「平家物語」(十二) 【杉本圭三郎・全訳注】
いよいよ最終巻。 平家討伐に活躍した義経は頼朝に追討されることになる。 有名な「静御前」が登場するのはたった一回。「白拍子の娘の静という女」が義経のために働く場面が一回あるだけ。 平家の物語だから、と言ってしまえばそれまでなのだが、こちらとしては物足りない。 「義経記」では重要人物として活躍するらしい。 義経の悲劇は、朝廷の定見のなさにも原因がある。 十一月二日には頼朝に背くよう下し文があり、同じ月の八日には義経追討の院宣が出される。 ただ義経を利用しただけなのだ。 「平家物語」では義経の最期については語られない。京を脱出して北を目指したところまで。 署名の「平家物語」にふさわしく、生き残った平氏の最期が次々に語られ、建礼門院の晩年を語って終わる。 「平家物語」は語り物だったので、筆録されたものはいくつか種類があるのだが、それだけ好まれたということなのだろう。 成り上がる話よりも、滅びていく話の方が好まれるのだ。 楽天ブログランキング←クリックしてください 楽天会員以外の方のコメントは「輾転反側掲示板」へ