことは僕はむっちゃ好きで(そらそうだ。)、尊敬もしてた。僕も大人になって、疎遠だった。5~6年前、突然実家に現れた。「いや、近く通ったから。」って、金エンブレムのセルシオに乗って颯爽と現れた。相変わらずかっこよかった。ところが、2年前。爺さんの葬式で再会した兄ちゃんはボロい型落ちのマツダ・キャロルに乗っていた。「あれ? セルシオはどうしたん?」って聞くと、「ああ。 車検やねん。」とのこと。あとで母に聞くところ、事業が上手くいかず苦しんでいるのだとか。爺さんが死んだこともあってか、あれほど輝いていた兄ちゃんが、みすぼらしく見えた。そんな風に見てしまった自分と、兄ちゃんを追い込んだ世間に対して、怒りを覚えたのを記憶している。僕が金持ちになって、兄ちゃんの借金を返したいと思った。そして、先日。爺さんの法事で兄ちゃんに再会した。兄ちゃんは現れた。メルセデスベンツ E55 AMGに乗って!新車で買ったら1000万円以上するやん。しかも、聞くと「ああ、これな。 借金のカタに取ったったんや!」借金生活から一転、人に金を貸せるぐらいにまでに金回りが良くなった兄ちゃん。とにかく僕が借金を返す必要が無くなった。セルシオキャロルこれはE320これ。